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うそつきは真実を口にした

冗談のつもりで別れよう、なんていった。彼女は一瞬驚いたような顔をして、カレンダーを見てすぐに怒ったように頬を膨らませてぽかぽかと自分のことを殴り始めた。 「エイプリルフールだからって、ついちゃいけない嘘もあるでしょ!!」 「でも、エイプリルフールについた嘘は実現しないっていうよ?」 「それでもだめ!!」 そういう彼女の様子に、自分は二つ返事で軽く返したのだ。エイプリルフールについた嘘は実現しない。結局のところそれも迷信であったのだが。 「……」 目の前には一つの墓、墓に刻まれ

    • 人間と猫

      うちの近くに野良猫が住み着いた。牛のような斑が特徴的なかわいい猫。せっかくだから数日間様子を見てみようと思う。 一日目 よく晴れた日だった。真夏日が続くこともあってなかなか暑い日が続いている。猫はというと家の裏、日陰になっているところで丸まって涼んでいた。こっそりと様子をうかがっていたつもりが、気づかれてしまったようだ。猫はどこかへと去っていった。 二日目 昨日よりも暑い、晴れた日だった。猫も昨日と同じところで丸まっているが、少し元気がない。夏バテだろうか?実家から持って

      • 最新作のゲーム

        先日、ニンテンドーダイレクトが始まる前に流れたプロモーションビデオ。そのゲームの中でめちゃくちゃ気になったゲームがあった。 『バディミッションBOND』 私が見た内容は忍者×詐欺師のプロモーションビデオだった。前々から気になっていたゲームだったが、このダイレクトが終了してから決意が固まり、先日ついに購入した。 ゲームシステムは逆転裁判やダンガンロンパなどとよく似た捜査フェイズ、そしてその章のメインミッションをクリアするためのアクションシーンがある。このアクションシーンなのだが

        • 幸福は貯めること

          青年は手っ取り早く幸せが欲しかった。そのためならいろんなものを信じてみようと思った。幸せになるにはどうしたらいいのか。 「お金をためなさい」 初めて入った宗教団体でいわれた一言はこれだった。散在するということは幸せを逃がすことらしく、その人が言うにはお金を貯めることで幸せを感じることができるとのことだった。青年は確かにな、と思った。貯金をするということは不安を取り除くことができる。不安を取り除くというのは自分がこの先見えない暗闇を緩和するためのランプを手にするのと同義だ。真

        うそつきは真実を口にした

          ハロウィン

          ハロウィンの夜、人ならざるものが紛れ込む夜と噂の夜。人はみんなその人ならざる者にいたずらされないようにと仲間だと思わせるために仮装し、菓子を持ち歩く。しかし、こんなうわさがいつからか流れ出した。ハロウィンの夜に仮装して外に出歩くのは紛れ込んだ人ならざるものに連れていかれないようにするため。ハロウィンの夜に仮装しないで外に出歩けば人ならざるものに地獄に連れていかれ、二度と帰れない。そんな噂。少年がその噂を聞いたとき、それは誰かが面白半分で流したものだろうな、と思った。そもそも少

          ハロウィン

          甘いケーキとおませさん

          「いい加減にしてよ‼︎」 そうオレに向かって叫んだのは、いつも自分なりに夜咫やハルの面倒を見ている見習い九尾の狐太郎だった。どうやら何時もオンボロ神社の屋根で昼寝しているオレに腹を立てたらしい、尻尾の毛を逆立ててオレに向かって怒鳴ってくる。 「幽兄はいつもそう‼︎昼寝ばっかりして‼︎昨日の任務だって幽兄だけいなかったしさ‼︎」 ああ、昨日か…昨日は確かあの科学者のところに薬もらいに行ってたんだっけか、オレが周りと同じように行動するための。でもどうやら狐太郎にはそれがいつ

          甘いケーキとおませさん

          甘いものは苦手です

          「お前らー‼︎クッキー焼けたぞー‼︎」 そう言って俺たちを呼ぶのは俺たちの兄貴のような存在の幽凪。まあ、一応従兄弟なんだから兄貴でもいいのかもしれないけど、あいつと俺はそんな間柄じゃない。 「クッキー⁉︎(*⚪︎▽⚪︎*)」 そう言って背中の羽をパタパタとさせながら空中から降りてきたのは俺の妹の夜咫。いつもニコニコしていて泣いてるところは見ないが、怒らせたら半端なく怖い。それこそ山一つ消しとばしかねないほどだ。 「夜咫ストップ‼︎まずは手を洗ってこよう」 「え〜(*

          甘いものは苦手です

          おもい

          ほんのりと、まるで心が安らぐような日差しを浴びながら一人の青年が見慣れていた景色をよぎっていく。ひび割れて倒壊してしまったビル、割れた窓ガラスをそのままに大量の蔦が絡みついている一軒家、まるで森のようにも見えるそれは特に日当たりのいいところに山吹色の花が咲いている。あたりにはこの世界を滅ぼした原因である幻獣たちが闊歩していた。それらは青年を見るたびにまるで目上の人物にするかのように道を開ける。そんな彼らの様子に目もくれず、青年は廃墟と化した教会までやってきた。中に入るとかろう

          おもい

          まじない

          あなたは、人と結ばれるには何が必要だと思う?僕はね、だれかと一つになることだと思う!!だってね、そうすればみんないつでもどこでもいっしょにいれるから!! あ、それとね、これからあるおまじないのお話をするね!!そのおまじないっていうのは手作りのぬいぐるみに自分の一部を詰め、好きな人に贈ると結ばれるっていうもの!!実際、そのおまじないを試してみて片思いしてた人と仲良くなれた、ということがあったらしいんだ!!ただ気を付けなくてはいけないこともいくつかあって、ざっくり分けて二つあるん

          まじない