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二軍成績から各選手の守備力を推定する

守備力を測る指標として、かつては失策数や守備率から測るしかありませんでしたが、現在ではUZRやDRSなどフィールドをゾーンに分割し、打球難易度や得点価値をベースに評価する形が主流となっています。

海の向こうのMLBでは、トラッキングシステムを利用して、効率的に落下点までのルートを取っているかや打球への反応速度も測れるなど、更に進歩した守備データが取得可能となっており、より選手の守備能力が明らかになっています。

NPBではトラッキングデータは公開されていないものの、DELTA社やデータスタジアム社から一軍出場選手のUZRデータは公開されていますが、二軍の守備データはNPBの公式ページで失策数や守備率のデータが記載されているのみで、それ以上のデータはどこにも公開されていません。

そこで、NPB公式ページから取得できる守備指標を基に、RRFというより詳細な守備データを算出することで、二軍を主戦場とする選手の守備能力を推定していきたいと思います。

1.RRFの算出方法

そもそもRRFとは何なのかについて、あまり知られていないように思うため、その解説から行っていきます。

詳細はsamiさんの「日本プロ野球RCAA&PitchingRunまとめblog」に譲りますが、公式記録として残されている補殺数や刺殺数をベースとして、実際に記録された補殺/刺殺数と期待される補殺/刺殺数を比較し、平均的な選手よりどれだけ失点を防いだのかを算出するというものです。

補殺数や刺殺数はNPBの公式ページに下記のように記載があるため、こちらを利用すればすぐに分かります。
昔の年度も刺殺数や補殺数のデータは取られているため、UZRを算出できない過去年度については、このRRFの手法を利用して守備能力の推定が行われています。

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今回は、内野手であればゴロを捌いた際に記録される補殺を、外野手であればフライを捕球した際に記録される刺殺をベースにして、期待値と実際の記録値の差に、ゴロアウトの得点価値0.72点とフライアウトの得点価値0.84点をそれぞれ掛け合わせることで、守備得点を算出しました。
外野手の場合だと、刺殺に加えて補殺数も得点価値を1.0点として、同様に算出していきます。

上記のようにして算出した数値に、様々な補正を加えていくことで、より実態に近い数値を算出していきますが、ここでは左腕投手の投球イニングによる補殺数補正と内外野でのアウトの偏りによる刺殺補正のみを実施しています。
詳細な補正法はこちらもsamiさんの下記記事を参考にしました。

このような算出法にて、二軍成績から守備力を推定していきます。

2.各球団のポジション別守備成績

2-1.球団別守備得点

ここからは、12球団の二軍成績から個人の守備成績を算出していきますが、その前に各球団別の守備成績を概観しておきましょう。

インプレーをアウトにした割合を示すDERを基に、その平均からの傑出度とゴロアウトの得点価値を掛け合わせることで、簡易的ながらチームの守備得点なるものを算出できます。

算出方法は、蛭川皓平著の「セイバーメトリクス入門」に記載のあった式を基にしています。
0.72(ゴロアウトの得点価値)×(チームDER-リーグ平均DER)×(打席-本塁打-四死球-三振)

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以上を基に算出したものが上記表となります。

ウエスタンでは、ソフトバンクが高い守備力を見せる一方、中日広島オリックスがキレイにマイナスを分け合う形となっています。一軍でも守備指標は高いソフトバンクですが、二軍でも同様に高い守備力を発揮していることが窺い知れます。

イースタンでは、非常にバラつきが大きく、楽天ロッテの上位2球団は非常に高い数値を記録する一方で、横浜日本ハムは非常に低い数値となっています。横浜日本ハム両チームとも、投手成績も横浜がリーグ5位で日本ハムがリーグ最下位と振るいませんでしたが、単に投手だけの責任でなく、守備力の低さも足を引っ張っての成績だったのかもしれません。

2-2.個人別守備得点

続いて個人にまで守備得点を細分化したものを算出し、どの選手が二軍で優れた守備能力を発揮しているのかを確認していきます。
以下では、各ポジションで守備イニング200以上と推定される*選手を抜粋し、記載しています。(200イニング以上の選手のいないポジションは、最多出場イニングの選手を記載しています)

