32時間歩けますか?:「長篠の戦い」を地形・地質的観点で見るpart1【合戦場の地形&地質vol.6-1】
日本の歴史上の「戦い」を地形・地質的観点で見るシリーズ「合戦上の地形&地質」。第6弾は「長篠の戦」です!
「長篠の戦い」が起こるまで
「長篠の戦い」は三方ヶ原の戦いから約2年半後に発生した「武田勝頼vs織田信長・徳川家康連合軍」の戦いです。
三方ヶ原の戦いで徳川に大打撃を与えた武田信玄は、その後、堀江城攻略に取り掛かります。
しかし悪天候により途中で断念し、遠江国内で年を越し、1573年1月に東三河に侵攻。2月に野田城を攻略します。
しかしその後、信玄の病気が悪化して撤退。
同年4月に亡くなります。
武田家の家督は四男の勝頼が継ぎ、再び織田・徳川連合軍へ侵攻を開始します。
東美濃(ひがしみの:現在の岐阜県南東部)の岩村・阿木・飯羽間・明知・串原の5城(上図左上)、遠江南東部の高天神城(たかてんじんじょう)が落城。
一方、徳川勢は信玄撤退からわずか半年以内に長篠城、野田城を奪還しています。
上の図は省略している城もありますが、徳川・武田の勢力範囲が概ね分かると思います。
なお東美濃は織田信長の領地です。
信玄の死によって武田勢の侵攻が中断している間、織田信長は浅井・朝倉を倒し、足利将軍を京から追放。
また実質的に京を支配していた三好勢も追い払います。
これにより信長包囲網は瓦解。
ついに広範囲な侵攻を始めた武田勝頼に対し、信長は大軍を率いて徳川の援軍として岡崎城に参陣します。
その数はなんと3万!
一方の武田軍は約1万5000人。
徳川に奪還された長篠城を再び手にするために、その周りを包囲していました。
援軍を呼べ!
武田軍1.5万に囲まれた長篠城。
守る城兵はわずか500人ほどです。
良く守ったものの、陥落は時間の問題でした。
そこで家康に窮地を知らせるべく、鳥居強右衛門(とりいすねえもん)という1人の武将が岡崎城へ向かいます。
様々な資料によれば長篠城と岡崎城は約65kmと言われています。
直線距離では30kmちょっとですが、さすがに山間地をまっすぐは行けないので、当然、当時の街道を通った場合の距離でしょう。
概ね黒矢印のようなルート(約50km)ですが、実際にはもう少し遠回りでカーブやアップダウンもありますから、65kmは頷けます。
この距離を、夜に出発して翌日午後に岡崎城に到着。
すぐに引き返し、翌朝に長篠城のすぐ手前まで来たところで、武田軍に捕まります。
成人の平均歩行速度は4km/hですので、徒歩だと16時間15分。
ウィキペディアによれば「5月14日の夜に出発」とありますが、旧暦だとだいたい6月中旬で、ちょうど今くらいの時期(記事投稿は2024年6月15日)。
19時過ぎてもまぁまぁ明るいので、闇夜に乗じるなら21時出発でしょうか?
とすると、到着は15日の13時頃。
すぐ出発したとして、長篠城付近に戻るのは16日朝5時です。
綺麗にぴったり合いますね。
「なんだ。ずっと歩いてただけなのか」などと思ってはいけません(;^_^A
2日眠らず、まったく休まずに32時間歩き続けるなんて無理ですよね。
24時間テレビのマラソンを思い出しました(笑)
賛否両論ありますが、まぁ大変は大変でしょうね。
泣く程かどうかは別として(;^_^A
私は当然、無理ですけど(笑)
強右衛門を体感しよう
では実際に歩いてみよう!
と言うことで、地形図を見てみましょう。
道路や線路も見えた方が距離感が掴めるだろうと国土地理院地形図を出してみましたが、縮尺的に分かり辛いですね(;^_^A
しかし目印として良いものを見つけました。
ちょうど、当時の街道に近い場所を通る鉄道があります。
ズバリJR飯田線と名鉄豊川線・名古屋本線!
赤がJR飯田線、青が名鉄豊川線、名古屋本線です。
この路線をたどり、何駅分か見てみましょう♬
右上の青丸が長篠城です。
最寄り駅は鳥居駅(長篠城の左)です。
1鳥居→2大海→3三河東郷→4茶臼山→5東新町→6新城
6新城→7野田城→8東上→9江島→10長山
10長山→11三河一宮→12豊川(名鉄豊川線に乗り換え)
→12豊川稲荷→13稲荷口→14諏訪町→15八幡
15八幡→16国府(名鉄名古屋本線に乗り換え)
→17御油→18名電赤坂
18名電赤坂→18名電長沢→19本宿→20名電山中
20名電山中→21藤川→22美合→23男川
23男川→24東岡崎→25岡崎公園前
なんと25駅分!
なお最初の駅である「鳥居駅」は鳥居強右衛門が亡くなった場所に近いと言うことにちなんで名付けられたのだそうです。
詳しくは下のリンクでどうぞ。
仲間のために不眠不休で32時間走り(歩き)続け、命を落とした強右衛門に思いを馳せながら、この沿線を旅してみるのも良いかもしれませんね。
今回は以上です。
お読みいただき、ありがとうございました。
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