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<ラグビー>ザ・ラグビーチャンピオンシップ(オールブラックス対スプリングボクス、ワラビーズ対アルゼンチン)結果

オールブラックス19-17スプリングボクス

記念すべき100年目の通算100試合となる対戦。ラグビーファン,そしてオールブラックスファンとしては,まさに醍醐味といえる特別な試合。

これに先立ち,伝説のオールブラックスFLワカ・ネイサンが,9月24日に逝去した。1940年7月8日生まれの81歳だった。オークランド代表及びマオリオールブラックスとして活躍する一方,オールブラックスのFLとして14キャップ,37試合にプレーした。1962年5月16日のベイサーストで行われた対中央西地方代表戦でデビューし,同年のブリスベンのワラビーズ戦で初キャップを得た。1967年のトウィッケナムで行われたバーバリアンズに11-6で勝利したゲームが最後となった。1962年と1966年に最優秀マオリ選手賞を受賞している。

1963~64年の英国・フランス遠征で活躍し,指の骨折を乗り越えて6試合をプレーした。アイルランド戦は欠場したものの,ウェールズ戦でプレーして6-0の勝利に貢献した。これは,オールブラックスがカーディフアームズパーク(現プリンシパリティースタジアム)での初勝利となった。その後ラネリーとの22-8で勝利したゲームで顎を骨折し,全治6ヶ月と診断されたが,ワイヤーでつないだ状態のままイングランドでプレーしたものの,引き分けた。そしてフランスで3連戦を戦い,最後のバーバリアンズ戦を36-3で勝利した。

1964~65年は怪我のため代表から外れたものの,1966年には,来征したブリティッシュアンドアイリッシュ・ライオンズと対戦して4連勝した。しかし,再び顎を骨折し,遠征した先のバーバリアンズとのゲームが最後となった。バーバリアンズ及びイングランド代表のワレス・レイバーンは,「ネイサンは,黒豹のような世界一のルースFW(FW3列)だった」と称えている。また,元オールブラックス監督のフレッド・アレンは,「ワカ・ネイサンは,私がこれまで見た中では,タックル後のボールに対して最も素早いプレーをする選手だった。常に冷静で,鷹のような目と手を持っていた。・・・彼は地面のボールに対する天才だった」と絶賛している。

現在の選手で言えば,リッチー・マコウとアーディ・サヴェアを足して2で割ったような,最高のオープンサイドFLだったと言われている。そのため,この試合は,オールブラックスにとってワカ・ネイサンへの追悼試合となり,また偉大な先達として尊敬しているアキラ・イオアネ,アーディ・サヴェア,ルーク・ジェイコブソン,イーサン・ブラカッダーにとって,餞となる試合でもある。


オールブラックス8番NO.8ルーク・ジェイコブソンが食あたりで欠場。NO.8には7番FLアーディ・サヴェアが移り,7番FLには20番FLイーサン・ブラカッダーが上がって,20番にはホスキンス・ソツツ(7キャップ)が入った。先週,ブラインドサイドFLとして素晴らし活躍をしたブラカッダーにとって,今週はオープンサイドFLとしての仕事ぶりが評価されることになる。また,FW&BKの万能スキルを持つソツツが,スプリングボクス相手にどんなプレーをするのかが楽しみになった。オールブラックスは,世界トップレベルの選手が30人以上いる。誰が先発しても,誰がプレーしても世界一のチームだ。

試合前に,逝去したワカ・ネイサンへの黙祷。オールブラックスにとって,100周年の100試合だけでなく,さらに大きなモチベーションが加わった。オールブラックスは,もちろんカパオパンゴ(Kapa o Pango)。特別な試合に特別なハカ。リードするのは,マオリの伝統的な入れ墨が輝くTJ・ペレナラしかいない。

3分,オールブラックスが,2番HOコーディ・テイラーがこぼれ球を拾って前進。サポートした14番WTBウィル・ジョーダンがトライ。15番FBジョルディ・バレットのコンバージョン成功で,7-0。
6分,スプリングボクス9番SHファフ・デクラークのボックスキックを,オールブラックス11番WTBジョージ・ブリッジが,自陣22m内でミスキャッチ。これを14番WTBスブ・ヌコシに拾われてそのままトライ。10番SOハンドレ・ポラードのコンバージョン失敗で,7-5。
11分,ポラードがPG,7-8。
14分,ポラードがPG,7-11。
31分,オールブラックスが,10番SOボーデン・バレットのインゴールへのキックを,FBジョルディ・バレットがキャッチしつつ後ろにタップするが,サポートした6番FLアキラ・イオアネが取れず,ノートライ。
32分,ジョルディ・バレットがPG,10-11。
36分,スプリングボクス11番WTBスブ・ヌコシが,自陣ゴール前で故意のノッコンをしてTMOの結果,シンビン。3対1の状況から見ればペナルティートライでも良いと思う。
36分,ジョルディ・バレットがPG,13-11。

