緑の沼③【ホラー短編・全4話】
パラパラとページをめくり、軽く読めそうな部分に目を通す。いくらかそんなことを繰り返すと、この事故死した人物の――おそらく男の――ことがなんとなく察せられた。男は精神を病み、療養のためにここへ越してきたのだ。文字は角張ったような神経質そうな字で、これを書いた人間の精神性がそのまま投影されたかのようだ。年齢はブランドンより年上と見え、だいたい中年くらいを想像してしまった。うだつの上がらない、陰鬱な表情をした神経質そうな男。骨張った手がこの本に角張って妙に堅い文字を書き込んでいく