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<ラグビー>2022~23シーズン、リーグワン第7節の結果及びインターナショナルラグビーの話題等

(どうでもよい「話の枕」です。関心ない方は飛ばしてお読みください。)

 朝ドラの登場人物が、「私はラグビーしか取り柄がない男です。ラグビーの話しかできません」というセリフを聞いて、ちょっと違和感を持った。息子が高校ラグビーをやっていた(幸いにたいして上手かったわけでもなかった)が、ラグビーで頑張って欲しいと思う気持ちと同時に、ラグビー以外も頑張って欲しいと願っていた。ラグビーに限らず、スポーツをするだけで生きていかれるのはほんわずかの人だけだ。また、世界はラグビー以外にも様々なものがある。

 だから「ラグビーをやっていた登場人物」というキャラクターには、「自分はラグビーをやった経験を生かして、今はこんなことをやっています」というセリフの方が好きだ。もっとも、それは理想論でしかないのかも知れないが。

1.リーグワン第7節結果

横浜キャノンイーグルス34-13ブラックラムズ東京

 最近のブラックラムズは好調なので、もっと競った良い試合になるかと期待したが、やはりチームとしての熟成では、イーグルスとは差があった。それでも、前半を14-0と先行された後にトライを返し、その後PGを応酬して、前半を17-13と4点差で折り返したのは、上出来だったのではないか。

 しかし、後半に入るとイーグルスにトライを取られる一方、52分に自陣ゴール前での不要な反則をしてシンビンになってしまうのは、自滅としかいいようがない。その後、イーグルスが順当にトライを重ねて、完勝した。

 とはいえ、79分のインゴールノッコンでトライを取り消されるなど、イーグルス側も不注意なミスがけっこうあったので、チームとしての熟成では優勝するチームにはまだまだ距離があるのではないか。

 ブラックラムズのSOアイザック・ルーカスは、SOとしての才能よりもランナーとしての才能に秀でていると思う。将来日本代表に入る想定ならば、最も適しているのはセヴンズだが、これは国籍問題があるので対象外になってしまう。15人制であれば国籍条項はクリアーできるが、SOとしては代表レベルでは苦しいので、SHまたはWTBとして起用すべきではないか。タイプとしてはダミアン・マッケンジーに似ているので、個人的にはSHが一番面白いと思っているが、一方マッケンジーの最新のポジションはFBなので、ルーカスについてもバックスリーが良いのだろう。チームとしての事情があるだろうが、ブラックラムズがSOとFBを入れ替えたら、さらに強くなるのではないかと考えた。どうだろうか?

 この試合のスタンドに、WR(ワールドラグビー)関係者が観戦していたが、日本の国内リーグのレベルをチェックしに来たのだろうか?もしも、十分にハイレベルであると認定されたら、日本代表がザラグビーチャンピオンシップあるいはシックスネーションズに入れてもらえるかも知れないな、と勝手に期待してしまった。

トヨタヴェルブリッツ34-44クボタスピアーズ船橋・東京ベイ

 スピアーズにとっては、イーグルスがやるようなトリッキーなサインプレーのない文字通りの真っ向勝負しかないヴェルブリッツは、FW主体という似ているチームカラーもあってかなりやりやすい相手だと思う。そして、そのまま前半はスピアーズがトライを重ね、10-36と大量リード。もう勝負は決まったと思われた。

 ところが、最近のスピアーズは、前半は良くても後半に大きく崩れるパターンが見られるが、このゲームもその悪い流れを継承して、54分までにヴェルブリッツに3連続トライされ、29-36と7点差に迫られる。その後巻き返して62分にPGを返すが、77分にヴェルブリッツにトライを取られて、34-39の5点差になってしまう。

 これで残り3分間の攻防が楽しみになったが、ヴェルブリッツは安易なミスが重なってトライを取り切れない。一方守るスピアーズは、流れを取り返して79分にトライを挙げ、34-44とどうにか点差を拡げて終えられたが、ヴェルブリッツの拙攻に助けられた感があった終わり方だった。こういう内容からは、スピアーズもイーグルス同様に、優勝する条件が不足しているように見える。

三菱重工相模原ダイナボアーズ30-49コベルコ神戸スティーラーズ

 好調のダイナボアーズと不調のスティーラーズの対戦。しかし、ダイナボアーズは開幕当初の好調の波が下降しているのに対し、スティーラーズは連敗の危機感がチーム内に共有されてきて、ここは踏ん張り所になっていた。それが最後に勝敗を分けたような気がする。

