【映画所感】 ある男 ※ネタバレなし
不慮の事故で亡くなった夫が実は、妻が認識していた名前や素性とは全くの別人だった。今まで一緒に暮らしてきた男は、一体どこの誰だったのか?
別人を騙った男の正体、なぜ他人になりすます人生を選んだのか。真相を探るべく、妻から身元調査を依頼された弁護士が奔走する。
ストーリーや設定自体は、よくあるミステリーの王道…かと思いきや、公には憚れるようなタブーを随所にぶち込むことで、話は二転三転。
クローズドな環境で、限られた人数で楽しむ映画だからこそできる、禁忌への果敢な挑戦。
原作未読のため、そのテイストをどこまで脚本へ落とし込み、キャラクター造形がなされたのかはわからない。
ただ、誰しもが経験してきたであろう呵責や後ろめたさにストレートに訴えかけてくるセリフの数々は、時折、背筋に突き刺さる。
本作の魅力は、タブーに切り込んでくるセリフだけではない。セリフに命を吹き込む俳優陣にも終始唸らされる。
前半は、安藤サクラと窪田正孝の独壇場。二人の出会いから新しい家族を構成していくまでは、目の保養になるほどのラブストーリー。
サスペンス色が濃くなる後半は、日本を代表する旬の俳優たちが次々と投入され、躍動する。どの役者も名うてのタレント揃い。
サッカー・ワールドカップ、日本代表の現時点での戦い方のようだ。作品の面白さが半減すると思うので、俳優名やタブーに関する詳細は敢えて控えておく。
ナショナリズムに起因するタブーと、その内なるナショナリズムをダイレクトに呼び覚ましてくるワールドカップ。大会真っ只中のこの時期に、『ある男』を鑑賞できたことは、自分の中ではものすごく意味があるように思えた。
サッカー日本代表と本作『ある男』、どちらも“ブラボー”なのは間違いない!
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