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[漫画&ブログ] 闇子ちゃん 第27話 ~アダルトチルドレンちゃん~


アダルトチルドレンとはおおまかに言えば、毒親に育てられた悪影響で人間関係がうまくいかなくなってしまった大人の事です。一昔前の毒親ブームでは、親側の特徴にフォーカスする記事が多く見られたのに対し、子供側にフォーカスした記事は比較的少なかった気がします。なので今回の漫画では、親側の視点はほぼ無視して、子供側の視点で描きました。やっぱり子供は弱者の側ですし、私は弱者の味方をしたいのです。私の妻や友人でも時々アダルトチルドレンがいて身近な存在だからというのもあります。今までの闇子ちゃんシリーズも基本的には全てこのアダルトチルドレンという考え方に則して描いています。ちなみにアダルトチルドレンと似た症状に、愛着障害というものもあります。重なる部分が多いので、そちらの漫画もぜひご覧ください。

アダルトチルドレンの特徴は以下の13個です

1 自分の考えや行動が「これでいい」との確信が持てない
2 物事を最初から最後までやり遂げることが困難
3 本当のことをいったほうが楽なときでも嘘をつく
4 自分に情け容赦なく批判を下す
5 楽しむことがなかなかできない
6 まじめすぎる
7 親密な関係を持つことが大変難しい
8 自分には、コントロールできないと思われる変化に過剰反応する
9 常に、他人からの肯定や受け入れを求めている
10 自分は、人とは違うといつも感じている
11 常に責任をとりすぎるか、責任をとらなさすぎるかである
12 過剰に忠実である
13 衝動的である。他の行動が可能であると考えずに1つのことに自らを閉じ込める

学陽書房1996「アダルト・チルドレンと家族」著/斉藤学

あなたはこれにいくつあてはまるでしょうか?ていうかこれって結構日本人にあてはまりますよね。そうなんです、日本人ってもともとアダルトチルドレン傾向が強いと思うんです。それもあって「生きづらさ」が話題になる事が多いんだと思います。過半数の人は1にあてはまるでしょうし、3は空気を読む文化がある日本では当たり前の事ですよね。4は自己嫌悪あるあるで、日本人は自己嫌悪をしている人が多いと思います。6は視点を変えると仕事仲間に迷惑がかかるから病気でも仕事を休めないというような事も意味しますし、9は流行語の承認欲求の事です。11の責任をとりすぎるは6と一緒ですし、12も同じです。会社や部活などで、上位の存在の言いなりにならざるを得ない事は多いですよね。さらに最近よく言われる「Z世代は仕事をすぐ辞めちゃう」みたいな視点では、2や11の責任をとらなさすぎるがあてはまりますし、それとは別に7の人が多いというのも聞いたことがあります。私の漫画ではこれらを単純化して、「他人を気にしすぎる」の一言でまとめました。「他人が重要になりすぎる」でもいいです。他人との比較や、他人からの批判を恐れたり、他人との境界線があいまいなために「自分なり」ができないという意味です。以前の漫画では、「〇を重ねすぎる」という表現でそれを描いた事があります。アダルトチルドレンであるかどうかは関係なく、日本人にとても多い性格だと思います。最後のページの「自分のために生きる」は当たり前の事ですが、それができない日本人はあまりにも多いですよね。そりゃ生きづらくもなって当然です。

https://note.com/yuki1192/n/n311337ef935b?magazine_key=m83ac0d58f5d0

また、2ページめの「大人(アダルト)でいなくてはいけなかった子供(チルドレン)」は、私のオリジナルの説明です。正しくは「子供時代に親がアル中だった大人/Adult Children of Alcoholism」です。でも、「大人でいなくてはいけなかった子供」は日本のアダルトチルドレン傾向をよく表せてるんじゃないかなと思っています。それは次に紹介するアダルトチルドレンの6パターンを見てみるとわかると思います。これは家庭の崩壊を防ぐ本能から、毒親に対してどういうふるまいをしていたかという事です。

