見出し画像

<ラグビー>2023シーズン、インターナショナルラグビー関連等(8月第二週)

(どうでもよい「話の枕」です。関心ない方は飛ばしてお読みください。)

 以前書いたかも知れないが、母方の祖父母の家は、戦中まで江東区大島に住んでいたが、3月10日未明の東京大空襲で焼死は免れたものの、家は全焼した。その焼け跡にバラックを建てて住めば、債権者の大半が亡くなっていたのだから、今頃は立派な地主様だったのだが、祖父の「何年経っても、日本は復興なんかしねえ!」という見込み違いで、戦後は亀戸駅近くに一時住んだ後、葛飾区新小岩(今はアーケードになっている辺り)へと転居を繰り返した。

  戦後の新小岩には、進駐軍が来る売春宿があり(私が小学校に入った頃は、そこが廃屋になっていた)、ある時黒人米兵が軍用毛布を持って、突然家に来たそうだ。そして、「Understand?(アンダスタンド?わかりますか?)」を繰り返し言った。家のものはもちろん英語がちんぷんかんぷんだったから、結局この米兵の毛布を売って女を買う金を得ようという目論見は失敗した。しかし、その場にいた当時16歳くらいの長男(母の長兄、私の叔父)は、その後酔っぱらうと「アンダスタン?」という言葉を際限なく口に出すようになった。よほど強烈な印象だったのだろう。

  その長男(叔父)は、山本五十六を崇拝する軍国少年だったのだが、戦後国鉄に就職したところ、まもなくうつ病に罹って離職し、しばらく無職の生活をしていたが、短命で亡くなった。この叔父さんも、戦争の被害者だったのだと思う。


1.テストマッチの結果

イングランド19-17ウェールズ

 ウェールズのワレン・ゲイトランド監督は、先週の20-9の勝利を受けて、初キャップのジョー・ロバートを13番CTBで先発させる。キャプテンは、HOのドウィ・レイクが務める。14番WTBジョシュ・アダムズは50キャップを達成する。NO.8は先週初キャップを得た、NZ人テーン・プラムトリー(父ジョンは、オールブラックス等のコーチを経て、現在南アフリカのシャークス監督)が先発する。FBリアム・ウィリアムスは怪我で長く欠場していたが、2021年以来の代表戦となる。SOはダン・ビガーがリザーブに下がり、オウウェン・ウィリアムスが先発する。

 イングランドのスティーヴ・ボーズウィック監督は、先週のゲームから先発11人をローテーションさせた。SOにはキャプテンのオウウェン・ファレルを先発させ、NO.8には久々になるビリー・ヴニポラを入れた。ベテランを投入した結果、最近では最多となる総キャップ数1,067の経験値あるメンバーになっている。

 試合は、前半7分にウェールズにシンビンが出た後、今度は31分にイングランドにシンビンが出たこともあり、イングランドが6-0とリードして前半を終える。後半は、ウェールズが反撃に出て、45分までに9-10と逆転する。その後イングランドは57分、59分、63分と3連続してシンビンが出てしまい、特に63分のSOオウウェン・ファレルの頭部へのタックルはレッドカードとなり、イングランドは、一時は12人で戦うことになってしまった。

 数的有利となったウェールズは、64分にペナルティートライを奪って9-17とリードを拡げる。しかし、67分に数的不利なイングランドがモールからトライを取って16-17と1点差に迫り、同時にウェールズにシンビンが出てしまう。これで数的不利が少し緩和されたイングランドは、74分に逆転のPGを決めて、傷だらけの勝利をかろうじて得た。74分にはウェールズに2枚目のシンビンが出たが、この結果イエロー5枚,レッド1枚という、まるでプロレスのような大荒れの試合となってしまった。

 辛勝したイングランドには、勝利の代償が出てしまった。SHジャック・ファンポールトヴィユが足首の怪我で退場し、RWC出場が危ぶまれている。さらに、ファレルのレッドカードは、自身の4回目かつ今年2回目のカードとなったため、かなり憂慮される事態となった。アーリータックルによる前回は、4週間の出場停止処分となったが、今回は反則の多いプレー履歴から軽減措置が取られない可能性が高く、最大6週間の出場停止処分になると見られている。そのため、ウォームアップマッチのアイルランド、フィジーに加え、RWCプールマッチのアルゼンチン、日本、チリ、サモアの各試合に出られないことが予想されている。

