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ゼロから始める実家の米づくり9:稲刈り編:台風の影響で翌日に延期

前日の夕焼けに期待しながら目覚めた朝7時、「今日こそ稲刈りができる!これでようやく終われる!」と言う期待は脆くも崩れ去りました。

台風9号の影響により、局地的な大雨に見舞われたため、その日の稲刈りそのものはなくなってしまったのでした。

それでも、準備のできる限り、やるべきことは進めておかなければなりません。

長靴、手袋、洗面タオル、長袖の丈夫めの服を着込み、いざ出陣。

とりあえず、雨が弱く治ったタイミングで、精米時に出るもみクズが飛ばないように、作業場の外にシートを張ります。籾殻が精米時に排出されると、黄金色の籾殻の山が出来上がってしまいます。周囲に散らばっても後の掃除が面倒なため、シートで覆いを作り、そこにため込んでしまおうと言う考えです。

母と二人で作業に当たるも、雨がさらに酷く降り続き、明日に稲刈りできるかどうかの不安も募って来ます。

天気ばかりは仕方がないと気を取り直し、大工であった祖父の工場の片付けを始めました。

もう既に使う者もいなくなった工場ですが、ようやく片付けに手をつけ始めることになりました。

資材を移動させ、トラクター、田植え機を並べて駐車できるスペースを作ることにします。

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前日のコンバインの準備のため、不格好に移動させていた田植え機を、トラクターの横に並べる形で置くことに成功。

ただ、田植え機は燃料(ガソリン)不足のため、定期的に入れてやらないとすぐ動かなくなることが判明しました。バッテリーに関しては、特に問題はなさそうで、定期的にトラクターとともに動かせば、まだまだ働いてくれそうです。

と、そうこう作業を進めているうちに、工場に向けて軽トラがやって来て、中から父の友人であるSさんが出て来ました。


「この雨やと無理やなぁ。明日やな。機械の準備とかは終えたんか?」
「ええ、終えました」
そんな話をしながら、乾燥機の置いてある作業場に向かい、機械の確認を行う。

「そういえば、あの小さい田んぼはどこからコンバイン、入るんや。入り口の土手がなかったら無理やぞ」
と、飛地の田んぼを見にいくことになりました。

「これ、見てみい。稲に行かなきゃならん肥料の栄養を、雑草が吸ってこんなに大きくなってる。この雑草の種が落ちると、またこんな雑草が田んぼの中に生えてくる。除草剤をしていたって、トラクターで耕したって、出てくることもある。だから、種が落ちないように抜いていくんや」

天気は曇りからやや晴れてきており、蒸し暑さが体に染みます。

既に工場の片付けてくたくただった自分は、若干やけくそ気味に雑草むしりに取り掛かることに。

あぁ、田んぼの中心あたりに、その雑草が繁っている一角があるじゃないか。いくしかないよなぁ…。
「こんな雑草も、コンバインにつまらせてしまったら厄介や。コンバインの全部を止めて、それで小一時間取られてしまう」

Sさんの言葉も上の空で聞きつつ、ひたすら抜く、抜く、雑草を抜く。ああ、しんどい。稲を踏み潰さず、雑草は根こそぎ引っこ抜く。こんな丁寧なことを、父はしていただろうか?(後に祖母に尋ねると「していなかった」)

草むしりも一段落し、これだけくたくたになって、ようやく前日の準備が終了だ。


と、今度はJAから軽トラでパレート(木で組まれた台)を運んでくる二人組が。やるべきことが立て込んでくると、来客も多いものだ。


「さて、米はどこにあるんかな?」
と尋ねてくるが、米も何も、まだ稲刈りをしていないのだ。
一緒にいたSさんも田んぼを指差し、
「あっちやあっち!まだ植ってるわ」
と軽口を叩く。


運び込まれたパレートに、米の入った30キロ袋を積み込んでいき、このパレートをJAのフォークリフトが運んでくれるらしい。

作業が進められつつ、JAのスタッフさんとSさんの会話も聞こえてくる。
「今年は、なかなか取れんぞ。植えた時期に雨が多かった。」
「まぁ、出荷の時にいくつ出すかは、手書きで修正してもらって良い。火曜日には、取りに来れるかな?」
「どうやろうなぁ、台風で天気が怪しいが」
「まぁ、それならそれで。別の集荷日にしてもらえれば良いわ」

そんなやりとりを、途中からは母も交えて行い、ようやく稲刈り前日の一連のやりとりが終えることができました。

思えば、父から継いだこの米づくりも、父から人間関係やフロー、システムも含めて受け継いだことになっているのだと、改めて気づきます。

それは、心強い助けであると同時に、しがらみと呼べるものでもあるのでしょう。

この地域一帯にとって、自分は米づくりを行う新世代となったわけですが(他でやっている方は60代〜80代のみなさん)、どんなやり方や工夫、関係性を遺し、何を終わらせていくか等、考えるべきものがまだまだたくさんありそうです。

そんなことを考えつつ、翌日こそ稲刈り…できるのだろうか!?と不安と期待がないまぜになりながら、その日は就寝しました。



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