前半,オールブラックス13(1T1C2P)-スプリングボクス11(1T2P)
1番PRジョー・ムーディのスクラムが安定していない。また,11番WTBジョージ・ブリッジのハイボール処理に不安が残る。一方,15番FBジョルディ・バレットのハイボール処理は安定している。前半最後の時間帯に,シンビンの数的有利な状況でトライを取れなかったことが残念。スプリングボクスは,予想通りキックとモールだけの戦術を取っている。戦前の予想からは,前半を2点差で終えられたことは,スプリングボクスにとって評価される一方,オールブラックスとしては,イージーミスや不要な反則もあり,もっと得点できても良かった。やはり,伝統の一戦らしく,一方的なゲームにはならないのだろう。

57分まで,オールブラックスが,スプリングボクスのゴール前ラインアウトのトライチャンスを得るが,ラインアウトを取れずに終わるのが,数回続く。その一方,スプ璃軍具ボクスは,ひたすらボックスキックを蹴って,オールブラックスの反則を待つ戦術に固執している。
58分,ポラードがPG,13-14。
61分,ジョルディ・バレットがPG,16-14。
62分,スプリングボクス8番NO.8デュアン・ファルミューレンが,オールブラックスSOボーディ・バレットがハイボールをキャッチする際に,空中でタックルしたが,PKのみの判定。
67分,ポラードがPG,16-17。
78分,ジョルディ・バレットが,約45mのPG成功,19-17。

後半,オールブラックス4(2P)-スプリングボクス6(2P)
合計,オールブラックス19(1T1C4P)-スプリングボクス17(1T4P)

オールブラックスは,ラグビーがエンターテイメントなスポーツであることを証明する,重要な役割をどうにか果たした。しかし,スクラムとラインアウトが安定せず,1トライしか取れなかったことは反省材料となった。スプリングボクスは,キックとディフェンスに徹したゲームで,接戦と演じて見せた。これはスプリングボクスの維持と,やはり長い伝統のなせるものだろう。

ノーサイド直前のジョルディ・バレットのスーパーPGで勝利を得たものの,それまでの数回あったゴール前でPGの3点を得られるときに,トライを取りに行って失敗したのは,結果論からすれば批判されるだろうが,ラグビーの発展という重要な義務を負ったオールブラックスとしては,最初からPGで得点を刻むゲームは選択できなかった。

だから,キャプテンのアーディ・サヴェアの選択はラグビーの発展という観点から正しいものだったと思う。しかし,ゴール前ラインアウトを繰り返しスチールされたことに対するリアクションは,やや不足していたのではないか。また,相手がハイボールを蹴ってくるのが想定通りであったのだから,もっとカウンターアタックを成功させなければならなかった。この辺りも次戦に備えての反省材料だろう。

次は,SOにリッチー・モウンガ,13番CTBにアントン・リエナートブラウンが戻ってくることが期待される。この場合,モウンガの速いパス回しとリエコ・イオアネを11番WTBにできることで,アタックの幅が広がる。また,イーサン・ブラカッダーは,FW3列のポジションをほぼ獲得できたのではないか。そして,次は,6番ブラカッダー,7番サヴェア,8番ルーク・ジェイコブソン,20番ホスキンス・ソツツになると予想する。

また,スプリングボクスが,オールブラックスの選手に対して空中でのタックルを繰り返したことは,来週の再戦に向けて,裁定委員会から指摘される可能性が高いと思う。つまり,スプリングボクスが健闘できたのは,反則プレーが容認されてからだととも言える。しかし,これもスプリングボクスの「伝統」と言えば伝統であり,スプリングボクスとの対戦が「フィジカル」と言われるのは,正にラグビーのゲームではなく,ボクシングのような殴り合いに近い戦いが行われることを意味している。

少なくともこの戦いにオールブラックスは劣勢になったので,次戦は,ブラカッター以外にもっと戦える(ケンカができる)FWの奮闘が望まれる。ラグビーはボールゲームだが,やはり「ルールのあるケンカ」(「スクール★ウォーズ」)でもあるのだ。


ワラビーズ27-8アルゼンチン

メンバーを紹介。
ワラビーズ:( )内はキャップ数。
ジェイムズ・スリッパ-(108)、フォラウ・ファインガア(19)、タニエラ・ツポウ(33)、アイザック・ロッダ(28)、マット・フィリップ(17)、ロブ・レオタ(1)、マイケル・フーパー(113,キャプテン)、ロブ・ヴァレティニ(12)、ニック・ホワイト(41)、クエード・クーパー(72)、マリカ・コロイベテ(41)、サム・ケレヴィ(36)、レン・イキタウ(7)、アンドリュウ・ケラウェイ(7)、リース・ホッジ(51)
(リザーブ)
フェレティ・カイツウ(2)、アンガス・ベル(10)、トム・ロバートソン(25)、ダーシー・スワイン(7)、ピート・サム(13)、テイト・マクダーモット(10)、ジェイムズ・オコナー(55)、ジョーダン・ペタイア(12)