1 ヒーロー型
優秀であり続ける事で親の視線を自分にそらし、家庭の崩壊を防ぐ(例えば両親が離婚しそうであるとか)。

2 スケープゴート(いけにえ)型
悪い子であり続ける事で親の視線を自分にそらし、家庭の崩壊を防ぐ。(ヒーロー型の逆)

3 プラケーター(カウンセラー)型
親の愚痴のはけ口になったりなぐさめ役になる事で、家庭の崩壊を防ぐ。

4 クラン(ピエロ)型
おもしろキャラになって場を和ませて家庭の崩壊を防ぐ。

5 イネイブラー(世話)型
親の世話をする(時には親子関係が逆転するレベルで)事で、家庭の崩壊を防ぐ。

6 ロスト・ワン型
自分の殻にこもることで、自分を守る。(これは特殊なパターンで、家庭の崩壊を防ぐ直接的な働きかけはしません。

これもどうでしょう。「えっ、普通に良い子じゃない?」ととらえる人も多いと思います。そこも日本がアダルトチルドレン傾向を生みやすい原因だと思っています。1は優秀な子供、3と5は優しい子供、4は面白い子供とポジティブにみなされる事が多いですよね。でもこれらは全て「大人脳」を使った行動です。アダルトチルドレン傾向のある人にとっては、そういう行動が辛かった経験があると思います。

子供は不完全な生き物です。何かを優秀にはこなせませんし、他者への気遣いも無いのが普通です。何よりも、そんなものより子供にとって必要なのは世界に対する安心感です。安心感がベースにあるから、大人になった後も他者と健康的な人間関係を築けるのです。大人の世界は気をつけなくちゃいけない事が多いです。仕事でミスしてはいけませんし、社会人として周りに気づかいをしなくてはいけません。ある程度優秀でいないと生活ができないのです。安心感が無く大人脳を使う機会がたくさんあります。そういう将来のためにも世界に対する安心感のベースを築いておく必要があるのです。そしてそういう安心感のない「大人脳」を子供のうちから強制されていたのが↑↑の6パターンという事です。「良い子」とは大人目線の良い子というだけで、子供からすると無理をしているだけなのです。あなたは子供の頃、無理せず安心感を築ける環境だったでしょうか?それとも大人目線の良い子を頑張らされる環境だったでしょうか?

現代はこの「大人目線の良い子」を助長する空気感がすごく強いと思います。クイズ番組に秀才小学生が登場して大人を負かしたり、年齢が若いのにすごく礼儀正しいスポーツ選手がもてはやされたり、子供がちょっと良い事を言って大人がハッと気づくみたいなCMや漫画など。「大人顔負け」な子供をポジティブにとらえる世の中は、子供本人にとってはすごく危険だと思います。大人が子供に無意識に「大人脳」を押し付けやすくなるのではないでしょうか。2ページめで描いたように、アダルトチルドレンはもともとはアル中家庭での虐待で見つかった症状です。そこではアル中の親のためにお酒を買いに行ったり、暴力を受けてもご機嫌取りをしたりという、周りからも子供自身も「あっこれはやばいやつだ」と気づきやすい大人脳の強制がありました。けれども日本版アダルトチルドレンのように一見「大人顔負け」で良い子ととらえられる大人脳の強制は気づかれません。さらにそれを頑張ってこなせちゃった子供に対し、親のほうがより子供っぽくなるという親子逆転の現象すら起こる場合があります。2000年前後に「友達親子」という言葉が流行りました。友達のように仲が良い親子…のパターンもあったでしょうが、親の精神が幼く子供に依存しているというパターンも多かったと思います。また、この時代のドラマやアニメでも親が子供っぽく子供がその世話をする、もしくは親が自由人で子供が家の事を全部するという設定も時々ありました。アニメでは結構多かったと思います。ドラマやアニメは社会をデフォルメしたものなので、そういうアダルトチルドレンを誘発する親子関係が増えていたという事なんだと思っています。(親子逆転についてはまた改めて漫画で描く予定です)

