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ロック詩人・稲葉浩志(B'z)の歌詞の世界〜ヒット曲編〜

「B'zが好きだ」というと、割となんで?と言われることが多い気がする。

多分、”ダサい”とか”うるさい”とか、”曲が似て聞こえる”とかいうイメージが先行しているのかな。
あとは、”ライブバンド”というイメージ。歌唱力と演奏力こそ彼らの最大の武器で、コンサートに行ったりライブ映像じゃないとあまり力を発揮しないと思われている(まあ、実際その側面は強い)。



僕は、稲葉浩志の生み出す歌詞の世界観に魅了されて深いファンになったクチである。
彼の生み出す天才的で変態的、人間の弱さを抉り出すような歌詞がやけに胸に刺さるのです。

そこで、今回は彼の生み出す歌詞の魅力を微力ながら説いていきたいと思います。

断じて、稲葉氏はアヘアヘウルトラソウルおじさんではないのである。


とりあえず今回は、彼の作詞家としての優れた才能がわかるフレーズを有名曲から挙げていく。




「兵、走る」(2019)  


たとえ己が倒れようと 志だけは繋いでゆく
勝敗をまた一つ噛み砕いてツワモノは走る


大正製薬「リポビタンD」CMソングとして、ラグビー日本代表の映像とともにオンエアされたことで昨年スマッシュヒットしたこの曲。
ラグビー日本代表の倒れながらもパスを繋いでいくという世界的に見ても特徴的なプレイスタイルを、限られた言葉数でうまく表現。
稲葉氏はタイアップにぴったりの歌詞を書く職人気質な一面も持ち合わせている。
また、タイトルに使用されている「兵」はこの部分では"ツワモノ"と表現されており、勝敗を噛み砕くのは"兵"であり"強者"である、というダブルミーニングを表現している。



「イチブトゼンブ」(2009)  

もしそれが君のほんのイチブだとしても
何よりも確実のはっきり好きなところなんだ
困ったとき少し眉毛を曲げて見せたり
抱き寄せるとホッとするような柔らかだったり

この曲は全編通して名フレーズ連発だけど、個人的に好きなのがここ。
本楽曲のテーマは「最初に愛しいと感じた確固たるポイントを忘れない」こと。

それは人によって眉毛の角度だったり、体の触り心地だったり。
他の人にとっては何気ないことでも、自分にとってはかけがえのない部分である。

そんな素敵な歌詞コンセプトを、子供でもわかるようなシンプルな日本語で表現するのが稲葉イズム。


「一部」と「全部」という単語をカタカナに変換することで一つの単語に見せた楽曲タイトルも彼らしい。





「ultra soul」(2001)  

希望と失望に遊ばれて 鍛え抜かれる Do it

「希望」や「失望」って、普通は持ったり感じるものですよね。
しかし、「遊ばれて」しまうのが稲葉浩志なんですよ。
トレーニングの成果がうまく出た時、やってもやっても結果が出ないとき。人は「希望」や「失望」を味わうのを繰り返すことで、徐々に鍛えられて行く。
何かに一生懸命取り組む人であれば共感できるフレーズです。
ちなみに、「ultra soul」というフレーズは稲葉が思いつき、松本がそのワードを気に入りメロディに逆輸入したもの。やっぱ嗅覚が違う。


「今夜月の見える丘に」(2000)

たとえばどうにかして君の中 ああ入っていて
その目から僕を覗いたら 色んなことちょっとはわかるかも

普段どんなこと考えてればこんな歌詞書けるんだ。
このフレーズは曲の歌い出しなんですが、ど頭にfor example入れてくる人はあんまりいない。
けど、内容自体は真理を着いているし曲の導入としてインパクト抜群。
見る人によって目に映る事実は異なるし、人の気持ちなんてきっとこれぐらいしないとわからないんだろうなあ、と思わせられる名文。


「ねがい」(1995)

ねがいよかなえ いつの日か
そうなるように生きてゆけ

「ねがいよかなえ」で他力本願かと思いきや、直後に「そうなるように生きてゆけ」と己を鼓舞。どシンプルながら胸に響く歌詞。
サビ直前の『「いつの間にか」じゃない 自分で選んで歩いてきたこの迷路』もカッコ良し。





「Love me,I love you」(1995)


たまにゃ海も山も人も褒めろよ
なんちゅうLOVE!
自分の芯から気持ちよくなりたけりゃ今出して



なんちゅう歌詞。
モー娘。以前に歌詞に◯◯LOVEとかをぶち込んだのはおそらくこの男だけではないか。

そして最後は下ネタ。
やりたい放題だが、これが139万枚売れてるんだからやはり90年代は怖い。



「愛のままにわがままに 僕は君だけを傷つけない」(1992)


ふたりだからイケるとこまでイこうよ

これは言わずもがな。だって”イ”がカタカナなんだもん。
ちなみに、この曲は202万枚を売り上げたB’z史上最高のヒット曲です。




ご覧いただいた通り、稲葉はボーカリスト・作詞家として類稀なる才能を持ちながら隙を見つけると下ネタをぶち込んでくる変態詩人なのである。

ね、ウルトラソウルおじさんじゃないでしょ?
まあ、変態詩人とウルトラソウルおじさんどっちがマシなんだって話だけど。


そして、それと同時に「イチブトゼンブ」「ultra soul」「今夜月の見える丘に」に見られるように、人間の弱い部分や日常で忘れてしまいがちな大切なことを歌詞にして描き出す才能も持ち合わせている。

今回はとっつきやすいところからいこうと思って知名度の高いシングル曲中心に歌詞をチョイスしてみたんですが、思ったよりパンチが弱かったですね。

稲葉氏が売れ線の曲では手加減しているのか、それとも松本氏が止めているのかは謎。



自分で勝手に有名曲縛りしといてなんですが、納得いかないんで幅広い曲にスポットを当ててもう一回やろうと思います。笑

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