"噴泉塔地すべり"のウラに潜むもの:危険な地形を見てみようpart3【災害から身を守る vol.10】
天然記念物である湯沢噴泉塔の対岸にある「噴泉塔地すべり」。
地形としては地すべりなのは間違いなさそうですが、地質は硬くてすべりにくそうなデイサイトー流紋岩質の凝灰岩類でした。
はてさて、彼(?)がすべっている原因は何なのでしょう??
(※過去記事はコチラ~①、②、③)
地すべりがすべるワケ
その1つとして、層理面が考えられます。
層理面とは地層の境界面。コレです。
この、地層と地層の変わり目を層理面と言います。
地すべりって、地盤の中の何かの切れ目に沿ってズレ動いていくのですよね。
例えば、電話帳2冊を積み重ねて、斜めにします。
当然、上の電話帳がすべり落ちますよね。
どちらかの電話帳の真ん中あたりが切れてすべることはあり得ないですよね。
地盤・・=地層も、それと同じです。
積み重ねた本で言うところの電話帳と電話帳の境界が、層理面です。
だから層理面がちょうどよい角度だと、地すべりは動きやすくなります。
たとえば・・・
斜面と層理面の向きの関係がこうであれば「そりゃ滑りにくいよな」って思いますよね?
逆に、これも滑りにくいですよね。つんのめっちゃいます(笑)
これだったら滑りそう!って思いませんか?
特に上側の茶色の地層から上は滑りそうですよね。
そうなんですよ!
大きい地すべりが動くのは、だいたいはこのパターンです。
ですので、地質学者が調べれば、「ここは地すべりになるかな?」と予想できます。
頑張ってヒントを掴め!
そもそもあの地質図に層理面の方向の情報がない!!
以前、鳥取県の「だだっ広い斜面」のお話で紹介した記号が描いてあると良かったのですが・・・。
しょうがないですね。
斜面災害の専門家の名にかけて、あの手この手で探ってみせます!
解説書を読んでいると大きなヒントがありました。
それは「カルデラ」です!
ここの地質はカルデラ噴火でつくられたもので、カルデラ湖に溜まった泥や火山灰の地層が挟まっている可能性が高いと考えられます。
泥岩や凝灰岩は粒子が細かいのでツルツルになりやすく、すべりやすい。
あとは層理面の方向です。
20万分の1地質図ですと地形が読みにくいので、スーパー地形の方で地質図(産業総合研究所:シームレス地質図V2)を表示して探ってみます。
層理面の方向を知るには、記号の他に「地質境界線を解析する」という手法があります。難しくなるので詳しい説明はここでは省きますね。
1つ大切なポイントだけ。
それは「同時代の地層同士の境界線」に限るということ。
違う時代だと浸食を受けてデコボコと不規則な境界面になってしまうからです。
噴泉塔地すべり周辺では違う時代の地層ばかりですが、かろうじて、南西の黄色い地質が同時代でした。
この境界面も綺麗な平板状ではなさそうなので幅がありますが、地層の傾斜方向は北北東~西北西で傾斜角度は10~20度と考えられます。
平面図に図示してみると、こんな感じです。
この範囲内の方向に傾いているのであれば、地すべりとして動きそうです。
だんだんとナゾが解けてきました!
次回では、さらに色々な情報を分析し、噴泉塔地すべりの正体に迫ります!
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。
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