https://www.tv-tokyo.co.jp/anime/toradora/

もちろん、子供がそうしたくて親のケアやおもしろキャラを演じるるぶんにはあまり問題はありません。世の中は0か100かではないです。親へのケア100%はアダルトチルドレン一直線ですが、子供が安心感を維持できる範囲で、親へのケア10%くらいだったら良い社会勉強にもなりますよね。子供自身の生まれついての性質という事もあります。私自身も前回の漫画で描いたように、5のイネイブラー型の要素が少しあったと思います。問題なのはそれを無意識に強制されていて、その悪影響で大人になってから生きづらさを抱えるはめになったかどうかという部分なのです。

https://note.com/yuki1192/n/n2731ce78a192

アダルトチルドレンを誘発する家庭は、子供の「自分なり」が否定される家庭でもあります。「自分なり」は「人権」とも言い換えられます。アダルトチルドレンを生み出す家庭とは子供に人権が無い家庭の事です。でも日本社会って「自分なり」に対してネガティブな空気感がある気がしませんか?例えば子供の「自分なり」に任せたら、ゲームを一日中やっちゃうじゃないかとか、大人ですら「自分なり」で生きたら仕事もせず毎日パチンコを打ってる人になるじゃないか的な空気感の事です。そもそも人権とは簡単に言うと、数百年前のヨーロッパで王様の支配に対して普通の人が俺らも人間なんだぞー!と大暴れして生まれた概念です。それが明治維新以降に日本に輸入されました。しかし日本の場合、そういう革命は無かったので、表面的な所だけが浸透しました。欧米の人が日本よりも個人主義&自分の幸せメインで生きられるのもその違いからだと思います。そういう意味でも日本は人権、自分なりが比較的守られにくい社会であると思います。会社や部活、その他の公共の場では自分なりは大きく制限されますよね。例えば運動部だったら新入生は更衣室が使えなくて外で着替えるとかもよくあると思います。そういう常識があるために子供の自分なりを大きく制限してしまう事も起こりやすいのだと思います。もちろん自分なりが制限されている社会だからこそ、この治安が良い社会が生まれました。でも生きづらさは増しました。これも同じく世の中は0か100かではないわけです。生きづらいアダルトチルドレンをたくさん発生させない程度に、でも治安も維持しつつ、「自分なり」が守られる社会を目指しましょうという事です。人権についてもまたいつか漫画で描こうと思っています。

ところで、90年代のミスチルの大ヒット曲にこういう歌詞がありました。

あるがままの心で生きられぬ弱さを誰かのせいにして過ごしてる

Mr.Children「名もなき詩」

これはアダルトチルドレンについての曲ではないですが、「あるがままの心で生きられぬ」はアダルトチルドレンの大きな特徴でもあるんです。ずっと他者を気にしすぎながら生きていたため、自分が本当はどうしたいかがわからなくなってしまうのです。人権が守られていなかったため、「自分なり」に慣れていないのです。そしてこの歌詞の中でそういうような事は「弱さ」だと表現されています。さらにそれを「誰かのせいにして過ごしてる」とも表現されています。それってアダルトチルドレンの生きづらさは自業自得、親のせいにすんなという事にもつながってしまいますよね。そしてこの曲は230万枚売れたのです。まとめると、アダルトチルドレンの人が「ああ自分の生きづらさは自分の弱さのせいだし、子供の頃何だか親をしんどく感じていたけどそうやって他人のせいにしちゃいけないな…」と考えちゃうような、逃げ道ゼロの空気感があったという事です。あったというか今もそうですよね。思い当たる人も多いのではないでしょうか。本当はずっと辛いのに、世の中の空気的にそれは自業自得ってことになってるから、結局自分を責めてしまうような事です。確かに単なるなまけとか卑怯な人に対しては、人のせいにしないで自分でやれ!とお尻をたたく必要があるのですが、アダルトチルドレンのように毒親由来の脳のトラブルで苦しんでいる人の問題とは切り分けて考えるべきです。とは言え普通の人はアダルトチルドレンという存在を知らないので、これらをごっちゃにしてしまうんですよね。それがまたアダルトチルドレンの生きづらさの原因になっていると思います。「誰もわかってくれない」という孤独感は本当に辛いものです。人間は群れで暮らす生き物ですからね。