 一方の惜敗したウェールズは、HO兼キャプテンのダウィ・レイクが膝の怪我で退場したことが大きく影響している。ウェールズのHOは、既にケン・オウウェンスが怪我でRWC不出場となっている上に、ライアン・エリアスも怪我をしているため、トップ3人のHO全員がプレーできない状況になってしまった。そのため、ウェールズはRWCに向けて赤信号が灯ることとなった。

フランス30-27スコットランド

 フランスのファビアン・ガルティエ監督は、スコットランドとの再戦に際して、先発13人をローテーションしてきたが、SHアントワーヌ・デュポンをキャプテンにするなど、要所毎にベテランを配置している。また、リザーブをFW6人、BK2人にしている。

 スコットランドのグレガー・タウンゼント監督は、先発6人を入れ替え、6番FLに戻ったジェイミー・リッチーをキャプテンに指名した。フランス同様に、リザーブをFW6人、BK2人にしている。

 試合は、27分にスコットランドにシンビンが出たこともあり、前半をフランスが13-10とリードする。後半に入り、フランスが連続トライをして43分までに27-10とリードを拡げるが、61分、68分、74分とスコットランドが3連続トライをして、27-27の同点に追いつく。しかし、78分にフランスがPGを入れて、どうにかスコットランド相手の連敗を逃れた。

 両チームともに、反省材料とポジティブな材料がともにあった試合となったが、総じて格下と見られているスコットランドが、フランス相手に接戦を繰り返したことで、RWCに向けて順調に調整を進めている印象となった。

ジョージア56-6ルーマニア

 やはり、ジョージアは強い。また単純な力勝負をしていては、ジョージアに勝てない。

トンガ28-3カナダ

 カナダの凋落は著しい。トンガはこの勝利で弾みをつけたい。

ポルトガル46-20アメリカ

 元フランス代表WTBパトリス・ラジスケが指導するポルトガルが強化されている。

チリ26-28ナミビア

 チリ、ナミビア、ウルグアイはほぼ同じくらいの実力に見える。

2.RWCの各国スコッド発表等その他のニュース

(1)オールブラックスのRWC用スコッド発表

 オールブラックスのRWC用スコッド33人(FW18人、BK15人)が、元オールブラックスのキャプテンであるリッチー・マコウによって発表された。総キャップ数は1,493、33人の平均は45.2キャップで、オールブラックス史上最多のRWC用スコッドの総キャップ数となった(優勝した2015年のときは、31人のスコッドで、総キャップ数は1,484、平均は47.8キャップ)。

 今回のRWCが4回目となるのは、145キャップのLOサムエル・ホワイトロックで、次いで3回目のRWCとなるのが、HOコーディ・テイラー、HOダン・コールズ、LOブロディー・レタリック、FLサム・ケーン、SHアーロン・スミス、SO/FBボーデン・バレットの6人。2回目のRWCとなるのが、PRオファ・トゥンガファシ、PRネポ・ラウララ、LOスコット・バレット、FLシャノン・フリッゼル、NO.8アーディ・サヴェア、SOリッチー・モウンガ、CTBアントン・リエナートブラウン、CTBジョルディ・バレット、CTBリエコ・イオアネの9人となっている。

 キャップ数最多のサムエル・ホワイトロックの145に次ぐのは、118キャップのアーロン・スミス、115キャップのボーデン・バレット、103キャップのブロディー・レタリック、さらに50キャップ以上は、オファ・トゥンガファシ、ダン・コールズ、スコット・バレット、サム・ケーン、アーディ・サヴェア、ジョルディ・バレット、アントン・リエナートブラウン、リエコ・イオアネと8人いるなど、非常に経験値の高い構成となっている。キャプテンは、FLサム・ケーンが引き続き務める。

 最年長はダン・コールズの36歳、最年少はSHキャメロン・ロイガードの22歳で、平均年齢は27歳と標準的だ。なお、RWCのスコッド外となったが、怪我人対応として、HOジョージ・ベル、FLサミペニ・フィナウ、SHブラッド・ウェバーが帯同する。

 スコッドは、この後ネピアで三日間のトレーニングキャンプをした後、ドイツに飛びトレーニングを重ねた後、べースキャンプ地となるフランスのリヨンに移動し、最後のウォームアップマッチとなる25日にトウィッケナムで行うスプリングボクス戦に備える。

 総じてザ・ラグビーチャンピオンシップのスコッドから、ほとんど変更のないメンバーとなった。長い怪我の後最近州代表の試合で復帰したCTBデイヴィット・ハヴィリは、ブライドン・エンノーが怪我でRWCに行けなくなったため、これまでの実績を評価されてスコッド入りをしている。

