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【国内ドラマ史上圧倒的クオリティ!今じゃテレビドラマじゃできない演出もてんこ盛り!それについてテレビドラマ界の現状の裏側も少し語ります……】 今際の国のアリス

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順を追って説明する為、一番の問題は最後の方に書くので、読むのかったるい方はメメントのように後ろから読んでもらっていい!

初めて国内実写作品について投稿します。

ボクの職業柄、邦画や国内ドラマ含め、監督やスタッフにも知り合いが多い為、些細な発言でも誤解を与えてしまうことを危惧し、国内作品への投稿は避けてきたのだが、この「今際の国のリアス」を観て、ボクの中で何かしらの「希望」を感じたのは確かで、最近、ボクも仕事でぶつかってきた「演出の障害」等を本作の演出と比べた時、いろいろと感じることがあったので、筆をとった次第である。

一昔前(20年前くらい?)、ボクの記憶の中で最初にテレビドラマ界含め、その後の映画界にまで「演出の障害」として問題になったのが、まずは車のシートベルト問題だった。多分、この問題に関しては、みなさんの耳にも届いてるだろう有名な話。簡単に言うとこうだ。

銀行強盗が逃走する際も、車のシートベルト着用は絶対。

もう今じゃ車のシートベルト問題は当たり前になってしまったので、何かの犯人が逃走する時、慌ててシートベルトを着用したところで、何も違和感はない。きっと犯人も事故が怖いのだろう。そう勝手に都合よくこっちも解釈するくらいにはなった。そして、次に問題になったのが……

タバコのポイ捨て演出

勿論、この演出も今じゃ地球に優しくない。そう思っている。しかし、当時は、外で何か張り込みをしている人物が、イラただしく吸っているタバコを地面に捨て、次のカットで、その吸い殻を踏み潰して火を消す足元がクローズアップされる。その足元には既に吸い殻が数本落ちている。視聴者はこれを観て、この人物がもう既に長い時間この場所でターゲットを待っていることが理解できる。それも今じゃ当たり前のようにNGな演出である。タバコはきちんと灰皿にいれないといけないし、もう今じゃ外でタバコを吸うことすらほとんどが許されない。勿論、歩きタバコもダメだ。ここまではいい。時代も変わって、今や世界中で禁煙ブームだ。外でタバコを吸ってポイ捨てするなんて、逆に時代遅れの演出となる。しかし、次からが問題だ……

国内テレビドラマ/大手メジャー映画のほとんどがタバコ喫煙シーン自体NG

不良だろうがヤクザだろうが、日本のテレビドラマの中の世界では全員が全員禁煙者だ。なんなら、この世界にタバコという物自体が発明されていないパラレルワールドになっているとも捉えられる。ごくたまに、テレビでも喫煙シーンを流すドラマがあるが、はっきり言って、それはこの時代「攻めた演出」と理解して貰って構わない。続ける。

未成年飲酒

説明するまでもない。とにかく法律に反することはダメなのだ。殺人描写はいいのにね……(笑)もうそこはいい。飲酒については、もっと面倒なことがある。それは……

大人の酒の席に未成年が同席する際は、未成年者の前のグラスにはストローをさす!

もう太字にほとんど説明を込めました。居酒屋に行ったことがある人はわかると思うが、居酒屋でソフトドリンクが出てくる際は、ウーロンハイとウーロン茶を店員も区別をつけ易くする為に、ウーロン茶の方にはストローがさしてあるのだ。なので、テレビドラマでも視聴者に誤解を与えない為、同じようにソフトドリンクで証明する為に、ストローをさす。もうそれは、店に限らず、家飲みのシーンでもストローをさすか、できればそういったシーンをシナリオの時点で排除する。これも全部が全部そうじゃないが、最近ではそういった事例が存在することは確かだ。

今じゃ避けては通れない演出!スマホ問題!