なお、捕手については盗塁阻止の成績が公式に上がっていないため、捕逸数を基にしたブロッキングと、失策数を基にした失策抑止のみで評価しています。

ソフトバンク

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好守に定評のある川瀬晃が守備得点10.7と、その評判通り非常に高い守備力をSSとして発揮しています。今宮健太に衰えが見られても、この川瀬の守備でしっかり穴埋めは出来そうです。

外野では、育成選手の田城飛翔が高い守備力を見せています。昨年はウエスタンでリーグ2位の打率.307をマークした打力もあるようなので、支配下登録も近い将来あるかもしれません。

一方、2Bをメインとする三森大貴は-11.1と守備得点を稼げていません。両コーナーを任されるほどの打力があるわけでもないため、守備力を向上させなければ一軍で生き残るのは難しいかもしれません。

オリックス

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目立った守備得点の選手はいませんが、太田椋と宜保翔の昨年高卒ルーキーながら、既に一軍出場も果たした内野プロスペクトの守備力は気になるところです。
太田は主にSSで-4.0、宜保はSSでは-1.6ながら2Bでは1.8をマークしており、高卒ルーキーにしてはまずまずと言えるのではないでしょうか?
今季どのような守備成績の推移を見せるか、注目したいところです。

阪神

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一軍は内野守備力の低さが、ここ数年課題として叫ばれていますが、その解消の一翼を担う可能性を秘めているのが、小幡竜平です。798イニングをSSとして守り11.8という守備得点は、SSとしては両リーグNo.1の数値を叩き出しています。
甲子園の土のグラウンドに適応できるかという問題はありますが、鳥谷敬が衰えて以降中々現れないレギュラーの座を掴むのは、この小幡かもしれません。

一方、守備力の高さを期待されて入団してきた熊谷敬宥は、2Bで-7.9と非常に苦労しているようです。
打撃も昨年は二軍でOPS.606といいところがなく、このままでは戦力になることなく埋もれていく可能性が高いため、何かを変えたいところです。

中日

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中日で最も気になる選手と言うと、間違いなく根尾昴の名前が挙がると思います。その根尾ですが、SSでは両リーグ最多の900イニングを守りましたが、守備得点は-15.2と大きなマイナスを記録してしまいました。
2Bをメインとした高松渡も-9.5という大きなマイナスを記録していることから、現在強みとなっている二遊間の高い守備力も、将来のレギュラー候補の両名がこのような守備力では、この先少々心許ないと言えそうです。

そんな中、複数ポジションを守りながら高い守備力を発揮しているのが、石垣雅海です。1B/3B/SS/LF/RFの5ポジションを守り、トータルの守備得点は6.2と高いユーティリティー性を発揮していることから、一軍では重宝される存在となりそうです。

広島

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広島で際立っているのは、センターラインの守備得点の高さです。
いずれもルーキーながら、小園海斗は8.0、羽月隆太郎は2B全体1位の14.4、大盛穂は8.3と非常に高い守備得点を記録しています。
小園と羽月に至っては高卒ルーキーという時点で恐ろしいですし、両者ともに打撃面でも既に適応を見せているあたり、将来が非常に楽しみな存在と言えるでしょう。

楽天

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イースタン2位の守備得点を記録した楽天ですが、センターラインやRFといった比較的守備力が求められるポジションにおいては、高い守備得点を記録しています。
一軍ではまだまだ守備力を発揮できていませんでしたが、SSと2Bでプラスの値を記録していた西巻賢二を放出したのはどうなのでしょう‥
一軍のUZRではRFはリーグ5位と低い数値だっただけに、大幅なプラスを記録した小郷裕哉が一軍のRFに定着すれば、その改善も見られるかもしれません。

ロッテ

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ロッテでは、根尾と高校の同級生であり、高い守備力も評価されていた藤原恭大の数値は気になるところですが、CFを任されながら-13.6と根尾と同様に非常に低い守備得点に終わってしまいました。
獲得刺殺数の少なさもそうですが、補殺を一つも奪えなかったのが大幅なマイナスとなってしまいました。
高校時代から強肩で鳴らしていたため、走者側が自重して補殺数が伸びなかった可能性も否定できませんが、いずれにせよ二軍でOPS.619に終わった打撃面だけでなく、守備面でも苦労していたことが窺い知れます。

