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「詩 その他」から分離して、詩のテクスト情報を掲載します。
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#自由詩

秋の詩

秋の詩

雨が降る度に寒くなり
雨が上がる度に秋は更けてゆく。
都会は外国人が増えた。
東京というロマン
コーヒーの美味しい季節だ。
最近は文章が上手く書けない
思考の濁り、感性の劣化
切れ味の悪くなる刃物のようだ。
何かを捉えようとすると固くなり、
何かを流そうとすると甘くなる
知覚のシャッタースピード
致命的な物忘れ
文章という不完全な器を満たして行く言い訳だ
君は永遠に沈黙する。

緩慢な動きに合わせ

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精神病院の練習詩

精神病院の練習詩

会話は点々として
患者達は寝室で時間を潰す。
果てしない時間と空気が
二重扉の中で渦巻いて続き
夏は薬で老いさらばいた。

君が語る美しさ
健康的で恒常的な輝きは
狂人にはまぶしくも儚い
満ちるが如く散りゆく思考だ。
秋の息吹でテーブルは沈黙する。

タバコが吸えない女性が突っ伏し空腹を訴える。
理由もなく叫ぶ女性が看護師に怒られた。
暗く、不健康な精神病院で、一体何に感動すれば良いのだろう?

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ユリノキ

ユリノキ

いびつになりたい君達は
鋭利に尖って人を刺す
目立ちたいよと、羽根をはばたき
ところ構わず色落とす。

移動する。右と左と奥行きに
若い体を貼り付けて
若いからだとこの世を憎み
踊り狂って人待たす。

《僕達の痛みには意味なんてない》
君はふと、画面の枠組みつまずく
何かが消費されて行く音が聞こえて
すり減る靴に諦める。

明るい夜に凍えながら
今日も寂しさに訳を見出せない君達は
常に、いびつな秘

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瞬間と消費

瞬間と消費

僕の魂の欠片に火が灯され
ジリジリと音を立てながら燃やされている。
生きる事は消耗なのか?消耗は快楽なのか?
そう問う時も、問わない時も時間は静止しない。

丸で、なす術のない敗北の様に、
今この瞬間は分解されて行く直前で、
流れ去ってしまった破片について、恐らく、
何一つ思い出さないだろう。

或いは、思い出すものとして今この瞬間があり、
消耗された血液と唾液と魂の欠片達とが、
想像と共に不死身

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ギザギザ

ギザギザ

 「何を遊んでいるのか」、と問い詰められる沈黙の中で
 だらりと思考停止して、花火が飛び交うのを眺めている白昼、
 繰り返しタバコを蒸して咳き込んで思う、
 詩を書く方が大変だ。

 この世に対する不誠実さがなければ、惨状を真に受けるしかないではないか。
 Wordが赤い波線を引く、「御前の日本語おかしいよ」
 きっと、私はタバコをやめるべきなのだ。
 或いは、詩を書く事をやめるべきなのだ。

 

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月は僕らを隠している

月は僕らを隠している

月は僕らを隠している
震えるリンゴの発芽から、
狂えるヒントの悪魔から、
めくるめく謎々の嵐から守っている。

ママが死んだらどうしよう?
不安が夜を眠れなくさせるから、
不断な蝶がはばたき続けるから、
月は僕らを隠している。

目覚める前に何もかも終わっていたら、
僕に生きる価値などあるのだろうか?
月よ、問題を奪い去らないで、
僕らを恐怖に突き落としてくれ。

悪党の叙情詩

悪党の叙情詩

微塵の様な薄情が
訝しげに悪党を歌う。
百頭の豚、臆病な虎、水槽の中の膵臓、
下水道を馬が駆け抜けて行く。

僕はこんなにも悪党だ。
卑怯な花を冷凍保存。恥ずかしいほど脆弱で、
裏返して裏返したコインは安くなる。
見捨てておくれ、見捨てないでくれ
今、手首を切り落とす花握る。

