マーティン・スコセッシ監督『タクシードライバー』ニューヨークの闇に生きる男
<作品情報>
<作品評価>
80点(100点満点)
オススメ度 ★★★★☆
<短評>
上村
トラビスは偶然乗せた大統領候補に「街のゴミどもを一掃してほしい」と言います。そこに全てが詰まっています。トラビスは教養も金もなく、なんなら人種差別や性差別も平気でします。しかし、それは彼が望んでそうなったのではなく、アメリカという社会がそうさせてしまったのです。
皮肉にも彼は英雄として持ち上げられますが、本当に欲しかったものは何一つ手にできていません。彼は何も変わってはいないのだということが示されます。
スコセッシとポール・シュレイダー、ロバート・デ・ニーロという才能が結集して生み出された突然変異的な傑作と言えるだろう。他のスコセッシ作品に比べて明らかにポール・シュレイダーの色が濃く思えます。
クマガイ
人の持つ危うさを描いた良作映画だと思いました。
現代社会にも通ずる作品だと感じていて、社会のせいで生きにくさを感じているアウトサイダーたちが、徐々に自分たちなりに社会を変革していこうとしていき…。その果てにあの結末に帰着するのはどこか狂気を感じます。
これだけの作品を2時間以下で収めきったマーティン・スコセッシ監督×ポール・シュレイダー脚本のコラボは凄いと思いました。
吉原
高校生の時、本作を傑作とは思えませんでした。まだ映画を観る目がそこまで肥えているわけではなかったし、アクションやコメディなどのエンタメ作品(しかも2000年代以降のもの)ばかりを観ていたので、本作のような作品はあまり受け付けませんでした。
今回、7年ぶりに本作を鑑賞してみると、ベトナム帰還兵のPTSD問題や本作がインスピレーションを受けた大統領候補の狙撃事件、そして本作に影響を受けたレーガン大統領の暗殺未遂事件など、社会の不安をトラヴィスという人物に投影させ美しい音楽と映像でスタイリッシュに描き出す作風に面白さを感じずにはいられませんでした。
また、「ジョーカー」が本作の影響を受けているという話を聞いた事がありました、改めて本作を観てみるとその影響を顕著に受けている事がわかりました。
特にそれを如実に感じたのは、狂人であるはずのジョーカーやトラヴィスを英雄として祭り上げるシーンです。本来、犯罪者として非難を受けるはずの彼らを、英雄及び狂人たらしめたのは、彼ら自身なのか、それとも社会なのか。そんな問いを残して両方の物語が幕を閉じるところに意識的なオマージュを感じました。(「ジョーカー」にデ・ニーロも出てるし)
<おわりに>
スコセッシ監督の傑作として好みはあるにしてもクオリティの高さは誰もが認めるところではないでしょうか。
近年では『ジョーカー』など影響を受けた作品も多く、アメリカ社会の闇を非常に上手く捉えた作品でしょう。
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