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国を挙げてクリプト企業を誘致するマルタやエストニア

柳澤 ロシア以外の国々はどうですか?


ロシアン ポーランドは面白いと思います。既存の税制に当てはめると、クリプトの利益に対して30%前後の税金がかかってしまうのですが、投資家のほうから「税金が高すぎる」「税制を見直してほしい」と申し立てがあって、ポーランド政府は「検証期間中は非課税にする」と発表したんです。


柳澤 完全に非課税ですか!?


ロシアン もともとポーランドではクリプトは資産と見なされていて、税率は18%と32%の2つカテゴリーに分けられているんですけど、「クリプトに関して深く分析するために、一時的にゼロにする」と決めたんです。ただ、その直前に、ポーランド政府は約3万ドル(約330万円)をアンチ・クリプト・プロパガンダに費やしていたことが明らかになっています。必ずしも、クリプトに対してポジティブじゃないので、すぐにポーランド進出をお勧めすることもできませんが・・・。


柳澤 EU(欧州連合)はマネロン対策に力を入れていますよね。だから、EU全体ではクリプトに対してネガティブなイメージがあるけど、マルタのように国を挙げてクリプト系企業を誘致しているところもある。


ロシアン EUでは各監視機関がマネーロンダリングやテロ資金調達を防ぐためのデジタル通貨規制の新しい法的枠組みを着々と整備しています。プリペイドカードによる匿名の支払いを禁止し、仮想通貨取引所の透明性要件も制定されています。そうした内容を盛り込んだ規制案を、EU加盟国は18か月以内に各国の国内法令に導入していくことも決定している。欧州委員会(EC/EUの政策執行機関)では「仮想通貨を効果的に監視するため、監督機関は通貨アドレスをオーナーと紐づけたり、自己申告メカニズムを用意すべきである」と議論されているので、今後は取引所の口座情報とウォレットアドレス、個人情報はすべて紐づけられていくでしょう。だから、クリプトに対する規制を強める国が多いイメージがありますけど、産業基盤の乏しい小国はチャンスととらえて、逆にクリプト系企業を積極的に誘致しています。その代表例がマルタ。今年4月にはクリプトとICOに関する枠組みを定めた法案やクリプト専門の政府機関の発足を目的とする法案、ブロックチェーン企業を後押しする技術調整&サービス法案がマルタ政府に承認されました。これと前後して、世界最大の取引量を誇るBinanceやOKExなどの取引所が拠点をマルタに移して話題になりました。

柳澤 私も先日、初めてマルタに行ったんですけど、暖かいし、食事はおいしいし、それでいて物価がそれほど高くないと知って、今、本気でマルタ進出を考えています。おそらく、マルタ進出を手伝える日本の税理士ってまだいないと思うので(笑)。


ロシアン 間違いなくニーズはありますね。でも、同じく小さな国で言うと、エストニアも面白いんですよ。最短18分で発行される「スタートアップビザ」を用意していて、世界中からベンチャー企業を誘致しています。ホームページ上でそのスタートアップ企業の一覧をチェックできるんですけど、一番多いのはクリプト系。エストニアが導入している「e-Rresidency」サービスを利用すれば、外国人でも簡単に“デジタル国民”になって、会社を作ったり、銀行口座を開設することができます。クリプトに関する法律や特別な税制は特になく、所得税は一律20%と定められているので、個人投資家にはあまりメリットがありませんが、ヨーロッパに会社を作るのであればエストニアが魅力的です。


柳澤 日本人がヨーロッパで労働許可や居住許可を取る際には、非常に手間がかかります。その点、エストニアで簡単に取得できるのなら、非常に使い勝手がよさそう。ヨーロッパの多くの国は「シェンゲン協定」を結んでいて、国境検査なしで国を行き来できるようにしているから、エストニアのスタートアップビザを取得するだけで、シェンゲン協定加盟国を自由に出入りできるようになるのかな…。


ロシアン エストニアでは会社の利益を引き出さない限り法人税はかかりません。所得税と同じように法人税率も一律20%と定められているんですけど、内部留保のかたちでエストニア法人に利益をため込んでいる限りでは、課税されないんです。

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