③ 猫に殺される夜

すこしだけ窓を開けて、セージの香りのお香を焚く。外の気まぐれな風の向きによって、部屋に入ってくる匂いが違うような気がする。雑多に置かれている服にセージの香りがつく。この一連の流れを、毎日、毎日続けているからなのか、最近近所の人たちの部屋の明かりが長くついているように思える。(悲惨な思い込み)

お香が終わると、kojikojiを聴きながらたばこを一本。こうして私の一日が終わる。

 でも、自分では分かっている。「これは本当の自分じゃない。これは違う。」もう一人いる私のほうが世間をうまく渡っていくのではないだろうか。なりきりではない。それ以上の、演じる。息が苦しい。

 ゆっくりと目を開き、自身がいつの間にか寝ていたことに気づく。喉のところには、愛らしい触覚のついた白黒の猫が、こう箱座りをしながらこっちに視線を向けている。その猫を持ち上げ、顔に寄せ、語尾に「はあと」がつく声で名前を呼んで抱きしめた。