見出し画像

20041214 身近な環境問題

 今年の十月に仲間と西表島に行った時$${^{*1}}$$のことである。浦内川の遊覧船$${^{*2}}$$の船着き場で、蝶がふわふわ飛んでいたので蝶捕りの仲間$${^{*3}}$$が捕虫網を取りだしてその蝶を捕まえた。

 その様子を見た遊覧船の係員が「その蝶をどうするのか」と少し強い口調でその仲間に問いただした。持ち帰って標本にすると答えると「西表の自然は西表の自然に返してやって下さい」と訴えられた。そういった収集家の行為が種の絶滅や自然破壊を進めてしまう、といわんばかりであった。

 観光客相手にディーゼルエンジンを動力とした遊覧船を毎日何回も往復させることは問題にならず、蝶を捕ることが問題になるのだろうか。まさに環境問題は当事者の価値観によって全く捉え方が違ってくる。

 ここで問題にすべきことは、注意をした係員は遊覧船の運航と自然保護とをどのように考えているかである。訪れた観光客に浦内川の自然の雄大さを感じて貰い、ひいては自然保護の大切さを知って貰えると考える。そのためには遊覧船のエンジンによる少々の環境破壊はやむを得ない、という確信に至った上での「蝶捕り批判」であればそれなりに納得できる。しかし蝶の捕獲は即自然破壊、というような短絡的な発想であれば言い掛かり以外の何物でもない。とはいえ、その場での短いやり取りの中では、どちらなのかは判断できなかった。

 そもそも蝶を捕獲することは自然破壊につながるのだろうか。諸説ある。収集家が捕獲する量はたかが知れていて、個体を捕獲することよりも生息地を開発したり農薬を撒き散らすことの方が確実に絶滅させてしまう$${^{*4}}$$とも言われている。乱獲すればその地域の蝶は絶滅する場合もあるだろう。程度問題である。個人が捕獲する蝶が年数頭でも、毎日何百人もそこで採集すれば話は別だが、そういったことはまず起こらないだろう。蝶捕り人口がそれ程多いとは思えない。環境保護を訴えた係員はここまで考えたことがあったのだろうか。

 実はもう一人の係員にも注意された。蝶捕りを批判した係員は二十代ぐらいの若者だった。もう一人の係員は五十代ぐらいだった。その人には「こんなところで網を振り回さないでくれ」と叱られた。これはもっともである。大人げなかった。

*1 20041018 今年二回目の石垣島・西表島(6)
*2 ようこそ浦内川へ
*3 20041020 今年二回目の石垣島・西表島(8)
*4 蝶の保護について

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?