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あの日の私から音楽のタイムカプセルが届いたおはなし。

私は高校生の頃に好きだった先輩の影響で
BUMP OF CHICKENにハマったことがあった。

とはいえ浅く広く曲を聴く程度だったけれど。

BUMP OF CHICKENの曲は
ギターの音色が印象的なものが多くて
とても心地よい曲ばかりだ。

私が当時ずっと聴いていた
思い入れのあるアルバムがある。

それは「COSMONAUT」

宇宙飛行士のジャケットが印象的なアルバムだ。

その中でも「魔法の料理〜君から君へ〜」
という曲にとっても思い入れがある。

大きくなった”君”から小さな”君”に宛てた曲。

この曲の歌詞のなかで
繰り返し伝えてくる言葉がある。


”君の願いはちゃんと叶うよ
楽しみにしておくといい”


私は当時この歌詞を聴いて涙した。

現実すらまともに見られずに
朧げな未来に不安を抱きながら
恐る恐る歩みを進める高校生のわたし。


”いつか全部わかる ずっと先の事
疑いたいのもわかる 君だからわかる”


未来の”君”は全部わかってる。
今のわたしが悩んでいることも。
歩みを進めることが怖いことも。


”君の願いはちゃんと叶うよ
怖くてもよく見てほしい
これから失くす宝物が
くれたものが今の宝物”


”わたしなんか”に何ができるのだろう。
そうやって否定してばかりだった。
きっと今以上になにかを失うことが怖かった。
一人でいることが怖かった。

それでも漠然と信じたかった。
まだ見ぬ未来にいる大人の”君”を。


あれからわたしは大人になった。
色々あったけれど
今は親元を離れて一人で自分のやりたいことを
やらせてもらっている。

一人暮らしを始めたばかりの頃は
寂しくて怖くて仕方がなかったけれど
今は自分の家が一番落ち着ける場所になった。

気心知れる友人もできた
信頼できる先輩も後輩もできた。

そして曲の好みも変わった。

最近はすっかり韓国のアーティストにハマって
韓国の音楽ばかりを聴いている。


そんなある日
たまたまJ-POPの2000年代のヒッツを
作業BGMとして聴いていた時のこと。

プレイリストにあった
「天体観測」が流れてきたとき
ふと過去のアルバムを聴いてみたくなって
「COSMONAUT」に再びたどり着いた。

(そういえば学生の頃好きだったなぁ・・・)

高校生のころなんてもう10年前の記憶。
あの頃のわたしの記憶はかなり薄れている。

「三ツ星カルテット」から始まり
順番に聴いていって
7番目に流れる曲が
「魔法の料理〜君から君へ〜」

それが流れた途端に
すっかり忘れかけていた過去のわたしが
鮮明にフラッシュバックして
涙が止まらなくなった。


あの日と同じように泣いていた。

わたしの人生の歩みを
そのまま歌っているかのようだったから。


わたしにとっての”魔法の料理”
それは母の作る手料理。

一人暮らしを始めて数ヶ月後に
久しぶりに実家に帰って母の料理を食べたとき
なんだか急に込み上げるものがあって
目の前が霞んだ専門学生の頃。

”怖かったパパが本当は優しかったこと”

わたしの父さんは
いつも仕事で家を空けることばかりで
わたしが寝ているときに帰ってきて
寝ているときに仕事に行く。
怖かったってわけじゃないけれど
小さい頃はあまり話をしたことがなくて
仲が良かった記憶はないけれど
大人になってから
お酒を酌み交わすほど仲良くなった。

”面白いママが実は泣く時もあること”
”おばあちゃんが君の顔を忘れたりすること”

母さんはいつも優しくて
ちょっとおっちょこちょいで面白いところがある。
大きく感情表現をするタイプじゃないし
泣いたところも見たことがない。
そんな母さんの涙をはじめて見たのは
おばあちゃんのお葬式だった。
今でも鮮明に覚えている。

そんなおばあちゃんは
生前に認知症を患っていて
わたしの顔と名前を忘れてしまった。
それでもわたしの方から
「孫の〇〇だよ」と名乗ると
笑顔で話を合わせてくれる
母と一緒で優しいおばあちゃんだった。


あの日のわたしが大人になるまでを
まるで予言していたかのような歌詞で
走馬灯のように記憶を思い起こされるような
不思議な感覚になった。


わたし、ちゃんと大人になったんだな。

これまで色々あったよ。
たくさんのことを経験して学んで
泣いて泣いてたまに笑ってまた泣いて
それでもめげずに立ち上がって
大人になったよ。

あの日の”君”を嫌いになったこともあった。
というか大嫌いだった。

でも今は違うよ。
”君”がいなきゃ今はないんだから。


”君の願いはちゃんと叶うよ”

それは今のわたしが小さな”君”に歌っているようで
小さな”君”がわたしに歌っているようにも聞こえる。

もしかしたら
今よりもっと未来にいる”君”かもしれない。


”楽しみにしておくといい
これから出会う宝物は宝物のままで古びていく”


失ったものもあるけれども
そのぶん得たものも多い日々だった。

これからはもっと一つ一つの出会いを大切に
宝物たちと一緒に歳を重ねて古びていきたい。

どれだけ努力したって手に入らない
宝物もきっとあるだろう。
それでもいつか手に入るのだと
願い続けることが生きる糧となるだろう。

楽しみにしておこう。
もっと先で待っている未来の”君”を。


由佳

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