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日本一周旅中にコロナ疑惑になった手記〜挑戦と責任は、隣り合わせだ〜

クラウドファンディングで135万を集めて日本一周をしていた大学生。その最中、体調を崩してPCR検査をうけるまでの事態になりました。
人の期待を背負いがちな人そんな自分を誇ってるのがどことなく気恥ずかしい人、そんな人に読んでもらいたいです。

挑戦しててすごいね、頑張っててすごいね、私も何かに挑戦したい、自分は挑戦してないことが不安…

世の中は、何か一つのことに夢中になっていると、すごいすごいって言う。

たぶん、私もそんな自分に自惚れているんだと思う。だから、こうなって初めて気付くことが沢山あった。

このことを記事として書くか迷いましたが、自戒の意味も込めて、そして私の中の本能がこれを書くべき、と訴えていたので、この場で記したいと思います。とても長いです。いつものテンションと違いますが、ご容赦ください。そして、読んでいただけると嬉しいです。

目次

▶︎ゲストハウスを巡る日本一周が始まるまで(忙しい人は読み飛ばしておけ!)

私はゲストハウスが好き。

あの独特な、旅人同士が共有スペースで語り合い、初対面なのに謎の友情が芽生える、雰囲気。旅を更に魅力的にしてくれる場だと思い込う。

しかし、この新型コロナウイルスの流行により、観光業界に暗雲が立ち込めた。

大好きなものがなくなってしまう。その悔しさだけで、私は5月から3ヶ月間、

オンライン配信で47都道府県のゲストハウスと繋いで紹介すると言う企画、「おうちで日本一周」を達成した。

コネクション0から始まり、企画書書きから取材交渉、SNS運営やメディアへの売り込みなど、我ながらどっからその気力わくの?と言うレベルで動き続け、たっくさんの人に出会い、助けられ、なんとか達成することがでた。

あの時の私は、とんでもないスケジュールをこなしたと思う。頑張った、って胸を張れる気がする。

いま思えばとんでもない過密スケジュールで初対面の人と話してた

配信も40軒も突破し、達成が見えてきて嬉しい!やった!と思った次の瞬間

本当にゲストハウスに泊まりに行きたい。
協力してくれたオーナーさんに会いたい。

そして

もっとゲストハウスを沢山の人に知って欲しい

純粋にそう、思った。

この時は、Gotoキャンペーンが始まってすぐ。

星野リゾートなどの超高級宿に破格で泊まれるとあって、観光業界が再び盛り上がりはじめていた時期であった。

しかし、観光が推奨されつつも、注目されるのは高級宿ばかり。

人とスペースを共有する不安や、もともと安価であることから割引率が高くない事、そもそもgotoキャンペーンの適応がされていなかったり…

ゲストハウスにとって、芳しくない状況は続く。

普通の大学生の、わたしにできること。わたしがしたいこと。

いろいろ考えた結果

クラウドファンディングでお金を集めてゲストハウスを広める日本一周すると決めた。

勿論、かなり迷った。ちょうど夏休みの、コロナウイルスが増加し騒がれていた時に企画を始めたことから、今この時代に行うのは不謹慎なのではないか?と何度も何度も頭を巡らせた。

ただ、この不安を素直にゲストハウスオーナーさんにぶつけて見ると

時代は常に変わり続けるもので、今は変わるべき時。それを変えていけるのはきっとゆずちゃんだよ

と言ってくれた。

失敗したら、本当に今やるべきではなかったと思って諦める。

クラウドファンディングであれば、ただバイトしてお金を貯めるよりも、支援してくれた人に自分ごととしてゲストハウスに興味を持ってもらえる。

そう信じて、クラウドファンディングをリリースした。

気をつけたことは、真摯であること。お金云々の前に、一人一人の支えてくれる人に、しっかり向き合うこと。

人にしてもらいたいと思うことはなんでも、あなたがたも人にしなさい

わたしの学校のモットーかつ幼い頃から信じ続けていた言葉。

だから、誰にもコピペメッセージを送らないで、電話をかけて自分の思いを伝えた。急に友達が電話してくれたら嬉しいな。頑張っていることを打ち明けてくれたら嬉しいな。私がそう思ったから、人に対してもそうした。

8月のスケジュール。緑色が友人への電話など。一回2時間くらいは話し込んでたと思う。ふつーに楽しかった。

その結果、なんと 163人の方から135万円のご支援をしていただけた。

つまりは大成功。

私は喜び勇んで旅に出た。

どこかで、私はみんなの想いを背負ってる、期待されてる、と誇っていた部分も、あったと思います。

▶︎なんとなく、無理はしていた

旅は、本当に楽しいものだった。

毎日新しい人に出会い、美味しいご飯を食べ、おすすめな場所に連れて行ってくれたり。

私は人との共同生活が苦じゃないタイプだから、辛いなって思うこともなく日々を過ごしていた。

でも、クラウドファンディングの終了日の翌日10月30日

唐突に夜間の呼吸障害に見舞われた。
急に咳き込むし、息をすればヒューヒューと音が鳴る。

まあでも、ちょっとした疲れだろう。寝れば治る。とその日は20時には眠った。

翌朝、起きてみれば咳の症状は治まっていた。 

なーんだ、やっぱりただの疲労か。

しかし、その日も夜ご飯を食べていたら、急に咳き込み、おかしな呼吸音が聞こえてきた。

流石に一抹の不安は抱えつつも、旅程は旅程だ、
ちょっとくらい無理するくらいが旅だ、と言い聞かし、次の目的地、安曇野地球宿へ。

しかし、その日も夜になると相変わらず咳き込んでしまう。たまたま宿泊していた看護師さんに気管支炎じゃないかと診察を勧められ、念のためにオーナーの望さんが送迎してくれて病院に行くことになった。

