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ま、こんな日もあるって

30
良いことも悪かったことも、嬉しいことも悲しいことも、皆時が経てば過ぎてゆく。だから一瞬一瞬がかけがえのないものなのだと思う。日々のエッセイ、たわいもないことの記録。
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#秋

黄金色の栗あんを、空に捧ぐ

秋のお彼岸。

お団子屋さんの袋を片手に、京都にいる祖父に会いに行った。

中には前日に買った、焼き栗餅が入っている。

前日。

季節限定のものはありますか。
おすすめはどれですか。
日持ちはいつまでですか。

珍しく明るいうちに帰れた仕事帰り、駅中の美味しいお団子屋さんで、店員のお姉さんを質問攻めにして選んだのが、焼き栗餅と月見団子だった。

若い店員のお姉さんは、焼き栗餅と月見団子を、ていね

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大人になるということ

大人になるということ

先月誕生日を迎え、またひとつ歳を重ねた。

だからといって別に何も変わらず、今年もケーキを黙々と食べたぐらいである。

それにしても毎年思うのだが、いつまで経っても、何をやっても、大人というものになった気がしないのはなぜだろうか。

30半ばを過ぎても、いつまでも子どものような気持ちがぬけない。多分年齢と、この子どものような気持ちの差が、焦りを生んでいるのだと思う。

わたしは大人になりたい。

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秋なのに、春みたいな旅立ちのマドレーヌ

秋なのに、春みたいな旅立ちのマドレーヌ

「お世話になりました」
と、若い男の子が菓子折りをもって挨拶に来た。彼は10月1日から別の支店に行くことが決まっている。彼とは1ヶ月程度だけど一緒に働いたことがあって、今は部署も違うし仕事上の関わりもないけれど、フロアが一緒のところで働いている。
「ありがとう」
とお菓子を受け取りながら、少し言葉を交わした。

異動になる部署は人数が足りておらず、体力的にもハードなところだという。
「体壊さないよ

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柿が熟すまで

久しぶりの秋空の日、祖母の家で柿を剥いだ。

仏壇にお供えしていた2つの柿は、まだ熟しておらず、かたい。祖母に「ひとつもってかえりなさい」と言われたけど、皮を剥いで切るのがとても面倒だったので、「ええ、いいよーおばあちゃん食べなよ」と言ったら、「ほなここで剥いでいったらええやん」とあっさり言われ、そうすることにした。

柿は前に、一度だけ剥いだことがある。なぜ柿を食べようと思ったのかは詳しく覚えて

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