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刑務所になくて社会にあるもの。

それが「孤立」だと浜井浩一・竜谷大教授
(先日の『讀賣新聞』朝刊)。

刑務所では、よくも悪くも
受刑者は見張られているが、
刑務所から社会に出れば
誰からも心配してもらえない。
だから“娑婆”では孤立に耐えねばならない。
こうした居場所がない出所後の
高齢者支援に国も力を入れているとか。                           

「孤立」が広がる生きづらい国、日本

しかし、この「孤立」はいま、
生きる者に等しく襲い掛かる。
私は大人数でのパーティが苦手で、
必ずと言ってよいほど孤立を感じる。
5-6名での会食でもそれを感じることがあるが、
その程度なら1-2時間、耐えればいいだけの話だ。

働く場所で、そもそも生きる日々のなかで、
孤立を感じて過ごさねばならないとしたら、
もちろん苦痛だし、それが
社会を恨む引き金になるという事態まで、
認めねばならない国に、日本はなった。         

                *

2010(平成22)年の国勢調査をもとにした
厚生労働省の調査で、つまり10年以上も前の数字で
「友人・同僚・その他の人と全く、あるいはほとんど
交流がない」とする割合は15.3%。

当時のOECD(経済協力開発機構)加盟国中、最も高かった。
恐らくいまは、もっと高い。

この調査と同じには扱えないが、
内閣官房孤独・孤立対策担当室による
2021年12月~2022年1月の全国調査で、
孤独感が「しばしばある・常にある」との
回答が4.5%、「時々ある」が14.5%、
「たまにある」が17.4%、これらを合計すると
36.4%が何らかの孤独を感じていることになる。

ひとりじゃないって、じゃあ誰がいる?

英国政府は、英国民の 10 人に 1 人以上が孤独を感じている
状況を深刻視して孤独担当大臣を任命した。
日本でも坂本哲志・孤独・孤立対策担当大臣が
「あなたはひとりじゃない」などとメッセージを送る。
しかし、相談電話を設ければ孤独あるいは立は
解決するのか(両者の定義は省略)。                                     

                             ↓

前回の国勢調査によれば、
男性の生涯未婚率は1985年の3.9%から
2020年は約6.5倍約の25.7%へ、
同じく女性は4.3%から約3.5倍の14.9%になった。
先日の「Skyrocket Company」では
恋愛は面倒くさい」という投稿に
マンボウやしろさんが同調していた。
この恋愛関心度の低さを、
EXIT・兼近大樹さんのように、
「すべて自由でいい」と結論付けるのは
乱暴過ぎるのではないか。
もちろん自由だからこそ恋愛だが、
背景にある“コスパ重視”の影が気になるのだ。

「孤立」を生む病巣

私は今月の投稿でも、
直感的な便利さ偏重や
コスパ重視の価値観の拡大で、
「考える」ことが軽視される風潮を憂えた。
考えることなく、パフォーマンスが自分の
望みとは違う出来合いの尺度で測られている
のではないかという点を危惧する。

こうしたスタンスが、人生の
あらゆる選択に及んだ先に、
時として訪れる人間関係の煩わしさを
回避したり、過度に嫌悪したりする
態度が生まれはしないか。
あるいは「社会」なるものへの
得体の知れない虚無感が。
そうして突き付けられる境遇が、

「孤立」


になるのではないか(仮説)。


きっと刑務所の人は、やさしい。
高齢になれば介護の心配もない。
受刑者を決して一人にさせない。


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