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松尾友雪〈Yusetsu Matsuo〉
2023年10月10日 14:22
雨が降る度に寒くなり雨が上がる度に秋は更けてゆく。都会は外国人が増えた。東京というロマンコーヒーの美味しい季節だ。最近は文章が上手く書けない思考の濁り、感性の劣化切れ味の悪くなる刃物のようだ。何かを捉えようとすると固くなり、何かを流そうとすると甘くなる知覚のシャッタースピード致命的な物忘れ文章という不完全な器を満たして行く言い訳だ君は永遠に沈黙する。緩慢な動きに合わせ
2023年9月24日 16:47
会話は点々として患者達は寝室で時間を潰す。果てしない時間と空気が二重扉の中で渦巻いて続き夏は薬で老いさらばいた。君が語る美しさ健康的で恒常的な輝きは狂人にはまぶしくも儚い満ちるが如く散りゆく思考だ。秋の息吹でテーブルは沈黙する。タバコが吸えない女性が突っ伏し空腹を訴える。理由もなく叫ぶ女性が看護師に怒られた。暗く、不健康な精神病院で、一体何に感動すれば良いのだろう?
2021年12月5日 22:21
いびつになりたい君達は鋭利に尖って人を刺す目立ちたいよと、羽根をはばたきところ構わず色落とす。移動する。右と左と奥行きに若い体を貼り付けて若いからだとこの世を憎み踊り狂って人待たす。《僕達の痛みには意味なんてない》君はふと、画面の枠組みつまずく何かが消費されて行く音が聞こえてすり減る靴に諦める。明るい夜に凍えながら今日も寂しさに訳を見出せない君達は常に、いびつな秘
2021年10月22日 23:42
僕の魂の欠片に火が灯されジリジリと音を立てながら燃やされている。生きる事は消耗なのか?消耗は快楽なのか?そう問う時も、問わない時も時間は静止しない。丸で、なす術のない敗北の様に、今この瞬間は分解されて行く直前で、流れ去ってしまった破片について、恐らく、何一つ思い出さないだろう。或いは、思い出すものとして今この瞬間があり、消耗された血液と唾液と魂の欠片達とが、想像と共に不死身
2020年12月13日 18:05
「何を遊んでいるのか」、と問い詰められる沈黙の中で だらりと思考停止して、花火が飛び交うのを眺めている白昼、 繰り返しタバコを蒸して咳き込んで思う、 詩を書く方が大変だ。 この世に対する不誠実さがなければ、惨状を真に受けるしかないではないか。 Wordが赤い波線を引く、「御前の日本語おかしいよ」 きっと、私はタバコをやめるべきなのだ。 或いは、詩を書く事をやめるべきなのだ。
2020年11月28日 12:34
月は僕らを隠している震えるリンゴの発芽から、狂えるヒントの悪魔から、めくるめく謎々の嵐から守っている。ママが死んだらどうしよう?不安が夜を眠れなくさせるから、不断な蝶がはばたき続けるから、月は僕らを隠している。目覚める前に何もかも終わっていたら、僕に生きる価値などあるのだろうか?月よ、問題を奪い去らないで、僕らを恐怖に突き落としてくれ。
2020年11月27日 20:12
微塵の様な薄情が訝しげに悪党を歌う。百頭の豚、臆病な虎、水槽の中の膵臓、下水道を馬が駆け抜けて行く。僕はこんなにも悪党だ。卑怯な花を冷凍保存。恥ずかしいほど脆弱で、裏返して裏返したコインは安くなる。見捨てておくれ、見捨てないでくれ今、手首を切り落とす花握る。〈稚拙な言葉で縛っておくれ〉月は三日月僕を裂く。細く、直ぐにでも崩れ落ち、脆く、限りなく未成熟な寄生虫の様な魂が
2020年2月29日 19:26
ピグマリオンを引き裂くと、甘い灰色の無花果は実る。 怯まずも逸脱を満ち断つ、回廊を弾く海温と、 沸き立つ致死量の血潮で追いかけ、 死を乞う火の鳥の彩りが紐解ける。 幾度も、静まりを埋め尽くす波と、 幾つもの詩を問う広がりを飲み込んで、 騒ぎ出す、洗われたガラテアは泡立ち、 重ね合わされたひとときはミルク色を譲る。 生み出された赤薔薇を逆様の女神と拾い、 モザイクから零れ落ち
2020年3月7日 01:17
さくみるよりあられ まるでちるよりかばへくる かくれちるよりはばかられ かるにみぶおいがいらいをきく さるにみゅぼりばばへ かじゅばるほおいなふぁれぶく あむれひるにもまたたかれ りゃむひるもりはいまいのヴィる 割く蜜よりただれ 悪魔で伸びるより赤へ生む 策へ散るより逆様へ 砂漠に溺れ徘徊へ死す〈限り無い攣を束ねて4-1より〉
2020年3月7日 01:23
蕾はふっくらと膨らんで、 固まりを孕んだ指先がある。 かじかんだガラス細工の様に透明で、 亡命の不安は快感だ。 ふっくらの上の不満の塊は、 内側に引き攣ろうと逆立ち。 恥じらいで刺さる合図と象形が、 往復して転覆する。 真空ダンスを糾弾し、 深紅と暗部は銃弾の薔薇 醜態は肉体を吸盤で縛し 白昼の悪友を濁流で丸くした。 反、乱、快感、 再三の爛漫が固唾を飲み、ノック
2020年11月15日 14:15
水溜りを踏む音がするつま先はフワフワ吸い込まれ何時かの影は滑り行く。雫とも沈むとも唄わないいずれは冷める熱だともこのワクワクを忘れた時のため、そのステップを記し、比類なき幻として描いてみよう気付かないから踊り出す笑みは秘密を打ち明ける風景と化して、幽霊溶かす無数の水滴を愛している
2020年11月3日 16:55
燃える水を飲み干して 焦げる気持ちを吐き出した 大海はザラザラと、沈黙を作り出し 魂が無情にもあぶくとなり果てる。 溶ける秘密を飲み込んで、 いびつな影を投げ、 今、日々の絶頂は終わる。 最早、私は真実に触れられない寂しさに溺れて、 「永遠はとても遠いものだった」、と独り云う。 何色も私ではなく、働き者は軽蔑している。 ああ、私と云う液体を甘くしないでくれ 御前の汗を浴びて
2020年9月1日 07:13
幾つもの幾何学的ステップの先に、いびつなる向日葵の癖、絶句して秘密とかニヒルとか傷をシーツで覆い飛び散る、寝耳に水と二十日鼠達、秋は甘いシロップとなり降り注ぐ。苛立ちと甘いもの、向日葵と洗い物。日溜りと淡い炎、久しぶり甘い雫よ。
2020年6月18日 20:17
男は決めて進みたがり、女は決めずに止っている、これ等浮遊する百合の葉の如き平行線、君達は何を愛でるのか?女は演じ脱衣して、男は演じ着衣する、裸の上ですれ違い、アバラをぶつけて泡になる、花びらは幾何学。何色をときめくか、曖昧に取り出すか、今、縛り付けられて絞り出された烈火の滴が、舌先で奇妙な笑顔に沈む。この怒りにも憤りにも似た諸々を互いの額にべったりと塗りたくり、今にも弾けそうな感傷は、悪戯に時を混