域外故事

みなもにときどき浮かぶ。 趣味でSF書き。(広平周名義) そのほか日々の記録。ご飯のレ…

域外故事

みなもにときどき浮かぶ。 趣味でSF書き。(広平周名義) そのほか日々の記録。ご飯のレシピ。頭の中身程度にごちゃごちゃ。

記事一覧

きみは宇宙人

 ——保育園の靴棚は宇宙につながる港なの、知ってる?  あまりの退屈さに、永野は喧騒の中、思わず入口の方に視線をやった。先ほどから、中ジョッキは一向に進んでいな…

域外故事
1年前
3

BFC4 1回戦Cグループ感想

中野真 「三箱三千円」 わ、わからん。徹頭徹尾空回りしている「僕」を描いたものとしては面白く読んだ。だが、この作品がどう受け止められようとしたのかはわからない。…

域外故事
1年前
2

BFC4 1回戦Bグループ感想

タケゾー 「メアリー・ベル団」 (注意:この感想の中には重度に障がいを持つ方についての記述があります。どうか、心が重くなる方は注意して、もしくは読まないでくださ…

域外故事
1年前
6

BFC4 1回戦Aグループ感想

注意1:ネタバレ、作品の結末に関するところまで感想を書いています。 注意2:読者であるわたしは純然たる読者なので、読者として書いています。全ての創作者の方を尊敬…

域外故事
1年前
6

ブラックホール

 キアラは、朝、バールで今日はmezziのscioperoだと聞いた。誰にでも権利はある。行使するのは当然だ。だが、おかげで街は半身不随だ。カップチーノとコルネットを手早く…

域外故事
1年前
5

薄緑色の、蜻蛉のような

 マルコは、〈長時間の労働によって痛みを訴える〉腰を伸ばした。そして、手の中の葡萄を見た。見事な房だ。薄緑色の蜻蛉のような薄皮に包まれた一粒一粒が、つやつやと輝…

域外故事
1年前
4

序?

pixivをあまりプラットフォームに使いたくないという事情があり、かつわたしが書くものは雑多だろう、という感じがする。わたしは物書きではなく、整理された思考の持ち主…

域外故事
2年前
2
きみは宇宙人

きみは宇宙人

 ——保育園の靴棚は宇宙につながる港なの、知ってる?

 あまりの退屈さに、永野は喧騒の中、思わず入口の方に視線をやった。先ほどから、中ジョッキは一向に進んでいなかった。気泡はすでに消え失せていた。ぬるまったくなった黄色の液体を申し訳程度になんとか飲み下しているだけだった。さっさと帰りたかった。いつもは飲み会は断っている。だが、チームの一人の出産祝いで、正確には子供を産んだのはその配偶者なのだが、

もっとみる

BFC4 1回戦Cグループ感想

中野真 「三箱三千円」
わ、わからん。徹頭徹尾空回りしている「僕」を描いたものとしては面白く読んだ。だが、この作品がどう受け止められようとしたのかはわからない。これは(純文学とかによくある)ダメ男列伝に連なるものとして書かれているのだろうか?「僕」は本当に神崎を好きなのだろうか? あなたは何についてそんなに惹かれたの? 顔? 顔が好きでセックスがしたいの? 「僕」の思いはひたすら一方的で神崎を理解

もっとみる

BFC4 1回戦Bグループ感想

タケゾー 「メアリー・ベル団」
(注意:この感想の中には重度に障がいを持つ方についての記述があります。どうか、心が重くなる方は注意して、もしくは読まないでください)
わたしはこの作品としっかり対峙できているか、というとできていないと思う。感想を書くかどうか、悩んだ。書くなら対峙すべきだ。だがこれはとても恐ろしい作品なのだ、わたしにとっては。
作品の読みはわたしという個人を無くしては成り立たない。(

もっとみる

BFC4 1回戦Aグループ感想

注意1:ネタバレ、作品の結末に関するところまで感想を書いています。
注意2:読者であるわたしは純然たる読者なので、読者として書いています。全ての創作者の方を尊敬しています。素敵な世界を見せてくださってありがとうございます。

古川桃流「ファクトリー・リセット」
 ぞっとした。(注:褒めてます)ごく自然に男性視点の男性の物語として描かれ、「機械」型が全て女性であるという点が怖い。この世界は男性がすで

もっとみる
ブラックホール

ブラックホール

 キアラは、朝、バールで今日はmezziのscioperoだと聞いた。誰にでも権利はある。行使するのは当然だ。だが、おかげで街は半身不随だ。カップチーノとコルネットを手早く胃袋におさめて、大通りに出る。バスが視界に引っかかった。Che culo!  すし詰め状態で、呆然と外を見る乗客の一人と目があった気がして、さっと視線を外した。ポケットに手を突っ込んで、一番近い地下鉄駅に向かう。
 地下鉄はあん

もっとみる
薄緑色の、蜻蛉のような

薄緑色の、蜻蛉のような

 マルコは、〈長時間の労働によって痛みを訴える〉腰を伸ばした。そして、手の中の葡萄を見た。見事な房だ。薄緑色の蜻蛉のような薄皮に包まれた一粒一粒が、つやつやと輝いている。歯を立てたらどんな感じなのだろう。その時、ふと昔聞いた言葉が蘇った。

 ーーあそこからあそこまで、灰色の何もないところは、一面葡萄畑だった。

 白い指が開け放たれた窓に向かい、すいと線を描く。そうすると、小さな島の三つの大通り

もっとみる

序?

pixivをあまりプラットフォームに使いたくないという事情があり、かつわたしが書くものは雑多だろう、という感じがする。わたしは物書きではなく、整理された思考の持ち主でもないので、ここは頭の中身程度にごちゃごちゃとしたものになるだろう。

というわけで、noteを試してみる。
まもなく人生二度目の少し長い旅のようなものに出る。
一度目は、一人だった。一人で気ままだったが。今回は家族総出である。なにが

もっとみる