▶︎コロナ疑惑から、PCR検査を受けるまで

しかし、一軒めに行った病院から対面診察を断られる。

電話で自分の症状を伝えると、

「恐れ入りますが、二週間以内に他県に出入りいたしましたしょうか?」

と聞かれた。

堂々と自分の旅のことを話すことができない自分がいることに、気がついた。

日本一周?このご時世に?迷惑がかかってるんだよ…

嘘をついたところで、どうせすぐにバレるし正直に話したけど、

私の旅は、人に迷惑をかけていたのかもしれない…

初めてそう思った。

医者からは症状が似てるから…という理由で

PCR検査のために保健所に行くことを勧められた。

その瞬間、

コロナウイルス、感染、検査、ゲストハウスの営業休止、店の風評被害、クラスター、重篤化、実名報道、非難、アンチ、親への迷惑、就職活動、ネットで広まる、

いろんな、いろんなことが頭を駆け巡った。

なんか、そんなことを言われると本当に体調が悪くなった気がする…

熱は36度台なのに、だるくなってしまった体でPCR検査まで一時的に宿に戻ることにした。

▶︎1人で食べた、手作りごはん。

私のとまっていた安曇野地球宿は、みんなで一つの手作りご飯を囲む、農家民泊。

交流を楽しむ宿だから、私の泊まっていた部屋も1人部屋ではなかった。

まあ2時間くらいだし、コロナ疑惑のある人を宿に入れたら後々めんどいし、送迎に使ってくれた車内で待機します、と伝えた。

しかし、待機から数分したところで

「ゆずちゃん。そこだと寒いだろ。ご飯運んであげるから、この部屋で1人であったかくしてな」

本当は、今日も別の人を受け入れなきゃいけない部屋。しかも元々相部屋仕様だから収容人数も多い。

私が使ったら、検査結果が出るまでこの部屋は使えなくなるっていうのに、受け入れてくれた。

お昼ご飯まで…!

めちゃくちゃ美味しくて、わたしが今この状態じゃなかったらおかわりしてた。とてもとても嬉しかった。

でも

障子越しに聞こえる他のゲストさんの笑い声を聞いていると、1人のごはんがなんとなく寂しく感じてきて、

この先待っているかもしれない隔離状態が、ほんとにほんとに怖くなった。

二週間も、一人。しかも、この中の誰かが、あの子供が、あのおじさんが、あのおかみさんが、同じかそれ以上の症状になるかもしれないと思うと、なんとも言えない、恐ろしいものの加害者のような気持ちになった。