その他では、菅野剛士が両翼で高い数値を記録しており、打撃面で一軍に適応できれば、攻守でチームにプラスをもたらす存在になり得るかもしれません。

横浜

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チーム守備得点はイースタン最下位に終わった横浜ですが、大きく足を引っ張ったのは外野陣です。
細川成也、梶谷隆幸、楠本泰史が大幅なマイナスを記録してしまいました。
ただ、本拠地の横浜スタジアムの狭さを考えると、そこまでこの守備得点の低さを気にかけなくても良いのかもしれません。

内野陣は全体的に悪くなく、一軍ではその守備力の低さを指摘されることの多い倉本寿彦も、二軍ではSSでプラスの値を記録しています。
二軍と一軍の間には、打球速度や走者のスピード、観客の多さからの重圧によって、発揮される守備能力にも変化があるのかもしれません。

巨人

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巨人はこれと言って際立つ選手はおらず、昨年支配下登録されたばかりの加藤脩平の守備得点の高さと、俊足が持ち味ながら低い守備得点に終わってしまった松原聖弥が気になるくらいでしょうか。

高卒ルーキーながらイースタンで首位打者を獲得した山下航汰は、両翼で平均的な守備得点となっていますが、一軍レベルだとどのくらいの守備レベルになるのかは気になるところです。

ヤクルト

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ヤクルトは、二遊間をメインで守った選手たちが、軒並みプラスの守備得点を記録しています。
一軍では内野守備力の低さが課題のため、吉田大成や宮本丈の活躍ぶりによっては、その穴埋めも可能かもしれません。

外野では、中山翔太が両翼で大幅なマイナスを記録しています。
打撃面は既に一軍レベルのため、守備面でもレベルを上げて一軍定着を狙いたいところです。

西武

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西武では、主にLFを守った鈴木将平が16.0という非常に高い守備得点を記録しています。
単一ポジションでは、全選手の中でもトップの傑出を誇っており、秋山翔吾が抜け外野の人材不足感の否めない西武において、貴重な存在となりそうです。

その他はマイナスを記録する選手も多く、特に一軍レギュラー陣が攻守にハイレベルな内野では、その非常に高い壁もあってまだまだ台頭に時間はかかりそうです。

日本ハム

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日本ハムは、リーグ最下位の横浜と変わらないレベルの守備得点の低さですが、個人で見るとこちらの方がより深刻感があり、特に内野の各ポジション200イニング以上守った選手の内、プラスの守備得点を記録した選手はいません。この辺りからも、日本ハムの若手野手育成の停滞感が透けて見えてきます。

外野もマイナスを記録した選手が多いですが、昨年高卒ルーキーながら14本塁打を放った万波中正が、守備面でもプラスの数値を叩き出しているのは、唯一と言っても良い希望です。
西川遥輝の来季のMLB移籍も噂される中、攻守にハイレベルな活躍を見せる万波を将来の外野の中核として育成していきたいところです。

3.まとめ

ここまで各球団ごとに、二軍選手の守備力を概観してきましたが、最後にポジション別トップ3とワースト3の選手をまとめてみます。

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このように守備得点として、個人の守備力を推定していきましたが、どれだけ多くのアウトを獲得したかという視点での指標のため、捕手以外では失策抑止を考慮できていませんし、特に外野の指標は各ポジションごとスタメン出場数で無理やり割り振っているだけなので、正確性には欠けていると言わざるを得ません。その点にはご留意頂きたいと思います。

また、倉本のように二軍での守備得点は高くとも、一軍ではそれを発揮できていない選手もいるようなので、今後は本稿の第二弾として一軍と二軍の守備成績を比べ、両者の間にどのような関係があるのかを明らかにしていきたいと思います。

※イニング推定については、各ポジションごとに個人刺殺数+補殺数をチーム総計の刺殺数+補殺数で割ることで、チーム総計イニングに対する守備機会の割合を推定イニングとした。
また「セイバーメトリクス・リポート4」の「オールタイム・ゴールデングラブ賞への道」に示されていたのを参考に途中出場は2イニングと仮定し、またsamiさんの下記手法を参考に、スタメン出場の内28.8%は途中交代と仮定している。

参考
「セイバーメトリクス入門」 蛭川皓平
「セイバーメトリクス・リポート4」 岡田友輔/道作/三宅博人/morithy/蛭川皓平/高多薪吾/Student/水島仁/神事努/市川博久/大南淳
日本プロ野球RCAA&PitchingRunまとめblog(https://ranzankeikoku.blog.fc2.com/)
Baseball LAB(http://www.baseball-lab.jp/)

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