〈稚拙な言葉で縛っておくれ〉

月は三日月僕を裂く。
細く、直ぐにでも崩れ落ち、脆く、限りなく未成熟な
寄生虫の様な魂が

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ピグマリオン

ピグマリオン

 ピグマリオンを引き裂くと、甘い灰色の無花果は実る。
 怯まずも逸脱を満ち断つ、回廊を弾く海温と、
 沸き立つ致死量の血潮で追いかけ、
 死を乞う火の鳥の彩りが紐解ける。

 幾度も、静まりを埋め尽くす波と、
 幾つもの詩を問う広がりを飲み込んで、
 騒ぎ出す、洗われたガラテアは泡立ち、
 重ね合わされたひとときはミルク色を譲る。

 生み出された赤薔薇を逆様の女神と拾い、
 モザイクから零れ落ち

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さくみるよりあられ

さくみるよりあられ

 さくみるよりあられ
 まるでちるよりかばへくる
 かくれちるよりはばかられ
 かるにみぶおいがいらいをきく

 さるにみゅぼりばばへ
 かじゅばるほおいなふぁれぶく
 あむれひるにもまたたかれ
 りゃむひるもりはいまいのヴィる

 割く蜜よりただれ
 悪魔で伸びるより赤へ生む
 策へ散るより逆様へ
 砂漠に溺れ徘徊へ死す

〈限り無い攣を束ねて4-1より〉

真空ダンス

真空ダンス

 蕾はふっくらと膨らんで、
 固まりを孕んだ指先がある。
 かじかんだガラス細工の様に透明で、
 亡命の不安は快感だ。

 ふっくらの上の不満の塊は、
 内側に引き攣ろうと逆立ち。
 恥じらいで刺さる合図と象形が、
 往復して転覆する。

 真空ダンスを糾弾し、
 深紅と暗部は銃弾の薔薇
 醜態は肉体を吸盤で縛し
 白昼の悪友を濁流で丸くした。

 反、乱、快感、
 再三の爛漫が固唾を飲み、ノック

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水溜りを踏む

水溜りを踏む

水溜りを踏む音がする
つま先はフワフワ吸い込まれ
何時かの影は滑り行く。
雫とも沈むとも唄わない

いずれは冷める熱だとも
このワクワクを忘れた時のため、
そのステップを記し、
比類なき幻として描いてみよう

気付かないから踊り出す
笑みは秘密を打ち明ける
風景と化して、幽霊溶かす
無数の水滴を愛している

燃える水

燃える水

 燃える水を飲み干して
 焦げる気持ちを吐き出した
 大海はザラザラと、沈黙を作り出し
 魂が無情にもあぶくとなり果てる。
 溶ける秘密を飲み込んで、
 いびつな影を投げ、
 今、日々の絶頂は終わる。
 最早、私は真実に触れられない寂しさに溺れて、
 「永遠はとても遠いものだった」、と独り云う。
 何色も私ではなく、働き者は軽蔑している。
 ああ、私と云う液体を甘くしないでくれ
 御前の汗を浴びて

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甘いもの

甘いもの

幾つもの幾何学的ステップの先に、

いびつなる向日葵の癖、絶句して

秘密とかニヒルとか傷をシーツで覆い

飛び散る、寝耳に水と二十日鼠達、

秋は甘いシロップとなり降り注ぐ。

苛立ちと甘いもの、向日葵と洗い物。日溜りと淡い炎、

久しぶり甘い雫よ。

白百合の花粉

白百合の花粉

男は決めて進みたがり、女は決めずに止っている、これ等浮遊する百合の葉の如き平行線、君達は何を愛でるのか?女は演じ脱衣して、男は演じ着衣する、裸の上ですれ違い、アバラをぶつけて泡になる、花びらは幾何学。何色をときめくか、曖昧に取り出すか、今、縛り付けられて絞り出された烈火の滴が、舌先で奇妙な笑顔に沈む。この怒りにも憤りにも似た諸々を互いの額にべったりと塗りたくり、今にも弾けそうな感傷は、悪戯に時を混

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