ウォーターベイビー【怪物ホラー短編】
素晴らしい家だった。湖畔にほど近い家は二階建てで、白い壁紙は染みひとつ無い。前の住人の家に対する心配りを考えると幸運なほどだ。妻のジェシーを伴ってここにやってきたとき、本当に来て良かったと思った。ジェシーは普段より少しだけ大人しかったが、それで充分だ。彼女には気分転換と療養が必要だと僕は確信していた。
時が哀しみを癒してくれるなどという言葉は、戯言にすぎないのだ。
最近のジェシーを見ていると殊更にそう思う。僕だってこの哀しみをどう癒せばいいのか、そもそも癒えるものではな