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[漫画&ブログ] オッサンの気づき 第34話 ~親ガチャに気づいた!~

これは元々は「闇子ちゃん」で描こうと思っていたネタです。親ガチャという流行語をご存じでしょうか。どういう親のもとに産まれるか、お金持ちや優しい親だったらガチャ成功、貧乏やナーバスな親だったらガチャ失敗という意味です。私はまとめサイトで10年くらい前に初めて見ました。今ではSNSでよく使われています。

けれども、私は真の親ガチャとは、日々の暮らしの中で親の愛情を求めて引き続けてしまう事だと思います。妻ちゃんのように小さい頃に愛情を受けられなかった人は、その後の人生でずっと親から愛情をもらおうとしてガチャを引き続けてしまうのです。アダルトチルドレンと毒親は、親離れ&子離れがしづらい事が多いです。それは子供の頃に愛情を受けられなかった欠落を、大人になっても埋めようとしてしまうからです。子が親の愛情を求めるのは本能なので、とても強い力があります。哺乳類は親の庇護が必要な状態で生まれて来るからです。「親から見捨てられると死んでしまう」という本能なのです。

わかりやすくするために具体的に言い換えると、3歳の時に母からもらえなかった愛情を今もらおうとガチャを引き続けるという事です。結論から言うとそのガチャは当たる事はありません。なぜなら「3歳の時に母から」もらえなかった愛情を求めているからです。もう本人は3歳ではないですし、本人と母親との関係も本人3歳&母30歳くらいの関係とも違うからです。例えるなら、高校生の頃に東大に受かるために勉強していたけど受からなかった人が、60歳になってもう一回東大を受けたら受かったようなものです。受かって嬉しいは嬉しいけど、今受かってもな…現役の時に受かりたかったな…となりますよね。以前に描いた「キャンディーちゃん」の内容がこれと同じです。

小さい頃に親からの愛情が欠落していて、それが隠れた原因となって大人になってからも何か不具合を抱えている状態を、愛着障害と言います。これは人間関係、精神面、体調面、色々なパターンがあります。そして私は日本人には隠れた愛着障害の人がすごく多いと思っています。「生きづらさ」が長い事キーワードになっていますし、社会の発展とともに親が忙しくなり、子供へのケアの時間は明らかに減りました。妻ちゃんも0歳の頃から保育園に預けられていました。0歳という最弱の状態にもかかわらず、親ではなく本人からしたら謎の大人に囲まれている状態は、愛着障害を抱える大きな原因です。でも日本はそれが当たり前になっていますよね。

何年か前に鬼滅の刃がヒットした時も、世の中の人はパパ&ママ感を求めているんだな~と感じました。

私は、漫画やアニメは社会を映す鏡だと思っています。「共感」が大事な娯楽なので、読者の深層心理、ひいては社会心理に沿ったものが求められるからです。男性向けの漫画を例にとってみると、ヒロインが存在する作品が非常に多いのですが、その多くは「男性を受け入れる」存在です。簡単に言えばダメ人間でも好きになってくれる存在です。自己中寄りの主人公に対し、世話を焼いてくれたり応援してくれたりするキャラクターが多いですよね。私はそれは男性読者のパパ感&ママ感を欲する深層心理に応えたものだと思っています。「ダメ人間でも受け入れてくれる」は赤ちゃんと親の関係です。赤ちゃんはよだれもたらすしうんちおしっこももらしますよね。大人目線でいえばダメ人間です。それでもヨシヨシしてもらえるわけです。そのヨシヨシが足りていなかった場合、成長してもだれかにヨシヨシしてほしい欲が残り、その需要に疑似的に応えていたのが、漫画やアニメのヒロインだったのではないでしょうか。これは例えばツンデレキャラも、一見主人公を拒んでいる(ツン)ように見えますが、その後受け入れてくれる(デレ)わけで、割とリアリティあるパパママ感だと思うんです。実際のパパママも仕事が忙しかったりで、拒みの状態、要は子を受け入れられない状態が存在しますもんね。あとロリ系のキャラも、完全なる幼児性のみで作られたキャラよりも、幼児的だけど主人公をひっぱってくれたり家庭的なキャラが多いです。妹キャラのブームは完全にそれでした。肉体は若いけれども、内面はママ性があるという事です。漫画やアニメは他の媒体より比較的規制がゆるかった印象があります。そのため読者の欲求に素直に応える事ができ、社会をバーンと映していたのだと思います。さらに最近は年上系のヒロインが増えた印象があります。これも、より直接的に母性を漫画やアニメに求めるようになってきた表れなのかもしれません。長くなってしまうので割愛しますが、これは女性向け漫画でも同じだったのではないでしょうか。それほどスペックの高くない主人公が王子的な存在と良い感じになるという軸を持つ作品が多く、その王子はクラスのイケメンであったりイジワル上司であったりアラブの石油王だったりするわけです。もちろん、これらはヒロイン性や王子性がカギになっている作品の話で、男性向けであれば闇金ウシジマくんのような、女性向けであれば職業もののような、ヒロインや王子が存在しない作品もたくさんあります。いずれにしても、漫画&アニメという日常の一部になっている娯楽で、隠された形で「3歳の時にもらえなかった愛情」を疑似的に補完していた流れは確かにあったと感じています。

この漫画をTwitterに載せた時、「親ガチャという概念は、水面下にあったのが最近表に出てきた」というコメントを頂きました。私もそう思います。「杉村くん」で時々描いたように、愛情不足から不良化するパターンは多かったです。昔の友達や知り合いの事を思い出しても、「あれはこういう事だったんじゃないか」と気づく事がよくあります。何かフワっとした親に対するネガティブな感じを、言葉のセンスがある人が「毒親」とか「親ガチャ」とバシっと一語で表し、それに共感した人たちがネットで広め、語られるようになったのは間違いないですよね。「リア充」「陰キャ」「チー牛」「エモい」など、そういう流れで流行語になったものは非常に多いです。言葉で具体化されて「そう!それ!」となって、その言葉を軸に話やすくなったという事です。そのフワっとした何かに苦しんでいた人にとっては良い流れですよね。そして漫画もそうだと思います。一つの流れを持った概念を、絵と言葉という具体性でもって発表して、自分の事をわかってもらい、読者の気持ちにも寄り添えるのです。色々考え過ぎて辛い事も多いですが、漫画を描く事、読んでもらえる事に私は支えられています。いつもありがとうございます。

[おまけ]
先日、漫画の原稿をヤングキング(少年画報社)に持ち込みました。とても良い感触で、うまくいけばデビューできそうです。私は漫画は20代から、美大受験を含めたら16歳の頃から何か目標に向けて絵を描いているので、46歳の今デビューできたら30年越しに報われた事になります。今年はおみくじで大吉が出ましたし、上手くいくよう期待しています。







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