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バックパッカーズゲストハウス①

*この話は実体験ですが、著者の記憶違い、主観が多分に含まれています。また、主に登場人物に関して名前や設定を故意に変えている部分があります。


 JR秋葉原駅から、南に三分も歩けば神田川が流れている。万世橋を渡って更に二分ほど歩いたところに、『秋葉原バックパッカーズ・ゲストハウス』という場所があった。雑居ビルを無理やりゲストハウスに仕立てていて、一泊いくらという貸し方は旅館法に引っかかるため、一ヶ月単位でしか泊まれなかった。

 五階建てで、一階は空き店舗。二階から上が住居スペースだった。各階に個性があって、二階は女性専用。三階は下手くそなテトリスのように、二段ベッドが詰め込まれていて、もっとも多くの人間が寝られる階だった。四階は、フロアの半分が料理を作ったり、談笑したりするためのスペースだったので、うるさいが、本当にずぼらな人間は、「冷蔵庫を開けるために、いちいち他の階に上がったり下りたりしなくていい」と、この階を好んだ。五階にはシャワーと洗濯機、ベランダがあった。三十人以上が住めるゲストハウスのなかで、シャワーと洗濯機は、この階に一台ずつあるのが唯一だった。洗濯機のすぐ横まで二段ベッドが置かれていた。

 二〇〇九年、二十七歳の時に、私は三階の住人として四ヶ月ほどこのゲストハウスへ滞在した。

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