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【読書】子供の目標に親がのめりこむ危うさ/『勇者たちの中学受験』『栗山ノート』♯013

『勇者たちの中学受験』を読んで

この夏に読んで面白かった本。
『勇者たちの中学受験』。

受験生のお子さんがいるご家庭ではよく知られた本だと聞きます。我が子は上が小2なので、まだ中学受験をするかどうかも未定ですが、野本響子さんのVoicyで面白そうだと思って読んでみると…

これ、中学受験を通した話を書いているけれど、自分に無関係な話ではありませんでした。

子供の将来のためにとはじめた中学受験に、どんどん親がのめりこみ、子供の心を追い詰め、壊していく姿が、他人事とは思えない出来事がありました。

受験だけでなく、スポーツ、習い事など、子供の目標を親が応援する場面は非常に多いです。
ただ親の関わり方次第で、取り返しがつかないほどに子供を追い詰めてしまうこと、そして渦中にいるとそれに気が付かない怖さを、追体験できるリアリティに満ちた一冊でした。


子供の目標を巡って気づいた私の執着

先日、こちらの記事を書きました。

1年半、英語圏で暮らしたこともあり、「英検に挑戦したい」と取り組んでいた息子。ただ2級まで来ると、自習は難しく、私が横に座ってサポートする機会が増えました。でもこれまでと違い「英検やろか!」と声をかけても「えー…」と渋るように。

日中仕事で、夕方は家事・兄妹の育児をワンオペ。21時には子供たちを寝室に連れていくので、この生活スタイルで息子の英検対策にガッツリ付き合うとなると、難しい。
塾や家庭教師も調べたけれど、選択肢としてはない。
だからなるべく息子ができることは自分でやってほしい。そのためにはやる気を引き出さないといけないと考えた時

2級になった途端、しつこく言わないと机に向かわなくなってしまった息子と向き合う必要が出てきました。

原因
現状と比較して高い目標であるにもかかわらず、それを短期間で合格させるという設定がふさわしくない

ここから自問自答が始まります。

なぜ短期間で合格させたいのか?
英語圏から戻ってきて日が浅いうちに受ける方が英語の感覚が残っているから

なぜそんなにも英検にこだわっているのか?
もともと息子が受けたいと言ったものだから。
今までも合格したことで、本人の自信になってきた。

既にやる気を失っているようにも見えるが、今、無理強いしてでも合格させることが、息子のためになるのだろうか?
う~ん…

では、執着しているのは誰?
、、、私だ

なぜこだわっているの?
もし中学受験をする場合、英検があると有利な試験体系があるらしい。今取っておけばあとあと楽。

という私のこの算段が執着となり、息子に無理なスケジュールを押し付け、やる気を失わせていることに気が付きました。

このままここにこだわり続けると、息子が英語嫌いになる姿は目に見えていました。そこまでして受けるかわからない受験の条件を満たす必要はあるんだろうか?
いや、ない。
それより息子が英語が嫌いにならないことを優先する方が今は大切だろう、と「もうちょっと先で受けようか」と一旦この目標を取り下げることに。

人を育てるうえでの栗山監督の信念

ここ至る過程で参考になった本があります。
マイクロマネジメントによらず、主体性、やる気を引き出し、結果に導く方法を参考にしたく侍ジャパンの栗山前監督が記した『栗山ノート』を読みました。

この栗山監督のエッセイでわかったことは
選手の未来の可能性のために、心身がつぶれることまでは絶対にやらない。
そこが、『勇者たちの中学受験』に登場する大人たちとは対照的でした。
またチームの負けは「自分の采配のせい」と言い切り、決して他責にしない姿も、そして監督が人格を磨くために研鑽を積まれている様子も大変印象に残りました。

また、先述の野本響子さんと、中学受験のプロコーチ安浪京子さんとの対談も示唆深かったです。
必死に中学受験に挑んで、優秀な進学校に合格し、ようやく勉強から解放されると思ったら、今度は大学受験の勉強に苦しめられる教え子の話を安浪先生が声を震わせながら語っておられました。

学びは本来楽しいものなのに、「勉強が試験に合格するため」というメッセージにすり替わってしまうと、それは苦しくなりますね。
日本人の大人が勉強しないと言われるのもわかります。
総務省統計局が2022年に発表した社会生活基本調査(令和3年度調査)によれば、日本の社会人の勉強時間は平均13分とのことです。
また、過去最多になった小中高校生の自殺者数の最も多かった理由が「学業不振」(83人)。次が「進路に関する悩み」(60人)だったのだそう。

親のメッセージ、かかわり方を自問し続ける

幸い、我が家での出来事は、夏のほんの1,2カ月間の話でしたが、これが中学受験となると3年、いや低学年から始めてる家庭だと4年、5年続くと思うと…。小学生ってまだまだ自分のコミュニティが広くないから、関わる大人の数も限られてくる。身近な大人の絶対性が高いので、親も塾も、そのかかわり方によっては、心や意欲を蝕む存在になりかねません。

そしてかく言う私も中学受験は塾の方針が合わずメンタルがやられて途中離脱してしまったけれど、大学受験は家庭教師がコーチの役割を果たしてくれて、合格が自信になった経験があります。そして大学で出会ったいわゆる名門中高校出身の友達は、行動力、バイタリティにも溢れていて、どの友人もおおらかで魅力的でした。

要は、周りの大人のかかわり方、メッセージの伝え方。
これから我が子たちもいろんな挑戦をすることでしょう。「親子二人三脚で掴む夢」って聞こえはいいけれど、実際には、親自身の目標の捉え方、そして時には一歩引いて応援する距離感が大切なのかもしれない。そしてどこかのタイミングでは、子供の将来に親があれこれ干渉しない子離れのタイミングも。
そんなことを考えた今年の夏でした。

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