 また、先週のワラビーズ戦でプレーした選手のうち、WTBショーン・スティーヴンソン、CTBダラス・マクロード、CTBブライドン・エンノー(膝の怪我)、FLサミペニ・フィナウ(注:バックアップメンバーとして入る)がスコッド外となった。さらに、オールブラックスXVで良いプレーを見せた、SHブラッド・ウェバー(注:バックアップメンバーとして入る)とフォラウ・ファカタヴァもスコッド外となった他、LOジョシュ・ロードも選外となった(その後25日のスプリングボクス戦の追加スコッドに呼ばれた)。

 なお、レタリックは膝の怪我のため、復帰まで6週間かかると診断されている。そしてRWC開幕戦まで5週間となっているので、初戦のスプリングボクス戦には間に合わない。しかし、LOにはホワイトロックとスコット・バレットがおり、リザーブにツポウ・ヴァアイがいる他、緊急時にはシャノン・フリッゼルをLOに起用することができるので、心配ないとしている。

(2)イングランドのRWC用スコッド発表

 イングランドのスティーヴ・ボーズウィック監督は、RWCに向けたスコッド33人(FW19人、BK14人)を発表した。通常よりFWを増やし、BKを減らした編成となっている。平均40キャップと経験値の高いことを誇るスコッドには、最近代表から外れていたNO.8ビリー・ヴニポラ、CTBジョー・マーチャントが復帰した一方、CTBヘンリー・スレード、CTBガイ・ポーター、NO.8トム・ウィリス、NO.8アレックス・ダンブランド、WTBジョー・ゾカナシガ、WTBジョニー・メイらが選外となった。

 キャプテンは、4回目のRWCとなるSOオウウェン・ファレルが務め、バイスキャプテンは、PRエリス・ジェンジ、FLコートニー・ロウズが指名された。SHベン・ヤングスもファレル同様に4回目のRWCとなる。

(3)アルゼンチンのRWC用スコッド発表

 アルゼンチンのオーストラリア人監督マイケル・チェイカは、RWC用スコッド33人(FW18人、BK15人)を発表した。ザ・ラグビーチャンピオンシップでプレーしたメンバーを中心にしたスコッドとなっており、キャプテンはHOフリアン・モントーヤが務める。

 今回選外となった選手はBKに多く、WTBサンチャゴ・コルデーロ、WTBサバスティアン・カンセリエール、WTBバウティスタ・デルガイ、CTBマティアス・オーランドー、FLルーカス・パウロス、PRサンチャゴ・メデラーノなどとなっている。

 アルゼンチンは、同時にアルゼンチンXVチームも作って、18日にウルグアイ、26日にチリと対戦する。正代表の選手に怪我などが発生した場合は、このアルゼンチンXVチームから補充する体制が整備されている。

(4)南アフリカ・スプリングボクスのRWC用スコッド発表

 南アフリカ・スプリングボクス監督のジャック・ニーナバーは、RWC用33人(FW19人、BK14人)のスコッドを発表した。なお、南アフリカチームの実権は、監督の上にいるディレクターオブラグビーのラッシー・エラスムスが握っているので、事実上エラスムスの選んだ33人と言える。

 怪我または回復途上のため、SOアンドレ・ポラード、CTBルッカンヨ・アーム、FLルード・デヤーガーが外れているが、この3人は後述するバックアップメンバーの9人に入っている他、ポラードとアームはウォームアップマッチ(8月19日ウェールズ戦、8月25日オールブラックス戦)用メンバーとして渡英する5人に入っている。この渡英する5人は、SOポラード、CTBアーム、HOジョセフ・ドウェバ、PRトーマス・デュトイ、FLジャンルック・デュプレッシー。残る4人のバックアップメンバーは、FLデヤーガー、SHハースケル・ヤンチース、NO.8エヴァン・ロス、PRゲルハルト・スティーンカンプ。

 スコッドで注目されるのは、HOが2人だけとなっていることと、SOがマニー・リボックとFBが本職のダミアン・ウィルムゼの2人になっていることだ。そして、SOのカバーを含めて、SHはファフ・デクラーク、グラント・ウィリアムス、ジェイデン・ヘンドリクス、コブス・ライナッハの4人と通常より1人多く選んでいる。おそらく、リボック及びウィルムゼがプレーできなくなった場合は、デクラークがSOに入ることを想定したものと思われる。また、元アイルランド代表(2091年はアイルランド代表でプレー)LOジャン・クラインが、WRの特例規定により選出されている。

