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ようこそ笑店街へ

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とある町の商店街は、「笑店街」と呼ばれている。一風変わった店ばかりが集まっており、すべて言葉を使って全力で遊んでいる店と人々が楽しく商いをしている。 これは、福野明(ふくのはる)… もっと読む
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記事一覧

ようこそ笑店街へ【エピローグ】

エピローグ――ハルちゃん。久しぶり。どう最近? 仕事始めたってメッセージ見たから、思わず…

ようこそ笑店街へ【36】ある記録

ある記録 それは、笑店街から遠く離れた都心でのこと。  正確な始まりの場所や日時といった…

ようこそ笑店街へ【35】到来

到来 朝晩が急に寒くなってきたのを感じて、壁のカレンダーに目をやった。引っ越した時に、笑…

ようこそ笑店街へ【34】はっぴ

 はっぴ ある日の笑店街で辰巳がいつものように人力車を走らせていると、白髪の男性が道の真…

ようこそ笑店街へ【33】記憶の糸

記憶の糸   どうして急に、元会社の後輩である福野明に会いたいと思ったのか、平塚桂子には…

ようこそ笑店街へ【32】紅葉狩り

紅葉狩り「もうすっかり秋だな。せっかくだし、次の休みにみんなでどこか行こうか。どこ行きた…

ようこそ笑店街へ【31】オーダーメイド入浴剤

オーダーメイド入浴剤 笑店街の一角に、入浴剤の専門店を見つけた。  自分好みの入浴剤をオーダーメイドできるらしい。オーダーメイドとはいっても、リラックスしたい時用にラベンダーを、とか、そういうものなのだろう。それほど真新しい気はしなかったけれど、試しに行ってみた。 「いらっしゃいませ」  入口のガラス扉を開けたら、ふわりと香りが立った。洗濯上がりの柔軟剤のような、包み込まれるような、花の香りに似た気配。 「少し見せてください」  レジにいる女性に一声かけて、店内に目をやった。

ようこそ笑店街へ【30】街の相談役

街の相談役 笑店街の中心地は、ちょっとした広場のような空間になっていた。真ん中には時計塔…

ようこそ笑店街へ【29】睡魔

睡魔 眠れない。  布団に入ってからどのくらいの時間が経ったのだろう。気になって瞼をそっ…

ようこそ笑店街へ【28】最後の審判

最後の審判 二つの取調室で、現在ある犯罪の被疑者が取り調べを受けている。  取調室一。 …

ようこそ笑店街へ【27】アラ探し

アラ探し「アラ探しばかりするのは良くないクセよ」  ご近所の奥様に、私が思い切ってそう言…

ようこそ笑店街へ【26】読むもの

読むもの 笑店街の外れに位置する図書館は、平日の昼間から多くの人が利用していた。近所に住…

ようこそ笑店街へ【25】医者

医者 ダテ眼鏡をかけた医師の前に、タンクトップに半ズボン姿の中年男性が座っている。  男…

ようこそ笑店街へ【24】日常の教室

日常の教室 黒板に背を向けていた先生が生徒の前に向き直る。 「……ということで、今説明したところ、テストに出るぞ。覚えておけ」  すると一人の男子生徒が挙手して声を上げた。 「すみません先生! 今のところ聞き逃してしまったのでもう一回……」  その声に、一瞬で先生の顔色が変わった。 「聞き逃した? なんてことをしてくれたんだ君は!」 「え……」  いきなりの怒声に男子生徒はびくっと体を震わせた。それまでざわめいていた教室も一瞬にして静まり返る。 「今逃した言葉がもし危険なもの