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ロック詩人・稲葉浩志(B'z)の歌詞の世界〜危険運転編〜

多分、このテーマで記事を作れるのは音楽界幅広しと言えども稲葉浩志ただ一人だと思う。

この人、何かにつけて歌詞の中で危険運転したがるんですよ。
前回の記事で紹介した「Oh! Girl」や「それでも君には戻れない」でも既に夜の高速ぶっ飛ばしやわき見運転してるんですけどね。

頭の中がゴチャゴチャしたとき、追い込まれた時、自分の殻を破りたい時。
そんな場合に応じて”運転”というシチュエーションはB'zの歌詞には頻繁に登場します。

今回は、その中でも特に危なそうな歌詞をピックアップしてみました。


ZERO(1993)

また考えすぎのムシがじわりじわりと湧いてきて
僕は僕自身に 一日分の言い訳をはじめる
たちの悪いくせだね
このまま車ごと君の家につっこもうか
なんてことまで浮かんでくる yeah

まず一回落ち着こう、と言いたくなる。
いくら「今会いたいすぐ会いたい」でも、車ごと人の家に突っ込んだらマズイでしょう。


Crazy Rendezvous(1991)

何考えてるのあなた 誘拐だわこれは
助手席で怒り狂ってるけどもう構うもんか

もう危険運転とかじゃなくて誘拐じゃん!というツッコミは禁止です。
しかも、主人公がこの行動に出た理由は

単純な気持ちを隠しながら 能書きと冗談でひっぱってた
君との会話を変えたいんだ

ですからね。めっちゃ自分勝手
でも、こういう「自分の殻を破りたい」と思ってハチャメチャな行動に出る、そんな想像をすること自体は男性にありがちかも。

帰らせないよ 朝が来るまでは 好きなんだからしょうがない
あぶないよ こんなスピードで 飛び降りたら 死んじゃうよ

強引に誘っといて「朝まで帰らせない」、逃げ出そうとする彼女に冷静に注意ってサイコ感すごいよ。
でも、男なら愛する女性をさらって堂々と振る舞うっていう豪胆感一回は出してみたいよね。

そして曲の最後では

帰らせないよ やっぱり朝が来ても

結局帰らせてくれないみたいです。


GIMME YOUR LOVE -不屈のLOVE DRIVER-(1990)

この曲なんてタイトルに「DRIVER」って入っちゃってるもんな。

迎えにきてと賑やかな 電話の向こう側
直ちに飛んでゆく僕は 一体何者なの?
先々週ディスコ 今週バー たまにゃ一緒に飲みたい
ほらほら涙でフロントガラスが曇ってる Ho!

これがアッシーくんってやつか…
どうやらかなりお高めの女性を好きになってしまった主人公だが。

いいように利用されてるとしても Mm… その笑顔には弱いのさ Fu!

Fu!じゃねえよ!笑
本当にその女性で大丈夫なのか。

FEEL MY LOVE 二人ガードレールとCRUSHしても
なんかおまえだけ助かりそう…

とにかく強かで運の強そうな女性なんだろうか。
しかしこの表現は本当に独特で、絶対稲葉にしか書けないと思う。


Liar!Liar!(1997)

曲名から主人公の疑心暗鬼が溢れているよ。

まっ黄色いシャツ着ちゃって 歌いだしそうな表情さらして
ダンナと仲良く腕組んで 道横切ってんのはオマエだろう
つっこんじゃうぞ アクセルべったり踏んで

これもかなり危ない人ですね。完全に轢き殺す気だし。
っていうか、歌い出しに「まっ黄色いシャツ」なんて言葉をぶち込む稲葉氏も危ない人なのでは。

しかしながら本曲は周りを疑い過ぎてがんじがらめになっていく歌詞の稲葉イズムと90年代後半に松本孝弘が極めたデジタルロック感が美しく融合した、B'z前期屈指の名曲である。


ピエロ(2006)

桃色に 染まりゆく 東雲を追いかけて
疾走するポンコツカー あなたを乗せて
風に舞い かおる髪 もうちょい体よせ合いたい
あいつは血まなこ 憎しみ燃やす

あ、多分この人また誘拐してる。
しかも今回は完全に略奪愛だな。血まなこで追っかけてくる人いるもん。

Getaway getaway地の果てまで
あのカーブ越えりゃ 青い空
強烈な生と死の匂い
浮かれたようにハンドルを切る

主人公は死すら厭わない姿勢で浮かれたようにハンドルを切ってるけど、果たして奪われた女性は無事なんだろうか?


CHAMP(2017)

稲葉さんも歳を重ね、危険運転もすっかり減ったなあ…と思った頃にぶち込まれた本楽曲。

バックミラーはいらない 振り向くつもりもない
ヘッドライトが照らす 謎めく美しい闇

これよこれ。彼らにバックミラーなんか不要。
「謎めく美しい闇」に切り込んでいくのが稲葉浩志でありB'zなのだ。
何歳になっても消えないチャレンジ精神に感動し過ぎて「いやいや、バックミラーは必要だよ!」というツッコミまで忘れてしまった。

この曲はタイトル通りトップに立つ者の孤独感と寂寥感に加え、未知の領域に踏み込んでいくチャレンジ精神を描いている。
稲葉にとって運転とはやはり「自分の殻を破る」表現であることが見て取れる。

曲の締めでは

ぶっちぎる ぶっちぎる
ぶっちぎる ぶっちぎる

と、ゲシュタルト崩壊起こしそうなくらいぶっちぎりまくり。
ファンとしても今後B'zの二人が何歳になろうともこの路線でぶっちぎって欲しいものだ。


過去の稲葉氏歌詞分析はこちら。


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