 スコッドの内、最多キャップはLOエベン・エツベスの112で、この他50キャップ以上は、FBウィリー・ルルー、CTBダミアン・デアレンデ、CTBジェシー・クリエル、NO.8デュアン・ファルミューレン、FLフランコ・モスタート、FLシヤ・コリシ、FLピータースティフ・デュトイ、HOボンギ・ムボナンビ、HOマルコム・マルクス、Pトレヴァー・ニャカネ、PRフランス・マルアーブ、PRスティーヴン・キッショフと12人いる。

 3回目のRWCとなるのは、マルアーブ、ニャカネ、エツベス、デュトイ、コリシ、ファルミューレン、デアレンデ、クリエル、ルルーの9人。また、2回目となるのは、2019年にアイルランド代表としてプレーしたクライン、キッショフ、PRヴィンセント・コッホ、ムボナンビ、マルクス、LOのRGスナイマン、FLクワッガ・スミス、モスタート、デクラーク、ウィリアムス、WTBチェスリン・コルベ、WTBマカゾノ・マピンピの12人がいる。

 総じて経験値の高い構成となっているが、主要メンバーであるポラード、アーム、FLデュトイが、怪我のため出遅れているいることが心配材料となっている。プールマッチ初戦の9月10日のスコットランド戦には、ポラードが復帰できるとしているが未確定である他、次の23日のアイルランド戦に復帰できても、ゲーム感覚の問題が残っている。そのため、南アフリカとしてはRWC連覇に向けて、赤信号が灯っている状況といっても過言ではないだろう。

(5)オーストラリア・ワラビーズのRWC用スコッド発表

 ワラビーズ監督エディー・ジョーンズは、RWC用スコッド33人(FW18人、BK15人)を発表した。今回除外された選手には、オーストラリア史上最多キャップのキャプテンとして長年貢献してきたFLマイケル・フーパー、先週のオールブラックス戦がオールブラックスとの最後のゲームになったとSNSで表明していた、NZ出身のベテランSOクエード・クーパー、怪我からの復帰が遅れているCTBレン・イキタウ、FBリース・ホッジ、FBトム・ライト、FLピート・サムとなっており、これまでのワラビーズを支えてきたベテラン・中堅選手の多くが対象となった。

 ジョーンズ監督は猫の目のようにキャプテンを交代させているが、今年5人目となるキャプテンに、LOウィル・スケルトンを指名し、バイスキャプテンにSHテイト・マクダーモットを指名した。また、今回初選出となる選手が3人いることが特筆される。PRブレイク・スコウプ、SHアイザック・ファインズレレイワサ、WTBマックス・ヨルゲンセンの3人だ。特に18歳のヨルゲンセンは、RWCでプレーすれば、オーストラリア史上RWCでの最年少選手となる。

 一方、最多キャップの131を持つPRジェイムズ・スリッパーがいるものの、スコッド内の50キャップ以上の選手は、63キャップのSHニック・ホワイト、55キャップのWTBマリカ・コロイベテのわずか2人しかいない。平均キャップ数は20、平均年齢は26歳と、1991年RWC以降、ワラビーズで最も経験値の浅い、若手主体のスコッドとなった。

 また、SOは4キャップのカーター・ゴードン一人だけであり、ユーティリティーBKとしてスコッド入りした2キャップのベン・ドナルドソンがカバーするだけとなっている。もしもこの二人が怪我をした場合は、バックアップのSOをオーストラリアから呼び寄せる必要が出てくるため、その場合はチームが危機的状況になる心配を含んでいる。

これ対してジョーンズ監督は、「最適なスコッドを選んだ結果」、「若いからといって、トーナメント戦では関係ない。女子サッカーワールドカップのオーストラリア代表が良い例だ」と意味不明なコメントをしている。

 このワラビーズの予想外のスコッドについて、世界中から賛否両論が沸き起こっているが、オーストラリアの評論家の意見としては、「次の2027年RWCオーストラリア大会を見据えて、一気に若返った勇気あるスコッドである。また今回は、いちかばちかの焦土作戦、あるいはルーレットの黒か赤に全額賭けるようなギャンブルだ」と見ている。

(以下私見)

 「総キャップ数」ということを、日本で最初に言い出したのは、2015年RWCに向かう前の日本代表監督だったエディー・ジョーンズだった。当時テストマッチの少なかった日本代表選手にとって、多くのテストマッチを重ねてキャップ数を重ねることが強化につながり、またRWCで勝つための必要条件だと繰り返し強調していたのだ。

