私の選ぶ10冊 ミステリ編
前回の記事にも書いた通り、活字中毒だった私が子供の頃にはまっていたのが、ミステリです。
ご多分に漏れず、江戸川乱歩の少年探偵団シリーズやコナン・ドイルのシャーロック・ホームズシリーズ、モーリス・ルブランのアルセーヌ・ルパンシリーズあたりから入り、エラリー・クイーンや赤川次郎などからハヤカワ・ミステリやカドカワ・ノベルズに移り、その辺りもほぼ制覇して法廷ものや警察もの、ハードボイルド、など拾い読みましたがちょっと違うなーと、段々とSFに移行していきました。
原点となったのはやはり、父親の本棚にあったアガサ・クリスティだったと思います。
最初に手を出したのは『メソポタミアの殺人』『開いたトランプ』『葬儀を終えて』このあたりだったのを覚えています。
しかし何といっても圧巻だったのは『そして誰もいなくなった』。
多くの人がミステリの名作に挙げていますが、さもありなんという気がします。
子供の頃に読んで印象に残ったミステリは他に、エラリー・クイーン『エジプト十字架の謎』、フレドリック・ブラウン『交換殺人』、高木彬光『人形はなぜ殺される』、夏樹静子『Wの悲劇』、赤川次郎『夜』などでしょうか。
もうちょっと後、確か高校生くらいに読んだ、生島治郎とか式貴士も衝撃的でした。ベスト入りはしませんが・・・。
『如菩薩団」という作品が入っていた短編集もかなりトラウマもので、生島治郎かと思ってたけど、調べたら筒井康隆でした。
ということで、ベスト10の発表です!
小栗虫太郎『黒死館殺人事件』
夢野久作『ドグラ・マグラ』
中井英夫『虚無への供物』
江戸川乱歩『孤島の鬼』
京極夏彦『魍魎の匣』
井上雅彦『竹馬男の犯罪』
高橋克彦『ドールズ―闇から来た少女』
アガサ・クリスティ『そして誰もいなくなった』
コーネル・ウールリッチ『黒衣の花嫁』
ウンベルト・エーコ『薔薇の名前』
上位3冊が日本三大奇書、ということで、私が変格好きだというのがお分かりかと思います(笑)。
あ、上位って書きましたが、『黒死館殺人事件』『ドグラ・マグラ』が一、二位で、以下は順不同です。
というか読みたくて読んでない作品多すぎ。
『黒死館殺人事件』は実はずっと読みたかったのですがなかなか取り掛かれず、比較的近年に読みましたが、もう全てが好み過ぎて最高!
衒学趣味の最たるものですね。
小栗虫太郎作品全般に言えますが、神秘的な雰囲気や謎解きにも増して私が愛するのは、犯罪の動機です。
その辺りも彼の作品を取っ付き難いものにしているのだろうな、と思います。
『ドグラ・マグラ』は、表題の文芸同人誌で私が呉モヨ子役のモデルを務めた、思い出深い作品。
荒唐無稽な論文だの祭文だの九相図だの怪しげな挿入物がいろいろと詰め込まれています。
全体的に漂う、白昼夢を思わせる雰囲気も大好きです。
乱歩が暗闇の帝都をふらふら彷徨っているのに対して、久作は蒼天の下を滅茶苦茶に走り回ってトチ狂ってる印象があります。(いや本人じゃなく作品が)
『虚無への供物』は、私がやっている演劇ユニットMONT★SUCHTで、ショートバージョンに仕立てて公演したことがあります。
この本は一晩で一気読みした記憶があります。
三大奇書の中では一番読みやすいです。
中井英夫氏の薔薇(とりわけ青い薔薇)にまつわる薀蓄は、『薔薇幻視』というエッセー集で余すところ無く堪能できます。
お陰で私も青い薔薇を追い求める幻想に取り付かれてしまいました。
いつか手に入れたい薔薇は「ブルーへブン」。
竹本健治『匣の中の失楽』も読んで、四大奇書と言われるだけのことはあるな、と感心したんですが、後からあまり思い出せないんですよね。
小栗、夢野、中井三氏は人物描写も見事で、それぞれの登場人物が生き生きしているので、作品の印象が薄れないんですが、竹本氏の人物はその点やや記号的かなあ、という気がします。
乾くるみ『匣の中』に至っては、未だに読み終わってません。いや、凄いんですよ。知識量半端ないし、いろいろ詰め込まれているんですが。
『孤島の鬼』は、長田ノオトさんのコミカライズを原作とし、MONT★SUCHT隋一の舞台公演として上演した記念すべき作品。
江戸川乱歩作品はかなり読んでいるはずですが、やはり子供の頃で覚えていないものも多かったので、舞台化に当たって再読しました。
長編ですし代表作といって良い読み応えだと思います。
乱歩の次点は『パノラマ島奇談』かなあ。
京極夏彦氏の百鬼夜行シリーズ、オカルティズム好きとしては甲乙付けがたいところがありますが、百合的要素が美しい『魍魎の匣』をベストに選びました。
もちろん『押絵と旅する男』へのオマージュらしきピュグマリオニズム要素が魅惑的なことは、言うまでもありません。
『狂骨の骨』『鉄鼠の檻』なんかも好き。だけど『塗仏の宴』読み始めたところで止まってしまった。何でだろう。
友人の井上雅彦氏は、ショート・ショートの名手として名高く、作風も怪奇幻想を得意としていますが、私はこの長編ミステリ『竹馬男の犯罪』にすっかり魅せられてしまったのです。
というのも私の大好きな「サーカス」というモチーフに彩られた作品であり、登場人物も出てくる施設や道具立ても、魅力的なものばかり。
異様な建造物が好きなんですよね。山尾悠子さんの作品に頻出するような。
横溝正史『呪いの塔』も楽しかったなあ。
『ドールズ―闇から来た少女』は人形作家として、またドールハウス愛好者としてとても興味深い作品でした。
ただ、細かい描写は覚えているのですが、ミステリとしての筋立てはすっかり忘れてしまいました。
シリーズで出ているみたいなので、他の作品も読んでみたいです。
アガサ・クリスティ『そして誰もいなくなった』は前述の通り。
絶海の孤島という、シチュエーションもそそられますよね。
次点は『オリエント急行殺人事件』かな。
ウイリアム・アイリッシュ=コーネル・ウールリッチには、一時期夢中になっていました。
本格ミステリではないけど、なんとも言えないミステリアスな雰囲気が堪りませんでした。
内容はそんなに覚えていないのですが、一つ選ぶとしたらタイトルが印象的だった『黒衣の花嫁』かな?
もちろん『幻の女』も読んだと思います。
『薔薇の名前』は哲学者ウンベルト・エーコの書く中世を舞台とした時代ミステリという、非常に興味を惹かれる要素が満載の一冊。
父の本棚にあったものを読みました。
ここにも出てくる、バベルの図書館のような迷宮的な建造物!
ラストがウイットに富んでいて素敵です。
ダン・ブラウンの『ダ・ヴィンチ・コード』にも言えますが、こういう極めて宗教的な本がベストセラーになると、人類の知的好奇心はまだそこまで衰えていないのかと安堵します。
さて、次回の10選は「SF・ファンタジー」の予定ですが、多くなりすぎたらSFとファンタジーに分けるかも知れません。
お楽しみに!
画像は旧岩崎邸
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