『ムーンライト』
原題「Moonlight」
◆あらすじ◆
マイアミの貧困地域で暮らす内気な少年シャロンは、学校では「リトル(チビ)」と呼ばれていじめられ、家庭では麻薬常習者の母親ポーラから育児放棄されていた。そんなシャロンに優しく接してくれるのは、近所に住む麻薬ディーラーのフアン夫妻と、唯一の男友達であるケヴィンだけ。やがてシャロンは、ケヴィンに対して友情以上の思いを抱くようになるが、自分が暮らすコミュニティではこの感情が決して受け入れてもらえないことに気づき、誰にも思いを打ち明けられずにいた。そんな中、ある事件が起こり……。
多分、本来ならきっとシネコンなんかではかからない作品。
この作品がオスカーを獲って小規模な公開を避けられた事に感謝。
初めてアカデミー賞の有り難みを感じた本日。
月明かりは暗闇でもがき苦しむ奴にだって平等に照らし、そして本来の自分の姿を足元に映し出す。
主人公の最後の言葉に涙が止まらん!
まるで『ブロークバック マウンテン』を観た後みたいになってる。
極端に少ない台詞。
俳優たちの視線、口元、首の角度…小さな仕草ひとつひとつから目が離せない。
眠くなりそうな程静かな作品なのに胸の中に何かの音が鳴り続ける。
人種、LGBT、薬物、貧困…主題は明らかだけどそれだけでは言い尽くせない多岐への光が見える。普遍的人間の営みへの光。
助演男優賞のマハーシャラ・アリは圧倒的な存在感で劇中死したのち最後までその影を残す。
いやぁ、ここ迄とは…マイッタ。
そして、主人公にとって人生の転機となる重大な出来事が物語からごっそりと抜き取られている演出な故、説明の無い裏側を汲み取る事が出来ないとつまらなく思えてしまうかも。
説明大好きな鑑賞者には向かない作品。
台詞も少なきゃ説明も一切排除って…サイコーじゃ無いか!
圧巻の映像美も含め、こう言う『とことん行間を読む』映画らしい作品がちゃんと作られて評価されるのは本当に嬉しい。
父親の居ない男の子にとって自分を認めてくれる大人の男の人物像は大事なんだなぁ、
とにかく素晴らしい秀作だった。
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