 実際に2015年RWCでは、キャップ数が少ない若手主体のチームで臨んだイングランドは、プールマッチで想定外の敗退を重ね、監督のスチュワート・ランカスターが大会終了後に解任され、後任にジョーンズが就任したのは記憶に新しい。また、総キャップ数は多いが平均年齢の高いオールブラックスは、「年寄りチーム」と揶揄されていたが、HOケヴィン・メアラム、PRトニー・ウッドコク、FLジェローム・カイノ、FLリッチー・マコウ、SOダニエル・カーター、CTBマア・ノヌー、CTBコンラッド・スミスらのベテランの力によって、危なげなく試合を勝ち抜き、連続優勝の偉業を成し遂げた。

 今回のワラビーズでは、FLフーパー、FLサム、SOクーパー、FBホッジらは、その貴重な経験値を生かすことで、「負けたら終わり」のトーナメント戦を勝ち抜く重要な戦力となるべき選手たちだったが、ジョーンズ監督は、本来ウォームアップマッチで試用するような初キャップとなる選手を3人も入れ、持論としている総キャップ数や経験値を自ら否定するようなスコッドにした。これは、「想定外」、「ハプニング」等の穏当な形容詞ではなく、怪我人が多い事情があるとはいえ、むしろ「自殺行為」とも言える暴挙ではないだろうか。

 ジョーンズのコーチとしての実績は、2003年RWC準決勝のワラビーズ監督としてのオールブラックス戦勝利、2015年RWCプールマッチの日本代表監督としての南アフリカ戦勝利、2019年RWC準決勝のイングランド監督としてのオールブラックス戦勝利が挙げられる。しかし、この一発勝負の試合は、次に同じ相手と再戦したとすれば、負けている可能性がかなり高いギャンブルのような試合だった。そしていずれも、その後の勝負(RWCでの次の試合)では勝利を得る(優勝あるいは、ベスト8入りする)ことができなかった。

 つまり、勝負師であるジョーンズは、これらの試合で一枚しかない切り札を先に使い切ってしまったため、本当の勝負所では特別なことは何もできずに勝負して、そのまま実力通りに負けている。ジョーンズは優れた勝負師ではあるが、同時に手持ちの切り札は一枚しかないぎりぎりの勝負師なのだ。今回誰もが驚くようなスコッドと言う「切り札」を使い切ったジョーンズが、RWC本大会までに新たな「切り札」を繰り出すことができるのか、そこに私は注目していきたい(もっとも、新たに切り札を作ったとしても、準々決勝で使い切ってしまうだろうが)。

(6)ジェイミー・ジョセフはハイランダーズに戻る

 現日本代表監督のジェイミー・ジョセフ、53歳は、日本代表との契約を延長しないことを表明していたが、今般、NZのスーパーラグビーチームであるハイランダーズに戻ることとなった。ハイランダーズ監督は、既にクラーク・ダモーディーが就任していることもあり、ヘッドオブラグビーというコーチ全体へ助言する他、選手の維持及びリクルートを担当する役職に就任する。4年契約。

 ジョセフは、ダニーデンで育ち、オタゴ及びハイランダーズ代表としてプレーした他、ハイランダーズ監督も歴任しており、いわば地元に戻ることになった。一方、NZ協会としては、ジョセフがNZに戻ることを歓迎しており、先の話になるがスコット・ロバートソンの次のオールブラックス監督候補に留まることとなった。

(7)コッターがルーマニアをRWCで本格的にサポート

 元スコットランド及びフィジーのNZ人監督だったヴァーン・コッターは、来シーズンからスーパーラグビーパシフィックのブルーズ監督就任が決まっているが、現在までルーマニア・オークス(樫の木)のアドバイザーとして、RWC出場に向けた戦いを支援してきた。その結果ルーマニアはRWC出場権を勝ち取ったが、本大会では、コッターがアドバイザーから昇格し、コーチ兼コンサルタントという資格でチームを支えることとなった。

 この結果ルーマニアは、有力な助っ人をより強化してRWCに臨めることになった。またRWCでは、南アフリカ、アイルランド、スコットランド、トンガがいるプールBに入っているが、フランスのクラブチームでプレーする選手が多い代表選手の構成となっているため、ルーマニアが格上相手に波乱を起こす可能性を秘めている。特に、スコットランドとトンガに対しては、十分勝てる実力を持っているので楽しみだ。 

