噴泉塔地すべりを徹底解析!!:危険な地形を見てみようpart4【災害から身を守る vol.10】
これまでに天然記念物である噴泉塔を脅かす噴泉塔地すべりについてお話してきました。
今回はさらに色々な情報を駆使し、地すべりの姿を見ていきます。
沢の"カーブ"から読み取ってみる
地形だけを手掛かりに、地すべりのすべり面を考えてみます。
色々な要素を手掛かりにしたのですが、まずは「沢のカーブ」について。
以前もお話ししましたが、沢は地すべりに曲げられたと考えられます。
そこで、もともとは真っすぐだったと仮定して黄色い線を引いてみます。
すると約300mも動いたと考えられます(※青矢印の長さ)。
この地すべりがいつから動き始めたかは分かりませんが、年間で1m動いたとしても300年!年間1cmなら3万年!!
はるか昔から動いている地すべりもあるとお話ししましたが、実感していただけたでしょうか?
沢が流れる角度を見てみる
今度は沢の流れの角度(勾配)を見てみます。
こちらは沢の断面図です。
矢印の範囲がだいたい地すべりの範囲です。
そして上流や下流に比べて盛り上がってますよね。おそらく、これも地すべりの影響でしょう。
本来の沢の傾きが赤線だとすると、平均で20mほど高いです。
以上から、地すべりが動き始めの頃は、末端部分(斜面の脚部)は今よりも300m手前にあり、しかも20mくらい低かった。
ここをすべり面は通っていたハズです。
その他の地形から読み解く
噴泉塔地すべり周辺では、もう1つ気になる地形があります。
図中で青く塗った範囲、非常に似た方向を向いている平滑な斜面ですよね。
そして地すべり地内にも少しモコモコしてるとは言え似た斜面が見えます。
また画像左側の尾根の斜面や、やや遠い奥の方の斜面なども同様です。
実はこういうことは、地形と地質の関係を調べると良くあることです。
地質では様々な「面」がありますが、その1つである節理面はいたるところで見られる面です。
節理面は断層のような明確なズレが見られない割れ目のことです。
でき方は大きく分けると2つ。
①マグマが冷える時の収縮でできる冷却節理
②プレートに押される力など広い範囲にかかる力(応力)で割れてできる
このうち②は、ある一定の範囲の地域内で、同じような方向の節理面がたくさんあります。これが規則的な地形の原因になることも多いです。
上図の青で図示した面も、おそらく節理面だと考えられます。
様々な情報をもとに"地すべり断面"を考えてみる!
地すべりの断面を、このように切ってみます。
こんな断面図になります。
これを見ると、あることに気づきます。
赤線を引いた斜面(一番左をのぞく)はだいたい同じ傾斜で、上図の青い面と同じ節理面と考えられます。
地すべり内と上で同じような傾斜なので「平行移動した」と考えられます。やはり層理面のような平らな面でまっすぐ動いたのでしょう。
また地すべりが動く前の沢の位置を再現し、その時の地すべりを仮定してみました。もう少しアップにします。
黒点線は当時の地形(まるっきりの想像)、赤点線は当時の地すべりのすべり面(ある程度の根拠から推定)です。
このように、地すべりの動き始めの状況や、これまで見てきた地形・地質の状況から想定したのが、この断面図になります。
このようなカタチを想定しました。上のキレツがある斜面はまだ地すべりとしてはハッキリしていないので点線です。
一番深いところで約150mにもなります。厚さで見ても大きな地すべりだと分かりました。
地すべりを専門的に調査する場合は、このような「断面」を検討し、これをもとに地すべりの安定度を計算したり、対策工事の設計をしたりします。
ですので断面図の検討は非常に重要な作業工程になります。
もちろん、今回描いた断面は正解とは限りません。
でも現地調査の事前検討でここまでできれば上出来でしょう(笑)
現役の技術者だった時にスーパー地形があれば・・とつくづく思います。
今回は専門性が強めで少し難しく感じた方もいらっしゃるかも知れません。
でも専門知識を駆使することで、スーパー地形や地質図などから、家にいながらここまでの検討ができるのだな!と感じていただければ幸いです。
では、今回はこのへんで。
お読みいただき、ありがとうございました。
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