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受付嬢京子の日常

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「受付嬢 京子の日常」 1日に通る利用客は3万人。とある駅ビルに勤める原田京子は、この仕事について2年目の受付嬢。色の白さと大きな目が他の受付嬢と並んでいても目立つ、自分の売り…
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受付嬢京子の日常⑰〜冷える指先

受付嬢京子の日常⑰〜冷える指先

「お気をつけて」

道案内をして送り出す原田京子の笑顔に、目の前にいた男は反応することなく無表情で去っていく。3月5日。まだ朝だと言うのに、人が多い。

人が多くなれば、道案内も多くなる。京子は、ふうっと息を吐いた。顔を上げると、同じく早番で出勤している片岡聖奈がにっこりと微笑んで道案内していた。

入ってきてから、お客様に笑顔で接さない。髪色が明るすぎる。足を引きずって歩いていて、いかにもやる気

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受付嬢京子の日常⑫ついていくのか、引っ張られているのか

受付嬢京子の日常⑫ついていくのか、引っ張られているのか

洋楽が流れている。ノリのいい曲に明るい気持ちになる。電車の中で原田京子は周りを見渡す。おしゃべりに興じている女子たち。大学生だろうか。確か路線の先に大学がある、と京子は思い出していた。京子の降りる駅にも、いくつか大学のサテライト教室があったはずだ。どこの大学の何学部か、までは覚えていないが、たまに時間が被ると、いかにも大学生、と言う団体が、働いている施設の改札を通る。

原田京子は駅直結施設の受付

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受付嬢京子の日常⑪逆算から見える世界

受付嬢京子の日常⑪逆算から見える世界

「洋さん、おはようございます」

警備室の前で原田京子は、同じ施設で働く吉田洋子を見つけて、声をかけた。

「おはようございます」

今日も肌が綺麗だなぁと、京子は思う。自分の方が5歳年下なのに、なんだろう、この差は。昨日は吉田も京子も遅番だった。施設が閉まるのが22時。片付けなどをして、退勤は22時半ごろ。遅番の後の早番は、睡眠時間を削るしかない。早番の次の日が遅番なら良いと思うのに、月に数回、

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