(8)アルンウィン・ジョーンズは、11月のバーバリアンズのゲームが引退試合に

 現時点での世界最多となる158キャップ(ブリティッシュアンドアイリッシュ・ライオンズの17試合を入れれば、170キャップ)を誇り、ウェールズ代表キャプテンとして48試合をプレー、第二次大戦後は7人しかいないシックスネーションズ優勝3回という偉大な経歴を持つ一方、現在フランスのツーロンでプレーしているLOアルンウィン・ジョーンズは、今年のRWCを最後に引退すると見られていたが、既にテストマッチレベルからの引退を表明していた。

 その後ジョーンズは、RWC終了後の11月4日にカーディフ(ウェールズのホームスタジアム)でウェールズとの試合を予定しているバーバリアンズのメンバーに選ばれたことから、この試合がジョーンズの引退試合になることが確定した。なお、毎回コーチが交代しているバーバリアンズは、今年は現オーストラリア監督のエディー・ジョーンズと次期オールブラックス監督のスコット・ロバートソンの二人が共同でコーチを担当する。

(9)RWC用ジャージの私的比較

 RWC出場チームのジャージが出そろった。それで、全チームのメーカー紹介とその寸評をしてみた。なお、今回はイタリアのMcron(マクロン)製を、イタリア、スコットランド、ルーマニア、ウェールズ、ジョージア、ポルトガル、サモアと7チームも採用している。これに次ぐのが、南アフリカ、フィジー、アルゼンチンが採用したナイキ。日本と同じカンタベリーは、他はアイルランドしか採用していない。そして、デザインを見てみると、マクロンが圧勝したのも頷ける。

 個人的に好きなのは、イタリア、スコットランド、ルーマニア、ジョージア、サモア。最低なのはアイルランドで、ウルグアイ、ナミビア、ポルトガル、チリは、「ちょっとねえ」という感じがする。格下のチームは、せめてジャージ(のデザイン)だけでも、奮闘してもらいたい。

オールブラックス:アディダス。襟付きになったのは良いが、シルバーファーンの透かしは稚拙な感じがする。

フランス:ルコック。国旗に準じた、青・白・赤の伝統的なスタイル。鶏のマークが少し大きすぎる。

イタリア:マクロンというイタリアのメーカー。さすがイタリアというおしゃれなジャージ。

ウルグアイ:フラッシュというギリシアのメーカー。青とオレンジのせいか、どこか弱弱しい印象。ジャージというより、普段着のよう。

ナミビア:BLKというアメリカのメーカー。これもラグビー用という感じがしないばかりか、弱弱しい。

南アフリカ:ナイキ。ファーストは良いが、セカンドが残念。練習用にしか見えない。

アイルランド:カンタベリー。今回の最低ジャージで、まるで安っぽいTシャツ。これはラグビーのジャージじゃない。

スコットランド:マクロン。スコットランドのジャージは、2019年から良いデザインになっている。

トンガ:FXV(ForceXV)。フランスのメーカーだが、普通。

ルーマニア:マクロン。ルーマニアの少し前のジャージは酷かったが、良いデザインに戻った。

ウェールズ:マクロン。ウェールズの最近のジャージは酷いものが連続したが、少し良くなった感じ。

オーストラリア:アシックス。普通。個人的にはアポリジニの柄は無い方が良い。

フィジー:ナイキ。フィジーらしくて良い。セカンドの黒と赤の色合いは、ちょっと判断に迷う。

ジョージア:マクロン。良い感じ。

ポルトガル:マクロン。ジョージアに近いデザインだが、なぜか弱弱しく感じる。

イングランド:アンブロ。セカンドの青とか黒の色の選択はいつも良くない。イングランドには、セカンドは不要なチームと言う特権を与えて良いと思う(注・RWC開始までは、ラグビーの発祥国として、イングランドは白しか着なかった)。

日本:カンタベリー。襟は良くない。他は前回デザインの踏襲だが、そもそも最近のものはどうも良い印象がない。2015年や2019年のように、勝てば好感度は上がるのだろうが。

アルゼンチン:ナイキ。ファーストは普通。しかし、セカンドの襷が入るのはちょっと違和感が強すぎる。

サモア:マクロン。色合い・デザインともに良い感じ。

チリ:アンブロ。ラグビージャーに慣れたメーカーなのに、とても弱弱しく、ラグビー用というよりサッカー用ユニフォームに見える。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?