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【詩】道を行く

道を行く
線路沿いの道を
目抜き通りの歩道を
川沿いの遊歩道を

何かのためでなく
どこへ向かうでもなく
ただ、道を行く

ジョイスティックを目いっぱい前へ傾けて
まっすぐまっすぐ
ひたすら道なりに
ただただ歩いて行く

一心不乱に道を行く

怒りも憂いも
悲しみも憎しみも
吹き飛びはしないが
つかの間、奥底にしまいこんで

ただひたすらに、道を行く

風に吹かれて
暖かくはない空気に身を晒し
雨上がりと排気ガスと草のにおいを吸い込み
川の流れと走り去る車と己のモーター音を聞き
街路樹の落葉と信号機と足元の勾配に目をやりながら

どこまでも道を行く

この先に、何があるでなし

おそらくどこかで
歩道の切れ目の段が高くなり
あるいは歪んだ地面と急勾配に阻まれ
あるいは狭い歩道の電柱に遮られ

そうしてもう、進めなくなるだろう

それまでは
ただ道を行く

それまでに
この身体が散り散りに
風に溶けてはくれぬだろうか

この先に、何があるでなし
戻れども、何があるでなし

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