現代作品を撮る際、どの世界でもスマホは必須アイテムだ。スマホが出てこない現代作品なんて、クリストファーノーランの映画くらいだろう。ノーランがCG嫌いなのは有名な話で、あの名作SF「インターステラー」だってほとんどCGを使っていない。ノーランはCGだけじゃなく、スマホも嫌いで、ネットも大嫌いだ。なのに、ノーランの本を読むと、好きなもの?(美しいと思うもの、だっけか?)の中に「ウィキペディア」と書いてあった……まあ、いい。話が反れた。戻そう。

歩きスマホ演出も禁止!!

今のテレビドラマでは、公道でスマホを扱う際、電話をするにも、LINEを打つにも、その場に立ち止まり、一歩も歩いてはならない。これが段々と本当に厳しくなってきたのが最近だ。刑事が犯人を追いながら電話をする。彼氏が彼女に電話しながら駆けつける。それら、全部NGだ。着信が入ったら、立ち止まり、そして電話に出る。そしたら、一歩も歩かず、止まって話だけする。電話が終わり、スマホをしまい、そしたら、また走って良し!……というルールなのだが……

ボクの実体験!最近、某テレビドラマを撮った際に起こった出来事!

先日、ちょっとしたテレビのミニドラマを撮影した。台本にも、やはりスマホを扱うシーンは勿論のこと存在した。歩きスマホにならないよう、それなりの演出プランを考えて、撮影に挑もうとしていた。その時、問題が起きた。

スマホはポケットにしまってはダメ!

役者が扱うスマホがタイアップのものだった。なので、取り扱う際の注意点がボク監督含め、主要スタッフの元に一斉メールで届いた。すると、そこにスマホはポケットにしまってはダメ。という注意書きがあった。何故!!ちょっとボクも詳細を忘れたが(大事なとこだろ!)、どうやら、そのメーカーのスマホが、過去に熱暴走が起きたのか、その為、スマホをポケットに入れるのは危険というようなことだった。なので、スマホをポケットにしまうという行為を推奨するような演出はダメということだった。じゃあ、そのスマホどこにしまうの!しかも、シナリオ上、スマホを扱うのは男性だ。女性ならカバンにしまうのもありかもしれないが、男子はやっぱりポケットでしょ。しかも、その男の役は刑事。刑事は基本手ぶらだし、わざわざスマホをしまう為だけにカバンを持たしたくない。非常にやっかいだった。普段なら、少しでも予算を抑えるために喉から手が出るくらいの「タイアップ」。しかし、こんなにも演出に障害が出ると知っていたら、タイアップなんて正直いらんかった。案の定、ここまでのルールはプロデューサーも把握してなかった。そりゃそうだろう。スマホは基本ポケットからの出し入れでしょ……

あれ?何の話?……そう「今際の国のアリスの話」だ!

そんな昨今のドラマ事情を知った上で、本作「今際の国のアリス」を見ると、それらぜーんぶやってのけている「攻めた演出」をしている。歩きスマホ、喫煙、ポイ捨て、ぜーんぶ第一話の冒頭からやっている!

何故それができるのか?それはこのドラマがテレビドラマではなく、Netflixドラマであるからだ。予算もあり、クレーマーやコンプライアンスを意識した演出をしなくてもいいのが、Netflixという黒船である。一応、言っておくが、これらのことを普通にやっている邦画だってあるにはある。テレビドラマと比べれば、映画はまだ自由が残っている。しかし、それよりも、もっともっと自由なのがNetflixである。

国内ドラマ史上のトップクオリティ!

