寒い冬の日のたとえば、の話

ふわっと生きるのもいいなと思う。

朝起きて、コーヒー豆を選んで、時間をかけてコーヒーを淹れる。

隣のビルが迫ってくる狭いバルコニーで、ぶるるって震えながら、白い湯気が立つあついコーヒーをゆっくり飲む。

それから、まったり、四角いビルの谷間の小さな青空を流れる白い雲を眺める。

ボサノヴァのリズムにのって、ゆっくりと時間が流れる。

遠い異国で活躍する外国人のチェリストの彼氏のことなんかを考えながら、大好きなエッセイを読んだり、おばあちゃんの着物の端切れで、ちょっとした小物入れを作ったりする。

気がつくとお昼過ぎ。

丁寧にお米を研いで、大好きなパエリアを作る。
一人用の小さな鉄のフライパンにお米を敷き詰め、オイスターを並べる。
ふたをして見つめることしばし。

おいしくできたパエリアに、スペインの辛口の白ワインで乾杯。
ほろ酔い気分で、日差しが当たってきた狭いバルコニーへ。

あぁ、今日という日がこんなに素晴らしいなんて。

ソファでうたた寝をして、目を覚ますといつもより早く薄闇がやってくる。

オレンジ色の明かりをつけて、ソファにもたれて、もうずいぶん前から読みかけている小説のページをめくる。

寒い夜には、シナモンたっぷりのホットワイン。
体の芯まで、心の奥底まで温まる。

毎日がこんな日だったらいいなと思う。
(全てフィクションです)




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