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№450 人間は合理的な生き物ではない

こんにちは。白石です。

プライシングについて書きましたが、今日はある記事を参考に、値上げについて書いておきます。

・あなたが許せるのはどっち?

あなたが、これからコンサートに行く予定だとしましょう。チケット料金は1万円です。

A:コンサート会場に行く途中で、現金1万円を紛失してしまった。
あなたは会場で1万円払って、コンサートを見ますか?

B:コンサート会場に行く途中で、事前に購入したチケットを紛失してしまった。あなたは会場で、改めて1万円を払ってチケットを買いますか?

2つの選択肢は「1万円相当を失った」という意味で同じです。しかし、この実験では回答に大きな差が出ることが分かったそうです。

2つの選択肢は「1万円相当を失った」という意味で同じです。しかし、この実験では回答に大きな差が出ることがわかりました。

Aのケースで、「はい」と答えたのが88%。対照的に、②のケースでは46%にとどまりました。

差の理由は、ケースBではチケットを紛失したことで、コンサートという「娯楽カテゴリー」の出費が2万円と、2倍に「値上がりした」と感じたからです。

そのため、Aのように娯楽カテゴリー以外で1万円を紛失したケースに対し、再購入をためらう人が多くいました。

以上の調査研究は、行動経済学の第一人者であるエイモス・トヴェルスキーとノーベル経済学賞受賞者ダニエル・カーネマンによるものです。

これらから分かることは、「人間は合理的な生き物ではない」。同じ1万円を失っても条件次第で認識が変わり、行動も変化するということです。

人間の思考は「もともとの価格」や、妥当だと思う「相場価格」が起点となります。この起点を「参照点」と呼ぶそうです。

私、参照点という言葉を初めて聞きました。

参照点が80円の商品が100円に値上がりした場合、損失としてマイナスの価値が生まれ、全く同じ商品だとしても、参照点が120円の商品が100円に値下がりした場合、利得としてプラスの価値が生まれる。

当たり前だと思われるかもしれませんが、何が言いたいかというと、

・金額そのものよりも参照点に対する変化が重要だということです。

加えて、人間には損得における「ゆがみ」が存在すること。

簡単に言えば、同じ20円のプラスマイナスの価値ではなくて、損失の価値(負のインパクト)の方が、利得の価値よりも大きく感じるという「ゆがみ」です。

その記事では、もう一つのケースが紹介されていました。これが興味深い内容となっています。

ある自動車を買うつもりだったとします。しかし、供給不足となって納車待ちが続き、待っている間に支払う金額が200ドルほど増えることになりました。

これに対して2つのアプローチを調査しました。

A:標準価格を200ドル値上げします。と伝えた場合
結果は、不公平である 71% 受け入れられる 29%

B:200ドルの値引きを中止します。と伝えた場合
結果は、不公平である 42%    受け入れられる  58%

こういった調査結果が出たようです。

Aでは、参照点(もともとの価格)から200ドル値上がりしたと、消費者には受け止められたのでしょう。結果、「受け入れられる」の回答比率が、「不公平である」の比率を大きく下回りました。一方、Bでは、参照点である値引き前の標準価格に戻ったことになります。そのため、200ドルのお得感が消失した、と消費者には受け止められたのか、「受け入れられる」比率が「不公平である」比率を上回ったという結果になりました。

価格が参照点からどのように変化したのか、その受け止め方次第で、値上げの許容度の明暗が分かれる調査結果があります。

最後に、なぜ?不公平だと感じる部分についてです。

・それって本当に「フェア」ですか?

ということが大事になってくるようです。

Aのケースでは、販売店が品不足に付け込んで、顧客に横柄な殿様商売をしてきたと感じる、一方で、Bのケースは、以前は値引きせざるを得ない商品が、品不足を機に標準価格に戻ったと捉えることもできます。

人間は、相手と自分がフェア(公平)に取引しているかどうかを、損得以上に重視するようです。

以上、Newspikes記事参考

これだけをとってみても、プラシングの重要性は非常に大きいということです。

・プライシングの戦略

・プライシングの判断基準

・プライシングの変更方法

こういったことは、即断即決ではなくて、経営の大きなファクターになるので、慎重に議論することが必要です。

また、行動経済学、心理学等の専門家の意見も取り入れるとよいでしょう。




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