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「シン・ウルトラマン」で思い知らされた「ウルトラマン」の偉大さ

観終わった後、こんなに複雑な気持ちになったのは久々だった。

面白いか面白くないかで言ったら、多分面白かった。
でも、人に感想を聞かれたら「好みは分かれると思う。あと、これまでウルトラマンに全く触れてこなかったならあんまりおススメしない」って言うと思う。

ちなみに、僕は幼少期「ウルトラマン」が比較的好きだった方で。
どちらかというと「仮面ライダー」派だったので熱狂的というわけじゃないですけど、1作目は全話視聴してその後のウルトラマンも平成3部作ぐらいまでは全員言えるぐらいのライトなファンです。

そんな人から観た、本作の感想を書いていきます。


良くも悪くも、イメージ通りの映画だった

庵野総監督と樋口監督が「ウルトラマン」を作ると聞いたとき、皆さんはどんな雰囲気のものを想像しましたか?

僕は『「シン・ゴジラ」の雰囲気を取り入れつつも旧作に忠実な作品にしてくるんだろうな』と思っていました。

「シン・ゴジラ」は興行的にも評価的にも成功。
そして、庵野監督の「ウルトラマン」へのリスペクトやこだわりは色んなメディアでも目にしていました。

だから、なんとなく「シン・ゴジラ」のような演出やカメラワーク、スピード感で原作を再構成し、ちょっとした社会風刺を入れ込んだような映画になるんじゃないかと予想したのです。BGMやSEも、ほぼ原典のまま使ってくるんじゃないかなと。
で、実際ほぼその通りでした。

だから、「シン・ゴジラ」で感じたような斬新さ、未知のものを観たような感覚は味わえなかった。

まあ、もちろん悪いところばかりではないんだけど。


旧作の偉大さがわかる、リスペクトが込められた作品

すげえなーと思ったのは、原作のエピソードの取捨選択と再構成の上手さ。
そして、何より1966年に放送された「ウルトラマン」というさ作品の偉大さです。

テレビシリーズのいくつかのエピソードを分解して再構成しているわけですけど、その選択やアレンジ、まとめ方がうまいです。
話の大筋はほぼ変えていないのに、きちんと現代風になってまとまっている。
それは、つまり原作のテーマが普遍的で素晴らしいということにも繋がる。

物語終盤、原作最終回の要素を多分に盛り込んだ展開は感動しました。
終わり方にも納得がいったし。

また、演出的な部分になるんですが初代「ウルトラマン」っぽい独特のシュールさの表現がうまかったです。
長澤まさみ演じる浅見の巨大化とか、部屋に突然現れるザラブ星人(ハット被ってるの嬉しかった)とか。
他にも外星人と車中で普通に会話、サシ飲み。大の大人二人で漕ぐブランコ。
あのシュール感って、すごく初期のウルトラマンを想起させます。
作り手がみんなウルトラマンへの愛で溢れているのが伝わってきました。


みんな言ってるけど、山本耕史はすげえ

みんな散々言ってますけど、やっぱMVPはメフィラスを演じた山本耕史ですよね。
僕が知ってる中では、この作品がベストアクトじゃないでしょうか。

立ち姿のスマートさ、イケボ、表情の作り方。どれをとっても完璧。
『外星人ってこんな感じなんだ』をここまで体現できる俳優さん、他にいるんだろうか。

逆に、禍特対のメンバーはあんまりパンチなかったですね。
これも「シン・ゴジラ」の後で観ちゃったからだろうか。
一人一人キャラは立っているはずなんだけど、なんか今一歩踏み込めていないというか。

船縁(早見あかり)と滝(有岡大貴)以外は明確な仕事がイマイチ描かれていなくて、なんかモヤモヤするし。
神永(斎藤工)と浅見の関係性がいつ育まれたのかも描写がないから、後半への盛り上がりも弱く感じました。


ストーリーと演出のメリハリが弱い

盛り上がりが弱い、と言えばなんですが。
どうも、この作品メリハリが弱い気がするんですよ。
全くない、とまでは言わないんですけど。
物語の展開が早いので引き込まれはするんですけど、タメとかが一切ない感じ。
2時間の映画で5体の禍異獣と戦ってるしそんな暇ねえんだよ!と言われたらそれまでなんですけど。

本来、VSメフィラスのシーンとか終盤のウルトラマンのヒロイックな行動とかってもっとエモーショナルになる気がするんですよね。
なのに、そこまで盛り上がらない。他の人の評価はわかりませんが、少なくても僕はそうでした。
展開が早過ぎるが故か、どうも冗長に関してしまうんですよね。

多分、この作品の作り手たちってエモーショナルさを画作りや旧作リスペクトの演出で作ろうとしているんです。それが僕には合わなかったかな。

ガチガチのウルトラマンファンなら、要所のオマージュや原作を思い出しての盛り上がりで作品に入っていけるし、感情も乗せられると思う。
逆に、それがない人はこの作品の盛り上がりどころがわからず、気持ちが乗っていかない。

「シン・ゴジラ」はその辺が実によくできていて、ゴジラシリーズに思い入れがなくてもストーリー上の盛り上がりどころがわかりやすいんですよね。


こんな感じで良い部分と悪い部分が混在している作品なので、冒頭の「好みは分かれると思う。あと、これまでウルトラマンに全く触れてこなかったならあんまりおススメしない」という気持ちに帰結するわけですけど。

でも、ネットのレビュー観てると結構「ウルトラマン初見でも面白かった」って意見があるので、もしかしたら僕が偏屈なだけなのかもしれない。

色んな人の感想を聞いてみたいなあ。

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