最後に、アダルトチルドレンからの回復には、それを加速させる環境と距離を置くのが第一です。

でもアダルトチルドレンにとって親から距離を置くのは容易ではありません。なぜなら4ページめで描いた「親から見捨てられたら死んじゃうなあ」という本能があるからです。親から距離を置く事は、親を自分から見捨てるような環境を作ることだからです。本能に逆らう必要があるのです。本来、健康的な親子関係であれば反抗期があって自然と親と距離を置くようになります。これは安心感が健康的に育っているからこそ、巣立ちができるという事なのです。でも安心感が育っていないと巣立ちが怖い=親と距離を置きづらいとなってしまいます。現代は反抗期が無い子供が多いと聞いた事があります。実際にスーパーやなんかで中学生くらいの子供でも親とベッタリ身を寄せている様子、男性ですらも母親と手をつないでいたり服の袖をつかんでいる様子をよく見かけます。それが全部アダルトチルドレンだとは思いませんが、何か自然な部分が変わってきているんでしょうね。男女ともに広い意味で「マザコン」or「ファザコン」社会になっているんだと思います。少なくとも、反抗期が無かったり親離れできないという部分にピンとくる人もいるのではないでしょうか。私の妻もそうでした。今でもそうかもしれません。その流れで、私もだいぶ妻の毒親の毒の影響を受けてきてしまいました。妻の実家に近づく前とは比較にならないレベルで生き辛さを感じるようになってしまいました。そういう意味では私にとっても生涯にわたるテーマなのかもしれません。でも辛いぶん日々考えた事をこうやって漫画やブログにできるので、それがあなたにとっての何かヒントになっていれば嬉しいです。無駄じゃなかったと思えます。

https://note.com/yuki1192/n/nf849135e2217?magazine_key=mb12727671f13

[おまけ]
今回描いた漫画やブログに特に関係が深い漫画をピックアップします。

[鬼滅の刃がなんでこんなに人気なのかに気づいた!]
アダルトチルドレンは世の中に対する安心感が欠落しています。その安心感を与えてくれるのは親です。だからアダルトチルドレン傾向のある日本ではパパ&ママ要素の強いこのアニメが大ヒットしたのかもしれません。

[つっこみに気づいた!]
他者を気にして「自分なり」ができないとは、裏を返せば他者からのダメ出しが多い世の中であるという意味にもなります。ダメ出しの軽いバージョンがつっこみです。日本は「自分なり」を指摘して恥をかかせたり罪悪感を抱かせる流れがありますよね。

[漫画のすすめ]
その一方、「自分なり」は自分の脳内なら自由です。なので脳内と手元で、普段他人を気にしすぎて制限されている「自分なり」を実現するのです。これは誰かの真似をしたり流行を意識したりいいねを多くもらいたいとかを考えてはいけません。その時点で他人を気にしているからです。でもつい気にしちゃいますよね。なので他人を気にする用の作品もまあ作りつつ、それとは別に完全なる自分なりも作るというのが良いのかもしれません。

[ギャグドクロちゃん][ドクロボールちゃん]
日本のアダルトチルドレンを生んでしまいやすい原因の一つに、なんでもギャグにすればOK、正しければ何をしてもいいみたいな精神性もあると思っています。ギャグでいじめたり、正しさで支配するような事です。親子関係においては子供は圧倒的に弱者なので、親から嫌なこと(例えば見た目の事とか)をからかわれても「嫌だけど世の中はそういうものだ」となってしまいます。正しさで支配も同じです。キャパオーバーの塾とか習い事をさせられても「嫌だけど正しい事だから我慢しなくちゃいけない」となります。

ちなみに、「ドクロボールちゃん」で描いたように、いじめをする側もアダルトチルドレン傾向を持っていたりします。家で親からいじめられている事で「いじめ」の存在が当たり前の世界観になって、さらに弱い人をいじめるのです。「攻撃されている妄想」みたいな感覚が身について、実際誰からも攻撃されていないのに反撃する(他者を攻撃する)パターンもあります。毒親もまた毒親に育てられたという傾向も同じ事です。嫌な連鎖はどこかで誰かが気づいて、そこで自発的にいじめをストップして、暮らしやすい世の中にしていきたいですね。

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