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ポンペイ展と本屋とパン

最近の展覧会で「クッションを買うために行きたい」と感じたものがふたつあって、ひとつはラフレシアクッションが買える「植物展」、もうひとつが炭化したパンのクッションが買える「ポンペイ展」。
最近は展覧会の物販もシュールなものとかセンスのよいものが多くて嬉しいね。

ヒグチユウコグッズに囲まれてご満悦の、
我が家のラフレシア

で、いつのまにかポンペイ展の京セラ美術館巡回が終わりに近づいてきていたのに気づいて今週末は急遽京都へ。
来週再来週末は用事があるので、ぎりぎりセーフです。

ポンペイという都市については、「なんかあの……埋まったやつ……」くらいの知識しかなかったものの、十分楽しめました。
展示室に入ってすぐの映像では、在りし日のポンペイが火砕流に飲み込まれていく様子がCGを駆使して再現されていたのが印象的で、そのあとの展示の「生っぽさ」のようなものを高めるのに一役買ってたなあ。そのすぐあとに展示されている若い女性の石膏像と、溶けて絡まりあった遺物も。「そこにいた」というキャッチコピーの通り、その都市で暮らし、災害に飲み込まれていった、市井のひとたちの息づかいのようなもの。
展示のそこここでも、そんな意図が感じられました。モザイク画のレプリカが床に展示されていたり、一部だけ展示されている壁の装飾を溶け込ませるように、その周りの壁が同じ模様になっていたり、当時の中庭を再現した中に銅像が配置されていたり、当時の人の生活を思い浮かべられるような工夫がすごく見受けられる。予備知識の乏しい身としては、ガラスケースのなかに粛々と並んでいる展示物を見るより俄然面白かったです。

前回の記事でも書いたんですが、最近YouTubeで藤村シシン先生の古代ギリシャ解説動画をよく見ていて、進研ゼミばりに「アッあれ動画で見たやつ!!」という瞬間がちょくちょくあったのも楽しかったな。柱の様式とか家の造りとか劇で必ず仮面被る話とか。大理石の祭壇見て「あ、中庭に必ずあると噂のアレ……」とにんまり。
もしこれから見に行かれる方がいたら、シシン先生の動画での予習とてもお勧めです。

展示物で特に好きだなと思ったのは、金属加工品とモザイク画でした。
アクセサリーや装飾品の加工の細かさもさることながら、水道管やら浴槽の吐水口やらそういうものの技術的な気配が、なんというか全然(すごい感じ悪い言い方ですが)「稚拙」な感じがしないんですよね。近代日本製ですよーとか言われたら全然騙される自信がある。

蛇の指輪は牙の細工がものすごい。
ヘビモチーフのアクセサリーが結構あって、見るたびに「ブルガリ!ブルガリ!!」となってました
ハルピュイアが支える壺。爪とか踵の表現がすごい

モザイクも、なんかドット絵みたいな大味なやつ、というイメージがあったんですが、めちゃくちゃ細かい色石が細密に組み合わされている。例えば女性の鼻筋に当たる日の光とか頬の薔薇色が、何色もの石で表現されていてニュアンスの細かさに見入ってしまいました。

劇のお面、いろんなところで出てきたけどとってもキュートだな
もるん……としたワニがかわいい
遠目で見たら油絵みたいなんだ

そしてポンペイの美しさに浸るほど、その街が一瞬のうちに滅んでしまったという事実が切なくなってくる(キュレーターの狙いにまんまと乗っかっている)。
最後の展示室に用意されていた動画で、研究者の方が「災害考古学」という言葉を口にしていたことが印象に残っています。切ないけれど、そこから学んで今の生活に活かしていくんだね。人類のそういうたくましさのようなものが、やけに愛おしく尊いものに感じられる企画展でした。

