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緊急事態宣言が映画館の"書き入れ時"を変えるのか

せっかくの新作ラッシュも、東京と関西三都道府県の映画館休館でイマイチ盛り上がらない。
まあ、人命優先・感染拡大防止は当然のことなんですけどね。

とは言え、今回の緊急事態宣言が映画興行に大打撃を与えているのは否めない。

それでも気を吐いているのが「名探偵コナン 緋色の弾丸」
既に興行収入56億円を突破、最終で70〜75億円までは見越せるところまで数字を積み上げている。

しかしGWの集客は2年前の前作「紺青の拳(フィスト)」の1/3前後と言ったところで、既に前作のペースを下回りはじめている。

現状で前作とそこまで大きな差がついていないのは、緊急事態宣言発令前の公開日(4/16)から1週間のロケットスタートで貯金があったからだ。

既に前作でマークした93.7億円を超えるのはかなり厳しい上、現在年間1位の「シン・エヴァンゲリオン劇場版」の82.8億円(現在も更新中)を超えるのも難しくなってきている。

コナン映画は2013年の「絶海の探偵」から興行収入のシリーズ最高記録を毎年更新しており、「緋色の弾丸」が前作を下回れば8年ぶりの前作割れとなる。

更に悲惨なのが「るろうに剣心 最終章 The Final」だ。
こちらは公開初週末に緊急事態宣言発令が直撃。
本来一番の稼ぎ時に、東京と関西三都道府県の映画館が休業という状態。
これでは数字を伸ばしようがない。

それでも現状で既に20億円を超えているのは充分健闘していると言えるが、ついていないのは「The Final」と対になる完結作「The Beginning」が6/4から公開予定という点だ。

政府は緊急事態の発令地域を増やし5/31までの延長検討しているそうだが、それが確かであれば「The Final」をまともに観れない状態が「The Beginning」公開4日前まで続くということになる。

前後編の映画は、基本的に後半で数字を下げる。
まあ、前編を観ず後半だけのために映画館に来るファンなんてそういないし当たり前だけど。
今回の「るろ剣」は完結編とエピソード0みたいな感じなので実は単独でも成立する作品なんですが、そのことが世間的にそこまで浸透しているとも思えないし。
このままいくと「The Final」が一作目の30.1億をなんとか超えるかどうか、「The Beginning」は20億台で終わる可能性もある。

制作側としては「コナン」は一作で興行収入100億円以上、「るろ剣」は2作合計での100億突破を狙っていたはず。
両者とも作品の評判は悪くないだけに、関係者は肩を落としているだろう。

既に公開済だった「コナン」はともかくとして、「るろ剣」は公開延期の措置をとれなくはなかったはずだが、緊急事態宣言の発令が決まったのが公開日直前。
実写作品であれだけのキャストを揃え、番宣スケジュールもガチガチに組んでいるからどうしようもなかったのだと思われる。

実際、キャストが豪華ではあるが公開規模が小さめな「映画 賭ケグルイ 絶体絶命ロシアンルーレット」、まだ本格的な番宣が始まっていなかった「ザ・ファブル 殺さない殺し屋」、アニメ作品である「劇場版Fate/Grand Order -神聖円卓領域キャメロット- 後編Paladin; Agateram」「機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ」は公開延期に踏み切った。

「るろ剣」程ではないものの、そこそこダメージを食らいそうなのが「ヒノマルソウル~舞台裏の英雄たち~」
こちらは元々の2021年5月7日公開予定から急遽延期を決めたが、番宣の一部は始まってしまっている。
まだ正式な公開日が決まっていないが、極力早い日にちで公開日を調整したいところだろう。

GWのような長期休みは、本来映画館にとっては書き入れ時だ。
実際、新型コロナウイルスの感染が拡大する前の2019年GWは「名探偵コナン 紺青の拳(フィスト)」の93億円をはじめ「アベンジャーズ/エンドゲーム」が61.3億円、「キングダム」57.3億円、「名探偵ピカチュウ」30.1億円と大盛況だった。

しかし、現在では本来繁忙期とされる時期を避けて公開した作品が成功を収める傾向がある。
その最たる例が、間も無く興行収入400億円を突破する「劇場版 鬼滅の刃 無限列車編」だ。
こちらは2020年10月公開、ライバル不在の中で週末興行収入15週連続1位を達成。コロナ禍以降の映画興行をまさしく独走した。

2021年1月公開の「花束みたいな恋をした」も同様。
本来は年末年始が映画館の繁忙期だが、今年は話題作が軒並み延期で新作がほぼなし。
年明けには「鬼滅」の勢いもさすがに落ち着いてきており、無風状態の中6週連続で週末興行収入1位を記録。
大ヒットの基準とも言える興行収入30億円の壁を軽々越えていった。

最近で言うと、現在年間1位を走る「シン・エヴァンゲリオン劇場版」も公開のタイミングをうまく調整できたと言えるだろう。
緊急事態宣言明けを狙い撃ちする作戦が功を奏し、こちらも週末興行収入ランキングで5週連続1位
興行収入も2016年の「シン・ゴジラ」で記録した82.5億を越え、庵野秀明監督作品で最高の記録となっている。

「コナン」「るろ剣」等ヒットを狙った大作がGWや夏休み公開を狙って公開時期を調整→緊急事態宣言による延期を繰り返した一方、元々閑散期を狙っていた「鬼滅」「花束」「シン・エヴァ」のような作品は時期がハマれば大きなスクリーンを独占し、複数週に渡って首位を持続していることがわかる。

今後も感染拡大に歯止めがかからない場合、再び長期休みに被せるような形で緊急事態宣言もしくはそれに近しいものが発令される可能性が高い。

今後は通常であれば閑散期と言われる長期休み前後の時期を狙って公開した方が数字が伸びる傾向が続くかもしれない。

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