裏の事情ばかり書いてしまったが、それらを抜いても本作のクオリティの高さには参ったし、嫉妬した。最近、関東近郊に渋谷に見立てた撮影のできるセットを組んだ場所があり、それ以降、まるで渋谷のスクランブル交差点で本当に撮影しているかのような作品が数本ある。勿論、大半は合成だが、ロケセットを見ると、地下鉄の入り口だとか、部分部分はきちんと美術セットが建てられている。本作の佐藤監督は、今やVFX作品の監督では、三丁目の夕日の山崎貴監督に並ぶくらいの2強である。「いぬやしき」「キングダム」など、観た人にはそのVFXのクオリティの高さには気づいていると思う。

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ボクも実は最近、CGやVFXが肝となるドラマ作品を撮影したことがあるのだが、そういった技術に無知なボクは、非情にそれらのスタッフたちとのやりとりに苦労した経験がある。CG/VFXの知識に強い経験者なら、自分の頭の中にあるイメージのものを明確に伝えられると同時に、それらの作業がどれくらいの工数になるかも理解している。前述した通り、ボクは無知だった為、例えば、ここで銃を乱射したいと伝える。VFXスタッフは「何発ですか?」と聞いてくる。ボクは「なんかいい感じに。10秒?15秒?くらい?」と言ってしまう。相手は「何発の発砲に対して、着弾は何発見せますか?」とまた聞き返される。相手も完全にボクが無知なことを察して、丁寧にこう説明してくれた。「着弾が一発増えるだけで、作業日数が2〜3日変わってきます」「え!?そんなかかるの!?」という世界らしい。なので、予算がタイトな現場は、勿論スケジュールもタイトな為、それら予算もスケジュールも踏まえた上で、無駄のない明確な演出プランをスタッフに伝えないといけない。

よーく考えるとわかる。ハリウッドはそういった作品に対して、200億円〜300億円かけるところを、日本では1億円〜3億円、マックスでも10億円かければ、この国では大作である。日本では、何故上限が10億円なのか……それは国内のメジャー作品というのが、国内でしか収益を回収できない作品だからだ。つまりは、世界に向けた作品を日本のメジャー作品では撮っていないのが現状。日本の有名テレビドラマの映画化、日本で有名漫画の映画化などなど、海外の人にとっては、なんのこっちゃな作品なのである。

余談、映画界の事情「予算×3=成功映画の法則」

10億円で映画を制作した場合、制作会社が目標とする興行収入は30億円である。時々、ニュースとかで興行収入20億円突破とかあったりする。しかし、その20億円のうち、半分の10億円は劇場に持っていかれる。ボクもあまり詳しくないのだが、つまり10億円作品で20億円当てても、この時点ではプラマイゼロなのだ。なので、30億円くらい出したところから本当の黒字と言えるらしい。

勿論、Netflix映画は劇場興行のことを考えなくて良いので、その辺も自由なのだろう。ここからは予想だが、例えば「今際の国のアリス」公開の時期に、会員数が伸びれば、それは本作の効果と言えるのだろう。ただ、同時に、人気の韓国ドラマだって配信したりするので、どこまで詳細にその一つ一つの作品別の相乗効果を割り出してるかは不明だ。

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最後に。個人的に一番気になるのは本作の海外の評価。

先ほどの予算の話もそうだが、アメリカの200億円作品に対して、上限10億円予算でアクション作品で勝負を挑むのは難しい。しかし、本作にはその挑戦心が伺える。山崎賢人、土屋太鳳ちゃんからもその熱量を感じるし、身内贔屓かもしれないが、太鳳ちゃんのタンクトップ姿のしなやかな動きには、日本のスカーレットヨハンソンを感じたほどだ。シーズン1はギャラの高い有名大人役者もほとんど出てこず、次世代俳優でキャスティングを固めてるところにも好感を持った。あとは、この作品がどれだけの海外の人へ届いたのかが気になる。

第三話にしていきなり超クライマックス!予想を裏切るめまぐるしい展開に、最大の十字架を背負わされたニート主人公が大奮闘!

シーズン2も早く観たい!

以上!長々とすみません!最初から最後まで読んでくれた方、感謝です!

かなりざっくりとダラダラ長文殴り書いてしまったので、映画やドラマ制作の裏側について何か質問などあればコメントください。ボクの知る限りの範囲でお答えできるものは答えます!ではでは。

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