見出し画像

山と海の繋がりを体感する屋久島の旅4.山と海を繋ぐ、水と風

実家の米農家を継ぎ、仲間たちと自然の循環を大切にする村づくりに取り組んできた中で実現した、今回の屋久島の旅。

標高2000メートル近くの山と海、それらを繋ぐ川が生み出す豊かな生態系と自然の循環を体感する旅の記録ですが、これまで海の循環、山と森の循環とそれぞれを見てきました。

今回の記録は、それぞれのはたらきを振り返りつつ、海と山を繋ぐ川や、水と土中環境に焦点を当てて旅全体のまとめとしていきたいと思います。

旅の最中の過ごし方と、その日々で学んだこと

屋久島の旅の間は、朝6時前の早起きと海に昇る朝日を眺める。そして、海岸へ向かって流木拾いをする、と言うのが朝の習慣になっていました。


旅の拠点であるMoss Ocean Houseは太平洋に面する小高い丘の上にあり、

外に出れば、デッキの向こうに海が広がっていました。

海岸まで降りて流木拾いをしていると、土や砂が押し固められて出来た堆積岩と、火山活動によって出来た花崗岩等の巨石が点在しているのが見えます。

大小様々な岩が点在して出来たここは、山の源流から川となり、あるいは地下水脈として流れてきた淡水と海水の交わる汽水域であり、小さなプランクトンやエビ、それらをエサとする小魚が安全に育つ、浅い海の保育園です。

この浅い海の保育園から海に旅立つ生き物、山へ戻っていく生き物、そこに居続ける水草や海藻類等、様々なあり方が見られます。

源流から流れて来る水は、川の流れという目に見える流れだけではありません。

地下水脈として土中を網の目のように細かく枝分かれした流れ、また、再び地表近くに湧き水として現れる流れ等、縦の流れも存在します。

川の途中で滝などがあれば、その水圧で川底に浸透して地下水脈となる水と、川として流れていく水に分かれ、再び交わることもあるようです。

また、海と山を繋ぐものは水だけではありません。風もまた、海と山を繋いでいます。

この巨木はアコウ(赤榕)。イチジクの仲間で、巨石をガッチリ掴むようにして佇んでいます。

このような巨木は、周囲の大地に根を張り巡らし、土中環境を整えます。さらに、その根の近くに菌糸類が棲みつき根圏を形成することで、微生物の働きにより植物たちが育ちやすくなる環境をつくっていきます。

このアコウが居るのは、先ほどの滝のすぐ近く。海から吹き上げる風が流れこむ場所に位置するそうです。

またこの場所は、海からの風と同時に山の冷たい風も同時に吹き込んでくる、海と山の風の交差点です。

健康的な森は、ご覧のように明るい陽射しが差し込み、木々は互いを遮らないように立ち並び、下草と若木も共生しています。

風の通り道があることで木々や枝が揺れ、年老いた木々や枝は折れ、次の世代を担う若い木が育っていく為の環境が自然に整えられています。

しかし、身近にある森や茂みのほとんどは、野草が鬱蒼と生い茂る暗い場所です。

人の手による舗装や工事により、水脈や風の通り道が断絶。自然のバランスが崩れ、無秩序な競争状態となったり、土砂災害などの形で崩壊することでバランスを取り戻そうとします。

では、私たち人が森に貢献できることは何も無いのでしょうか?

今回の旅では、いくつかのアイデアを得ることができました。

まずは、地形を眺めてみること。山の起伏が谷を作り、その谷に水が集まることで川となり、大きな流れになっていることが見て取れます。

また、明確に川にはなっていないものの、図の左端のように水の走った跡が見られる場所もあります。

土地は、その地形に合った水の流れを自然と形成していくようです。

もっと詳しく土地に触れて見たい方は、地形図の等高線を眺めて見ても良いかもしれません。

私たちが普段目にする川の源流はどのあたりに位置するのか?標高や川上の地形を意識して見始めると、これまでとは違った景色が見えて来るかもしれません。

もう一つ、この旅で学んだアイデアは、山中に無造作に落ちている小枝を使って柵を作り、森の循環をお手伝いすることです。

無造作に落ちている枝を取り除いていくことで、森全体の風通しを良くすることに繋がります。

また、図のように斜面に対し平行に並べることで上方から流れて来る雨水や落ち葉などが柵によって堆積し土壌流出の防止に繋がる他、微生物たちの棲む環境づくりになります。

柵は、その構造上最も土地が安定する形です。

私たち人間は、自然の営みに学び、模倣していくことで森の循環に貢献していくことができるのかもしれません。

後日談〜その土地の実りで繋がる〜

旅のまとめを書き終えてしばらくして、わたしはこの旅のガイドを務めてくださったMoss Ocean Houseの皆さんに向け、地元の伊賀で獲れた米をお贈りすることにしました。(例年、米の収穫と袋詰めした後はご縁ある方々にお贈りしたりしています)

すると、米をお贈りした数日後、さらに屋久島からポンカンが届いたのでした!

『おおもり米ありがとう🙂』のメッセージと、屋久島名物『たんかん』を『ぽ!んかん』と書き換えた段ボール箱に収められ、ポンカンが伊賀に到着したのです。

Moss Ocean Houseのインスタグラムによれば、このポンカンは「つながるポンカン」!モスの上に位置する果樹園のお手伝いがきっかけだったとのこと。

こうして、地域ならではの魅力や土地の流れを引き継いだ作物が、ご縁と感謝で循環してつながっていくことがとても気持ちよく、『あぁ、米作りやっていてよかったなぁ……』と胸の奥底から暖まるような感動を得ていました。

このようなつながりを、今後も全国で丁寧に紡いでいきたいものです。


サポート、コメント、リアクションその他様々な形の応援は、次の世代に豊かな生態系とコミュニティを遺す種々の活動に役立てていきたいと思います🌱