マガジンのカバー画像

心惹かれる本。素敵な読書の記事。

71
運営しているクリエイター

2021年9月の記事一覧

わたしの本棚122夜~「レースの村」

わたしの本棚122夜~「レースの村」

 紅茶とマードレーヌを用意して読みたくなるような、お菓子缶のような素敵な装丁に、小説の不思議な内容を彷彿させ、うっとりしました。著者の片島麦子さんは、第28回大阪女性文芸賞佳作受賞者で、受賞作の「透明になった犬の話」を含む4つの短編小説からなっています。どれも不思議な設定なのですが、読後感が良くて、はかなさと切なさと哀愁がありました。帯は、翻訳家で早稲田大学教授の松永美穂氏で「幽霊の世話する人々、

もっとみる

【読書】出会いなおし 森絵都

6つの短編集

森絵都さんに惹かれて何冊目かな?

人との出会いは、歳を重ねるにつれて、より大切にしたいと感じるようになりました。

6つの物語の中で、とても印象に残ったお話は、結婚10年で、若くして妻を亡くした父親と小学生の息子のお話でした。

瞬間的な時間の中で、スローモーションに感じる心情を描写してあり、物語ならではだな、と感じたのと、その描写がなんだか共感できて、絵都さんの文章表現に没頭し

もっとみる
清貧の思想(著者:中野孝次)

清貧の思想(著者:中野孝次)

著作者名:中野孝次 発行所:株式会社文藝春秋 1996年11月10日発行

清貧の思想とは何か。中野孝次は、吉田兼好の「徒然草」を例にとり、こう言っている。「世俗的な名誉とか地位とか財産とかに心を弄して、静かに生を楽しむ余裕もなく、一生をあくせく暮すなどは実に愚かだとする考え方」

中野孝次は、この「清貧の思想」を日本の古典から具体的な事例をもって示す。日本の古典とは、西行、兼好、光悦、芭蕉、池大

もっとみる
『最後の一文』向田邦子さん、そしてハミー

『最後の一文』向田邦子さん、そしてハミー

古本屋さんで見つけた『最後の一文』(共立女子大学教授・半沢幹一著)。
私でも知っている有名な小説の[最後の一文]に焦点を当てた本です。

著者・半沢先生「はじめに」のお言葉がコチラ。

最後の一文は「それら以外の位置にある文よりも、はるかに重い意味を担っています。」
「本書の一番の目的は、小説の読み方の一つを示すというところにあります。」
「近代の名作と称される作品は、ややもすれば定説として読み方

もっとみる