そして物販!
目当てのクッションは思ったのとちょっとイメージがちがったので見送り。
ダークホースは図録。もともと買う気は全くなかったのですが、装丁が素敵すぎたのと、いろんな解説をきちんと読み返したいな、と思って衝動買いしてしまいました。
図録と古書は一期一会なので……(という言い訳を最近便利に使っている)。

ポンペイレッドと大胆なフォントがかっこいい
わんこ きゃわ
デフォルメじゃなくてモザイク画をそのまま使ってるのがまたなんとも……
本家。ちょっとアヌビスみがあってきゃわゆい

ほかにもサンリオや、イラストレーターの長場 雄さんとコラボしたゆるかわいいグッズがたくさんあって心が惹かれたのですが、我慢。

京セラ美術館を後にし、フォロイーさんの記事を拝見してからずっと行ってみたかったパン屋さんへ。

お店の前に長い行列ができていたのでイートインは諦めて、roysolさんの記事で見ておいしそう! と思っていたカルダモンロールと、好きなパンbest5には確実に入るであろうベーコンエピをテイクアウトで購入。蔦屋書店すぐ近くの芝生エリアに座って食べることにしました。
書店内のスタバにも行列ができていたので、コンビニでホットコーヒーとサラダを調達。もう人出もすっかり元通りですね。

どんな味なんだろう……と気になっていたカルダモンロールをまずは一口。

芝生とパン、幸福の権化みたいな組み合わせ

びっくりしたのはその食感です。シナモンロールみたいにしっとりしたものを想像していたら、表面がキャラメリゼされていてパリパリざくざく! 噛み締めるときれいに層になったデニッシュ生地の間から、バターとシロップがじゅわっと染み出ます。その後にふわっと鼻に抜けるスパイスの甘やかながらも鮮烈で清しい香りが、こってりした甘味を洗い流して次の一口を呼ぶのです。
家にもカルダモンのパウダースパイスがあるので香りは何となく知っていたのですが、カレーぐらいでしか使ったことがなかったんですよね。
甘いパンとこんなに相性がよいとは! 家でもお菓子作りに使ってみたくなりました。

思ったよりもボリュームがあって満足してしまったので、ベーコンエピは翌日の朝ごはんに繰り上げ。

見よこのツヤを

上顎に刺さるくらい尖ってないとベーコンエピとは認めない勢の私もにっこりの穂先の角度と、もっちりぎゅむぎゅむした噛み心地、ベーコンの旨味と濃い小麦の風味の相乗効果が大変美味でした。

お腹も満たされて、次の目的地へ。

「デザインのひきだし46」で使われている表紙のすべて(なんと1,000種類!)を余さず見られるとのことで、絶対行きたかった展示です。書店で在庫があればいくつかのバージョンは見られるかもしれないけれど、全種類は絶対無理だものね。

↑箔押し加工を手掛けたコスモテックさんのnote、血湧き肉踊るので……ぜひ……

会場に入ると壁に隙間なく無数の「表紙」が貼り出されていて、圧巻の一言。

同じデザインでも紙の色や質と使う箔によって、こんなにも印象が変わってくるんだなぁ。
個人的に嬉しかったのは、表紙の「指示書」の拡大コピーが見られたこと。
ここは腐食で、ここは彫刻で、こういう加工をして……と手書きで書かれた細かい指定と、実際に出来上がった表紙を見比べていると、あっという間に時間が経ってしまいました。
表紙を集めた資料集とか出ないかなぁ、と思いつつも、実際に目の前にしないと箔のキラキラや加工の細かさは伝わらないよなぁ、とも。
しっかりと目に焼き付けて帰ってきました。

帰りに会場1階の大垣書店へ。
デザインやカルチャー系の品揃えが充実していてうはうは。
欲を言えば「デザインのひきだし」のバックナンバーが置いてあれば……私が見つけられなかったか、売り切れちゃってるのかな。
現物があれば、展示を見たひと全員買っちゃうと思う。

ということで、京都に足を踏み入れつつも寺社仏閣には一切立ち入らず、本とパンのみを買って帰るという休日でした。

またやりたい。


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