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20061202 失敗知識データベース

 失敗知識データベース$${^{*1}}$$と言うのがある。これは科学技術分野の事故や失敗の事例を分析し、それから得られる教訓とともにデータベース化したものである。このデータベースの特徴は失敗の原因、行動、結果を分類して体系化した「失敗まんだら$${^{*2}}$$」で失敗を表現している点である。失敗事例を作ってもそれが上手く他の人に伝わらなければ、再発防止にならない。上手く伝達するためには伝わるような表現が必要である$${^{*3}}$$。そこで開発されたのが「失敗まんだら」ということらしい。この図形が仏教で使われる曼荼羅$${^{*4}}$$に似ているのでそう名付けたようだ。

 そもそも曼荼羅もしくは曼陀羅$${^{*5}}$$とは何か。画面に様々な仏を描いた図形や記号を特定の形式で配置し、悟りの世界や仏の教えを示した図絵だそうだ。抽象的な教えを何とか広く一般に伝えようとするための図形なのである。形が似ていると言う点と説明するための図形と言う点とで「まんだら」と名付けられたのだろう。そう言えば南方熊楠$${^{*6}}$$の曼荼羅$${^{*7}}$$というのがあった。

 なるほど失敗の曼荼羅とは言い得て妙である。それにしても科学技術における失敗とはどういう意味か。

 失敗の原因は全て人間にある。データベースの解説の中でもそうはっきり言っている$${^{*8}}$$。例外なく人間以外の原因の失敗はない。何故か。その事象が失敗かどうかは人間が決めることだからである。「失敗」は科学技術においては客観事実ではなく、主観的な判断である。従って経済、政治などの分野で活用されるのだろう。医療や科学実験における事故防止にも役に立つかも知れない。しかし科学技術の研究において思った様な結果が出ない、捗らないと言ったことの対策には使えない。むしろこのデータベースの知識はそのような場面では創造を阻害するような固定概念を植え付けるだけの害毒にしかならないだろう。

*1 ☆ JST失敗知識データベース ☆ 科学技術分野の 事故や 失敗の 知識と 教訓
*2 JST失敗知識データベース > 検索方法 > 失敗まんだらで探す
*3 JST失敗知識データベース > 失敗まんだらとは?
*4 両界曼荼羅図
*5 江南市 曼陀羅寺
*6 南方 熊楠 | 和歌山県文化情報アーカイブ
*7 南方マンダラ
*8 2. 失敗出来の脈絡と構造化

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