予約時間になり

全身防護服を着た看護師さんが、わたしの検査をしてくれた。

「カメラ、かっこいいね。本格的にやってるのね。」

そんな言葉をかけてくれた。彼女なりに私にきをつかってくれたのかな。

その後、医師との診療に。でも対面はできないから電話での診察。

こんなに、こんなに大事になってしまったんだなって、直接触れることのできないビニール詰めされたipadを握り締めながら思った。

1日で結果が出る、だそうで。私はひとまずビジネスホテルで待機することに。そこまでも望さんは送ってくれて、今日一日の仕事という仕事を、私のためになしにしてくれた。

コロナになったら、この人の宿は休業で、それで、もしかしたら風評被害とか、わたし、わたしが、私の…

「ゆずちゃん、僕らもプロだ。それくらいの覚悟で宿を開けている。だから、病気になった自分を、責めてはいけないよ。」

泣きそうになりながら、彼の車を見送った。

▶︎旅して初めて、一人ぼっち

わたしは今まで、いわゆるビジネスホテルに泊まったことがなくて。これが初めての宿泊だった。

お風呂とトイレとベッドとコンセント。現代人が生きるのに必要なものをつめこんだ部屋。

一人は、なんだかすごく寂しかったけど、なんだか少しホッとした

ここまでずーっと人と顔を合わせていたから、いつの間にか疲れが溜まっていたのかもしれない。

宿はとっても安かった。gotoが効いて、ゲストハウスよりも安価。なんとなく何故か悔しいなと思いつつ、ご丁寧についてきた地域協賛クーポンで

ピザをデリバリーした。

どこか、自分で自分に、ジャンキーなものが食べられる元気なわたしを言い聞かせたかったのかもしれない。

特に気持ち悪くなることもなく、丸々一枚ちゃんと食べ切れた。

やったー。元気じゃん。大丈夫だよ、ただの軽い風邪だって。

言い聞かせながらも体は震えていて、親と、少数の友人にどうしよう…と相談も投げかけるだけ投げ、ベッドでいつのまにか寝てしまった。ごめん、みんな…

▶︎検査発表の時

朝。

9時。

医者から電話がかかってきた。

「も、もしもし…」

「あ、今村さんおはようございます。結果が出まして。陰性です。そのため書類などが〜」

そこからあとは、あんまりちゃんと聞き取れなかった。

電話口の看護師さんは淡々と必要事項を伝える。おめでとうも、よかったですね、も言わない。

こんな連絡何本も何本も、嫌というほどしてるんだろう。

わたしも、おめでとうわたし!なんて思えなかった。

ただただ

誰かの、ゲストハウスの迷惑だけはならなくて心底良かった

そんな感情しか浮かんでこなかった。

そのまま旅を続けるか、かなり迷った。

家族とも話して、望さんにも、一度休んで、ここから学んだことを生かしていけ、と言っていただいて

一時帰宅することにした。

▶︎旅は、誰のためにするんだろう。

最後に、最後にここだけは行きたいと思って、体調不良なのに本当にごめんなさいと思いつつも

「目的のない旅人展」

に足を運んだ。

開催場所は、目的なかったらくることもないであろう、無人駅の伊那新町駅。

人っ子いない道をとぼとぼ歩きながら、なんでここを歩いているんだろう、明日の昼には家にいるんだろう、とふと考えた。

挑戦しててすごいね!日本一周てすごいね!クラウドファンディングすごいね!家に帰らないなんてすごいね!

わたしは、"すごいね"のために旅をしていたんだろうか。

ゲストハウスのためとか、そんな綺麗事をならべて、結局

自分がすごくありたいから

なのだろうか…?

そんなことはないって思いつつも、わたしが旅に出た目的はなんなのか、どことなく不安になって、何か、ヒントが欲しくてここにきた。

場内は撮影禁止だった。

写真はここには一枚もないが、13人の、

「目的もなく、旅をした」

人々の言葉と、写真が書いてある。

自転車で世界一周を果たした出堀良一さんの展示に、こうあった。

ロバが旅に出たところで
馬になって帰ってくるわけではない

自分探しのために、将来の夢を探すために、旅に出たからといってその結果がついてくるわけではない。どこかの国の言事。

これは彼の意見だが、自分探しのために旅を始めるのは、やめておいた方がいいと書いてあった。ただ旅したからって、見つかるもんじゃないから。

じゃあ。

旅は、挑戦は、目的がなくて、純粋なものであるかがベストなのか。そこに、自己成長とか、他者の存在とかを絡めたら、その想いは濁ってしまうのだろうか…

私は少し俯きながら他の展示を見た。
誰も彼も誰のためでもない、自由な旅をしていた。

自分がしたいからやる。

彼らは旅という大いなる自己満足に責任を持っていた。

でも、

不思議なことにわたしは彼らを羨ましいとは、少しも思わなかった。

どうして?

彼らは、自分のために旅をしている。人のためとか、成長とか、そんな他者への責任は追わず、自分に対しての責任のみで動いている。それこそが旅だ。現に、そんな彼らはこうして偉大なる旅人になってる。
対して私はどうだ。ゲストハウスのため、人にすごいと思われたいため、私を応援してくれる人のため。第三者と責任を無理やり共有するから、旅の思いがブレるんだy…

いや、違うな。

私は、挑戦の責任を私以外の存在と共有することで私自身を幸せにするんだ。

なにか、一つの結論にたどり着きかけた。

▶︎挑戦と責任は、表裏一体だ

挑戦には、責任が付き纏う。

目的のない旅人のような、自分の意思のみで挑戦を始めた人は、自分に対しての責任。

私みたいな、人を巻き込んだ挑戦は、自分と、自分に多少なりとも期待してくれた人への責任。

当然後者の方が制約は大きい。問題が起こったときのし掛かるものも大きい。

でも、私はひとと責任を共有することを選んだ。

それは、自分一人で背負い込むことからの逃げ、と言われるかもしれない。

でも私の場合は、人の期待と責任を背負って挑戦を全うした先に私の幸せがあるんだ。

私は今のところ、一人で孤高に生きる、自由な旅人にはなれない。
常に周りに人がいて、

私がした行動でほんの少しでも何かが変わって生まれた笑顔が見れるのが、私の幸せ。

偽善者???自己満足???上等だ。間違っちゃいない。てゆうかそうだ。

人にしてもらいたいと思うことはなんでも、あなた方も人にしなさい。(マタイによる福音書より)

わたしは、わたしを幸せにしてほしいがためにひとが幸せになる瞬間をわたしの力で作り上げたい。

それが、今は日本一周なんだ。
私にとっての、旅なんだ。

だから一回、エンジンを切ろう。

このまま無理やりでも続けて行き当たりばったりの限界を求めるのが、楽しい旅人なのかもしれない。

でも、私は背負ってる責任があるから。

みんなと共に動いてるから。

やりすぎません。いい子ちゃんでいます。

それが、

わたしの最高の自己満足であり、私の最高の旅であるはずだから。

2020.11.7
今村柚巴

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