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【今でしょ!note#166】オプトイン決裁とオプトアウト決裁を使い分ける

いかがお過ごしでしょうか。林でございます。

元電通で現在はAugmentation Bridge社の代表をされている小柳はじめさんの話を聞いて、かなり勉強になったし、自分の仕事のやり方にも取り入れていこうと考えた話があります。

小柳さんは、長時間労働が常態化していた電通で「労働環境改革本部」室長として「残業60%減、成果アップ」を実現した方です。そんな小柳さんの考え方を知り、私も今年度は自分のチームでの時短の取り組みにチャレンジ中なわけですが、時短にも繋がるし、マネジメントや組織内のビジネスプロセスのあり方についても考えさせられたのが、「オプトイン決裁とオプトアウト決裁」です。


オプトイン決裁とオプトアウト決裁

「オプトイン」「オプトアウト」は、マーケティング用語です。
何らかのサービスを使うユーザーが、情報を受け取る際や自らに関する情報を利用される際などに、許諾(パーミッション)の意思を示す行為が「オプトイン」、反対に許諾しない意思を示す行為が「オプトアウト」と呼ばれます。

「オプトイン決裁」は、組織的に何かの決裁を行う際に、決裁ルートに乗っている人全ての「承認」が得られることで決裁完了するもので、「オプトアウト決裁」は、時間内に「承認しない」という意思が示されない場合、自動で決裁完了する、という考え方です。

おそらくほとんど全ての組織では、「オプトイン決裁」が取られていると思います。つまり、決裁ルートに乗っている人はもちろん、直接的に決裁ルートに乗っていない人まで含めて個別説明の場を持ち、一つ一つ了解を得ながら最終決裁を取得するやり方です。

組織内で上手く話を進めていく人は、このオプトイン型の立ち回りが巧みで、「俺は聞いてない」という人を作らないように、その案件における直接的な決裁ルートに乗っていない人も含めたキーパーソンを抑え、上手く話をインプットしながら、組織の了解を得てきました。

JTC(Japanese Traditional Company)どころか、JTS(Japanese Traditional Society)な日本においては、農耕民族・村社会が長く文化に根付いてきたため、もはや「オプトイン文明」があらゆる社会システムに予め組み込まれているため、「オプトイン決裁」の方が馴染みやすいのです。

一方で、「オプトイン決裁」には欠点もあって、緊急時の対応では決裁者の人数に比べて決裁対象案件が過剰になってくると、組織の意思決定が遅れるという点が指摘されます。
そこで、軍隊などでも採用されているのが「オプトアウト決裁」で、何らかの決裁の起案者が決裁ルートを含めた関係者全員に対して、承認を得たい案件をブロードキャストで伺います。
そこで例えば「このプランに懸念がある人はコメントください。コメントがなければ3日後に承認されたものとします」という文章が添付され、反対意見がある人は、同じくブロードキャストで関係者全員に反対の理由と承認条件を明示する、という仕組みです。

「オプトイン決裁」では、決裁完了までのチェーンにいる人全ての承認が完了しないと決裁完了とならないため、いつ決裁完了できるか不確定です。
一方で「オプトアウト決裁」では、1日以内、3日以内と、決裁完了までの時限が明確になるため、「オプトイン決裁」に比べて決裁スピードが早くなるメリットがあります。
また、「俺は聞いてないオジサン」が決裁スピードを遅延させることを防ぎ、全員にブロードキャストしているので、「聞いていない方が悪い」とできます。

オプトイン決裁以外にも手段を持つことが重要

小柳さんの話では、「決してオプトイン決裁を否定しているわけではなく、むしろ平時においては、オプトイン決裁の方が平和が保たれる」ということです。

これは確かにその通りで、全てのビジネスプロセスをオプトアウト決裁に変更するには、決裁ルートに乗っている決裁権者側への個別説明が入ることなく、決裁権者側からデジタルな情報にアクセスして、決裁案件を確認していく必要がありますから、相当優秀なマネージャーしかいない組織でないとなかなか成立するのは難しいでしょう。

一方で、社会変化が目まぐるしく、よりアジリティ高い組織で「速さ」が価値の大きな要素の一つになってきている現代においては、オプトアウト決裁の選択肢を持っておくことが大切です。

私自身も、組織における決裁では、決裁ルートに乗っている人、乗っていない人に説明に周り、ステップを踏んで了承を得ていくスタイルが当たり前だと刷り込まれていました。
そして、重要な決裁案件でないにせよ、オプトアウト型の了承の取り付け方を見ると「進め方が乱暴だなぁ」と感じてしまっていた部分もあります。例えば、小さな話では、「議事録の確認をお願いします。4月26日の18時までにコメントがなければ、確定版とします」みたいな連絡を受けると、議事録確認する以外にも仕事がたくさんあるのに、強引だな・・と感じていた、というようなものです。

でも、「大小含めて全ての決裁はオプトイン決裁でないといけない」という前提を外すだけで、生産性向上や組織のアジリティ向上につながる面もあると考えます。だから、Japanese Traditional Societyで生まれて、幼少時代からオプトイン文明がインプットされた自分を認識しながら、オプトアウトの選択肢を明示的に選び取っていくということが大切ですね。オプトイン文明というOSの上に、「オプトイン決裁」と「オプトアウト決裁」の2つのアプリケーションをインストールして、場合に応じて使い分ける、ということが、自分のチームの時短実現と生産性アップにも貢献しそうだと考え始めています。

オプトアウト決裁対象の業務を定義する

いきなり会社全体の決裁に関するビジネスプロセスを変更するのはハードルが高いですから、自分にできることはまず、自分のチームで実践して、小さな成果を出していくことです。

まずは、前回の「チーム時短実現奮闘記」でご紹介した月1回の自分たちの働き方を振り返る会において、「オプトアウト決裁に変えるプロセスを定義する」ところが出発点だと考えています。

例えば、上述した「議事録確認」という小さな単位での仕事においても、議事録を書いた人が、発言者全員の確認が終わらないと全体に展開できない、というオプトイン型の決裁手段を取っていると、全員の確認が終わるまで議事録が確定版にならず、全体への展開が遅れます。
議事録を書いた人は、全員の確認が終わったことを気にする時間が生まれ、議事録を書く仕事をDoneにして、脳内メモリから議事録タスクを消し去ることができず、他の仕事の生産性を落としているはずです。

しかし、特に内部の議事録なんて全員の確認が終わっていなくても致命的なエラーにつながるわけではありません。こういう性質の仕事であれば、「議事録確認お願いします。18時までにコメントなければ全体に展開します」でいいと思うのです。

もちろん「オプトアウト決裁」は、決裁者側の負担を上げます。多くの案件の優先順位を常に切り替えながら、自分で情報にアクセスして判断をし、懸念があれば、懸念理由を言語化して発信する必要があるからです。

でも、本当に優秀なマネージャーは、オプトアウト決裁にも耐えうる能力を鍛えないとダメだと思うのです。オプトイン決裁Onlyで、情報が上がってくるのを受け身で待って、上がってきたらダメ出しするだけの仕事のスタイルしか出来ないのであれば、残念ですがそのポジションを降りてもらう。
かなり自分にハードルを上げていますが、チームメンバーには「僕をマネージャーとして鍛えてくれ!」と言って、どのような業務であれば、オプトアウト型の方が適切なのか、一度チーム内で議論してみようと思います。

それでは、今日もよい1日をお過ごしください。
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