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(後編)断言する、レッドブルは世界一のスポーツ企業になる

前回のNOTEにていかにレッドブルが凄い会社であるか説明すると共に、最後同社がスポーツシーンにどの様な狙いで入ってきたかまではご紹介できたかと思う。

今回は、そんなレッドブルが何故世界一の「スポーツ企業」に今後なるか解説したい。

まず前回のおさらいだが、①レッドブルは飲料メーカーでなく、「マーケティング」会社であり、②元々レッドブル自体の「マーケ」目的でスポーツ界に入ってきた点は覚えておいて欲しい。

さて、そんなレッドブル社だが、スポーツ界に進出してきた効果はとてつもなく大きかったと言える。それは本文最後に記載した、NYレッドブルの例でわかると思う。

1. スポーツ界進出のメリット(おさらい)

レッドブルはスケボー、スノボー、パラシュートといったエクストリームスポーツの大会開催から始まり、F1チーム等のスポンサリングを行うことで、消費者にそれら大会・チームと同じロゴ(レッドブルのロゴ)の入った飲料を飲めばより元気かつアクティブになれるとの印象を作ることが出来た。

だが、本当に凄いのは、上記の結果生まれてきた他のモノだ。

それは、マーケ界でよく使われる「ストーリーテリング」を行うのでなく、「ストーリーパフォーミング」という新たなマーケ形態を発掘したことだ。

2.  ストーリーパフォーミング

スポーツ企業に限らず、通常自社をPR・マーケティングする際、ブランドイメージに沿った有名人を起用したたり、それに沿ったストーリーを作るための撮影をしたりする。

ただ、レッドブルは違うのだ。。

(そもそも飲料メーカーではないが)ここの会社は飲料会社としては極めて珍しく①会社内にメディア制作会社を持っており(Redbull Media)、そのために②自社内で大会や保有チームに関する映像の権利を保有していることから、それらを通じて③自社でストーリーを「作って」しまうことが出来るのだ。

この最たる例が、2012年に行われた、フェリックス・バムガートナー氏による月からの以下スカイダイビング(宇宙ダイビング?)である。なんと小さな宇宙船?を使ってフェリックスを大気圏外にまで運び出し、そこから地上にパラシュートを使って降りるという映像を作ったのだ。

この制作コストにはなんと、USD50Mil(約55億円!!)もしたとのことだが、あまりにインパクトのある映像であり、SNS上で凄い勢いで拡散されたために、専門家によると(注:CNBC参照)その宣伝効果 はUSD6Bil(6600億円!!)にも及ぶとされている。。。

そう、レッドブルは自社製品のイメージを上げるために「それに沿った動画を作る」のでなく、自社メディアチームと自社保有のスポーツチーム・選手が同社イメージ・価値を勝手に爆上げしていくのだ。

3.  この先にあるもの

レッドブルは上記の通りスポーツコンテンツのキモとも言えるコンテンツ権利を多数保有しており、またそれを作るメディア部門も内包している。これらは元々は自社の製品であるレッドブル飲料を売るために行われていたが、今後はそのメディア・コンテンツ自体がサービスとなる可能性が高い。

というのも、レッドブルはこれまで毎年増収増益を繰り返してきたが、近年は世界的な健康意識の高まりにより売上の増加に陰りが見え始めている。(注:筆者もレッドブル愛飲者だが、その当分の多さや、カフェイン含有量を見ると、お世辞にもこれが健康的な飲料とは言えない)
その為、これまで創業者であるマテシッツが大事にしてきた「レッドブル飲料」「売ること」のみに特化するという選択と集中の極みをいった一本足打法からの変革が求められる。

そこで活躍すると思われるのが、同社が既に多くの知見と経験を有するスポーツ業界なのだ。

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何せ彼らは、上述のメディア制作と放映のビジネスに加え、チームのオーナーシップ、契約マネージメントと言ったスポーツビジネスにおける極めて大事な機能を全て自社内にて保有しているのだから。

その具体的例として思い当たるのが、同社保有のサッカーチームだ。
欧州の2チーム(オーストリア、ドイツ)に加え、ブラジル、そして米国NYCにもチームを持っているのだ。

その結果、選手をブラジルで育て、その後オーストリアに移籍させて高いレベルでプレーさせた後に、チャンピオンズリーグに出場するドイツのチームに移籍させることもできるのだ。しかも全て自社内で起きている為、通常発生する移籍コストを抑えてだ。

更には、選手の後期には、米国NYCのチームに移籍させることもできる。しかもその選手のオフショットや、チーム関連コンテンツを全て自社のプロダクションで作り、チーム・選手の価値をレッドブル飲料のように爆上げすることが可能である。

現にNYレッドブルズは、2006年にレッドブルが購入した時は僅かUSD25Mil(約27億円)だったのが、今ではUSD290Mil(約310億円)にまで資産価値が上がっているので。。。よくスタートアップ界隈で言われるいわゆる10Xのリターンである。

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結論

これは別の記事でも書いたが、日本ではPL目線で事業の良し悪しを判断する企業・個人が多いが、米国ではPL以上にEquity価値(BS価値)を大事にする企業が多い。今回のレッドブルのスポーツビジネスのケースでも、最初は飲料のプロモ目的な明らかな赤字事業だった。

ただ、そこで得た知見を基に、元来レッドブルの強みだったマーケティング力を駆使することで、現在では所属選手、チーム、大会のいずれもの「価値」を大幅に向上させており、同社PLへはあまり反映されていないかもしれないが資産価値は明らかに大きくなってきている。

スポーツビジネス界にかぎらず米国でトレンドとなっている①「Equityビジネス」マインドが会社内に根付いており、また②スポーツ関連事業の資産価値を爆上げする方法(コンテンツ制作、メディア権利)を内包しており、さらには③その爆上げ対象(チーム、大会、選手)を多数抱えている事から、この会社は10年以内にスポーツビジネス界の頂点に立っている可能性が高い。

今後レッドブルには大注目だ。


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