アルゼンチン:
ファクンド・ジジェーナ、フリアン・モントーヤ(キャプテン)、サンチャゴ・メデラーノ、マティアス・アレマンノー、トマス・ラヴァニーニ、フアンマルティン・ゴンザレス、マルコス・クレメール、パブロ・マテーラ、ゴンザロ・ベルトラノウ、サンチャゴ・カレーラス、エミアーノ・ボッフェリ、サンチャゴ・ショコバレス、ルチオ・チンチルナ、サンチャゴ・コルデーロ、フアンクルーズ・マリア
(リザーブ)
サンチャゴ・ソチノ、ロドリゴ・マルティネス、エンリケ・ピエレット、グイド・プッティ、ホアキン・オヴィエド、ゴンザロ・ガルシア、ドミンゴ・ミオッティ、マテオ・カレーラス

ワラビーズのデイヴ・レニー監督は、先週のスプリングボクス戦勝利から,怪我人などによるもの以外は選手交代のないメンバーとしてきた。6番FLラクラン・スウィントンに代えて若いロブ・レオタを入れる。また,怪我でしばらく欠場するFBトム・バンクスに代えて,リース・ホッジを入れた。リザーブでは,ホッジが15番FBで先発することもあり,22番には怪我から復帰の本来先発SOを担っていた,ベテランのジェイムズ・オコナーが戻ってきた。後半は,SOよりもFBとして交代出場する可能性が高い。

レニー監督は,「アルゼンチンは,不慣れなFBをするリース・ホッジを狙ってハイボールを蹴ってくるだろう」,「どのチームと対戦しても,我々はハイボールに対処しなければならない」と用心している。

なお,タウンズビルでの初のワラビーズのテストマッチということもあり,今シーズン初めてのテストマッチ用ジャージ(ファーストネーションのバージョン)を着用する。

アルゼンチンのマリオ・レデスマ監督は,先発はまったく変更のないメンバーとなった。リザーブは,17番PRをカルロス・ムッツィオからロドリゴ・マルティネスへ,20番LOをトマス・レザーナからホアキン・オヴィエドに,23番BKをマティアス・モローニからマテオ・カレーラスに,それぞれ入れ替えた。またこの3人は,それぞれアルゼンチン代表初キャップとなる。メンバーから判断すれば,今後のテストマッチを見越して,経験値を積ませ,層を厚くする意向が見られる。

レデスマ監督は,「ワラビーズのクエード・クーパー,マイケル・フーパー,サム・ケレヴィ,マリカ・コロイベテは,皆好調であり,またそれぞれのポジションで最高の選手でもある」と述べている,

3分,アルゼンチン11番WTBエミリアーノ・ボッフェリがPG失敗。
5分,ワラビーズが,12番CTBサム・ケレヴィのラインブレイクからつないで,15番FBリース・ホッジがトライ。10番SOクエード・クーパーのコンバージョン成功で,7-0。
18分,ワラビーズが,ゴール前でピック&ゴーで持ち出した12番CTBサム・ケレヴィがトライ。クーパーのコンバージョン成功で,14-0。
21分,ボッフェリがPG,14-3。
32分,クーパーがPG,17-3。

前半,ワラビーズ17(2T2C1P)-アルゼンチン3(1P)
オールブラックス対スプリングボクスの後では,申し訳ないが,どうも盛り上がらない。やはり,試合の順番としては逆が良かったと思う。

43分,アルゼンチン2番HOフリヤン・モントーヤが,ラインアウトのモールからトライ。ボッフェリのコンバージョン失敗で,17-5。
52分,ボッフェリがPG失敗。
55分,アルゼンチン7番FLマルコス・クレメールが,反則の繰り返しでシンビン。同じ対応をしていれば,スプリングボクスにも同様にシンビンが出ていて不思議でない。やはり,イングランド人のルーク・ピアースは,スプリングボクスに対してシンビンやレッドカードを出すことで,試合に影響することを控えたように思う。この腰が引けたレフェリングでメリットを得たのは,スプリングボクスだったようだ。
59分,ワラビーズ22番SOジェイムズ・オコナーがPG,20-8。
69分,ワラビーズ14番WTBアンドリュウ・ケラウェイが,22番SOジェイムズ・オコナーからのパスを受けてトライ。オコナーのコンバージョン成功で,27-8。

後半,ワラビーズ10(1T1C1P)-アルゼンチン5(1T)
合計,ワラビーズ27(3T3C2P)-アルゼンチン8(1T1P)

申し訳ないけど,あまり感想がない。ワラビーズに,SOジェイムズ・オコナーが復帰したのが,朗報ということぐらいしかない。

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