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【短編集】夏のまぼろし

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平成最後の夏に捧げた、ちょっと不思議な夏の思い出話。 蒸し暑い日に蜃気楼の中に入り込んでしまう「蜃気楼の夏」、二百年ぶりに日本で羽化する巨大な蝉の羽化を見に行こうとする「宇宙蝉」… もっと読む
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【短編】7.花火

 いつのことだったか、夜のコンビニで買い物を終えて出てきたときのこと。  コンビニから出…

【短編】6.夏の終わり

 あまりにひどい残暑なので、クーラーをかけているのに全然冷えない。  私はまだ暑い部屋で…

【短編】5.ひまわりの夢

 ひまわりの種を食べるとおへそからひまわりが生えるというが、それは嘘だ。  正しくは。 …

【短編】4.精霊馬

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【短編】3.宇宙蝉

 観察塔の上まで来ると、風が吹いていた。  じめついた湿気が無いだけで気持ちいい。 「下…

【短編】2.雨の金魚

 昔、金魚を飼っていたことがある。  縁日の金魚すくいで掬ったものだ。  突然の夕立には…

【短編】1.蜃気楼の夏

 ある蒸し暑い日のこと。  まだ七月だというのに、気温は連日三十五度以上の酷暑だった。テレビでは”どこそこでは四十度を越えた”などとしきりに報道され、反面、火急の用事以外ではできるだけ家から出ぬようにと促される。  そんなものが徹底されるはずもなく、熱中症による患者数は増えていく。  加えて私の住む地域は湿気が高く、まさに蒸し風呂かサウナだ。どちらにしたってちゃんと通常の温度の場所に戻るから気持ちがいいのであって、ずっとサウナ状態に居ても不快なだけである。  これでは酷