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『人間らしさ』と向き合う仕事

皆様は「損害保険」にどんなイメージがあるだろう?

「車とかの自動車保険?」
「自然災害の時に保険を出す仕事?」
「とにかく損害を補填するもの!」

世間一般では、自動車保険のイメージが強く、おそらく上記のような意見が大半だろう。

私が就職活動をしていた時、損害保険業界は「鉛筆からロケットまで、あらゆる挑戦をカバーする仕事」と言われていた。

「人の挑戦を後押ししたい、支えたい
そんな君を待っている!」

こんなキャッチフレーズに心動かされる
就活生がたくさんいた気がする。
かくいう私自身も、その1人だ。

私がこの業界を目指したきっかけは
『東日本大震災』だった。

自分自身が被災者になり、親戚に死者もいた。
家が無くなり引っ越さざるを得ない友人。
全てがドラマのようで現実味がなかった。

自然災害の前に、人は無力だ。
でも残された人は、そこから立ち上がらなければならない。日常を取り戻さなければならない。ずっと止まってはいられないから。

「保険で心の傷を癒すことはできません。けれど、経済的な面から、立ち上がるお手伝いをさせてください。あなたは1人じゃないですよ」

これは私の実家の支援に来てくれた、ある損害保険会社の人が言った言葉。

「あなたに何がわかるのか?」
「所詮他人事。同じ境遇になってみろ」
その時の私はそう思った。
でも同時に、支えてくれる人がいる温かさに感謝したのも覚えている。

その経験から、損害保険を「当たり前の日常を支える仕事」「万が一の時、人を助けられる仕事」だと感じ、自分もそこで働きたいと思った。
そして今、縁があって、当時お世話になった会社で働いている。

正直、私は打たれ弱いし脆いから、損害保険業界に向いていない。

日常が壊れた時、人の本性が出る。
不安で泣き崩れる人。
行き場のない思いをぶつけたく怒る人。
少しでもお金を取ろうと躍起になる人。
罵詈雑言を浴びせられることは日常茶飯だ。

それを受け止められるだけの、精神的な強さが私にはないのだ。

じゃあなぜ、それでも私は働き続けるのか?

それはひとえに『自分が支えてもらった分、今度は私が人を支えたい』という純粋な思いなのだと思う。

私は入社し、代理店営業を経験し、現在は事故対応の部署にいる。
自然災害の時には、被災地へ行き、復興支援もする。

罵詈雑言の嵐だし、脅されることもある。
「私は何のために働いているのか?」
そう悩むこともある。

でもこの仕事にはひとつだけ共通点がある。

それは最後に必ず「ありがとう」と感謝されること。お礼の手紙をもらったり、直接来てくれたり、はたまた贈り物をもらったり。
それだけが救いで、やりがいなんだと思う。

私はこの仕事が嫌いではない。

ただただ「人間の本性」と向き合う仕事だと思う。
だって、辛い時は誰でもいいから八つ当たりしたくなるし、縋りたくなるし、感情をぶつけたくやん?それは当たり前の姿。
でも最後に穏やかになる人を見ると、性善説を信じたくなるし、きっとそうなのだと思える。

あとぶっちゃけ、この仕事をしてるお陰で、めちゃくちゃ心が広くなった気がする。
ちょっとやそっとの嫌味は、蚊がなく程度のことである。

この仕事だから得られたものも、きっとある。

ずっとこの仕事をできるかは正直分からない。会社の人からは「もっとあなたに向いてる仕事があるのでは?」なんて言われる始末。

でも初心を大切に、できる限りはやり切りたいと思う。だって、自分で選んだ道なのだから。

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