20060830 紙マルク
ドイツの一兆マルク硬貨$${^{*1}}$$を調べている過程で、また不適切な説明を掲載しているWikipediaの記事$${^{*2}}$$を見つけた。
一兆マルク硬貨が発行された時期のドイツ貨幣事情を語る時に「パピエルマルクPapiermark$${^{*3}}$$」という言葉が登場する。これは1922~23年のドイツの超インフレ時期に発行された紙幣を指す。ドイツ語で「紙でできたマルク」を意味し、硬貨を作っても$${^{*4}}$$出回る頃にはインフレのため殆ど無価値になってしまうので、直ぐに印刷できる紙幣だけを中央銀行は発行するようになった$${^{*3}}$$。中央銀行が発行する正統なマルクは紙幣だけなので「紙のマルク」と称したらしい。
にもかかわらずWikipediaでは「これらの紙幣は紙で作られた通貨としてパピエルマルクと呼ばれた$${^{*5}}$$」と説明している。今はプラスチックの紙幣$${^{*6}}$$もあるので紙幣は紙製とは限らないが、「紙幣は紙で作られているから『紙のマルク』と呼ばれた」という説明は無茶苦茶である。
当時は中央銀行以外にも町$${^{*7}}$$や企業$${^{*8}}$$がNotgeld(ノートゲルト)$${^{*9}}$$と呼ばれる緊急通貨を発行していた。Notgeldには紙幣$${^{*10}}$$も硬貨$${^{*11}}$$もある。当該の記事には「硬貨はこの期間鋳造されず」とある。これも適切ではない。
Wikipediaの編集に参加して直せばいいかもしれないが、この様な記事は、おそらくごまんとあるのだろう。もうWikipediaは良くはならない。焼け石に水である。
*1 20060830 一兆マルク
*2 20060501 ウィキペディア(2)
*3 Papiermark of the Weimar Republic, post World War I hyperinflation era
*4 500_MARK.jpg
*5 パピエルマルク - Wikipedia
*6 世界の通貨|外為講座|外為情報|外国為替取引 外為どっとコム
*7 Banknotes from Germany (notgeld) – Numista
*8 Inflation 1923 Intro. | Notgeld.com
*9 What is notgeld? | Notgeld.com
*10 Notgeld: Emergency Money in Inflationary Germany: Design Observer
*11 Münzkatalog-Online - Westfalen, 1 Mark, Notgeld, Stein, 1921, JN10
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