 前半は、スティーラーズがFW力の差で先制トライを挙げると、20分にはダイナボアーズの柔なタックルを突いて連続トライして、一気に0-14とリードした。ダイナボアーズは、24分にようやくPGのチャンスを得るが、このイギリス人のSOはイライラしていることを前面に表していて、さほど難しくないゴールキックをあっさりと外してしまう。こういうタイプはゴルフには絶対に向かないメンタルだと思うし、またゴールキッカーにも向かないだろう。その後もこのSOはPKからのタッチをインゴールに入れるなど、この日は全く不調だった。

 しかし、30分にダイナボアーズがPGをようやく入れた後の36分、スティーラーズ陣ゴール前に攻め込み、ここでスティーラーズのSHがラックで不要な反則をしてシンビン。ゴール正面5mなのでトライを狙うかと思ったが、なぜか弱気な判断をしたPG狙いで、6-14で前半を終えた。ここは調子の良いチームならトライを狙うところだったと思う。

 後半に入ると、ダイナボアーズはシンビンによる数的有利を生かしてトライを取り、13-14と迫るが、すぐにスティーラーズにドライを返される。そして54分にはシンビンを出した上に、55分にはラインアウトからのモールでスティーラーズに連続トライされて、13-28となり勝負は決まってしまった。

 その後はダイナボアーズとスティーラーズとの間で、つまらない反則→タッチ→ラインアウト→モール→トライを繰り返した他、お互いに緩くなったタックルのおかげでパスをつないだ(つなげた)トライを取るなど、緊張感のないプレーでゲームを終えた。

 スティーラーズは勝利したことが唯一の成果で、ダイナボアーズは、ユーティリティーBKとして使える助っ人マット・トゥムーアがプレーできたことが、負けから得た成果なのではないか。

東芝ブレイブルーパス東京34-40東京サンゴリアス

 TV解説者が「東芝」、「サントリー」と言ってしまうくらい、古くは東日本社会人リーグから始まり、トップリーグを経て、現在のリーグワンにまで至る、日本の国内ラグビーでは「イングランド対スコットランド」に匹敵するライバル対決となっている(なお、大学の対抗戦のライバル対決は、オックスフォード対ケンブリッジに比すべきで、(社会人)クラブチームの対戦とは別次元となる)。

 そして、そうした期待に沿うべく、またその知名度や人気度から多く集まった観客が満足するくらい、両チームともに個人技及びチームプレーともにハイレベルの良いゲームとなった。この後30分遅れて開始した他の2試合がつまらないゲームだったので、この試合の面白さが余計に際立つことになったが、やはり個々の選手とチームとによる化学変化に加え、「良きライバル」、「勝敗抜きでラグビーを全うする」という意識が良い方向に働いたのだと思う。

 しかし、せっかく日本代表首脳陣も視察に来ているのに対し、この秩父宮の芝は本当に酷すぎる。天然芝信仰から抜け出せない人たちは、この現実をよく踏まえてから、ラグビー場に相応しい芝についての意見を言うべきではないだろうか。

 肝心のゲームだが、前半11分にブレイブルーパスにシンビンが出たこともあり、サンゴリアスが先行したが、その後ブレイブルーパスが良く追いついて、17-20の3点差で前半を終える。

 後半は、お互いにトライの取り合いになったが、これはダイナボアーズ対スティーラーズ戦のようにディフェンスが停止したためではなく、お互いの個人技に優れた選手が能力を如何なく発揮するとともに、チームとしての優れた練習の成果が結実した、実にエンターテイメントとして素晴らしいトライの連発だった。

 特に53分のサンゴリアスのトライは、FB松島幸太朗のトライアシストが素晴らしかったことを評価したい。また同じく62分のサンゴリアスのトライは、SOアーロン・クルーデンの右サイドにいる14番WTB尾崎晟也(このハットトリックでMOM!)に対するノールックのバックフリップパスからのもので、さすがオールブラックス50キャップという高度なスキル溢れるプレーだった(日本中の高校生はぜひ真似して練習して欲しい)。クルーデンは、スティーラーズ時代はあまり活躍できなかったが、サンゴリアスに移籍してからはチームカラーが合っているのか、非常に良いプレーが目立っている。

 一方のブレイブルーパスも、14番WTBジョネ・ナイカブラのトライ及びトライアシストは素晴らしかった他、NO.8マイケル・リーチを筆頭にしたFW陣の疲れ知らずの献身的かつハード、そしてスキルの高いプレーは、「これぞラグビー!」という喜びがあった。

 こういうプレーができたのも、前提条件としての好天に恵まれたことが大きな要素になっているが、「ラグビーは、雨が降ろうが雪が降ろうが関係なくプレーするから、屋根は不要」と主張している人は、お互いにミスを繰り返す文字通りの「泥試合」をラグビーと考えているのだろうか。もし「泥試合」がラグビーの理想であるのなら、ラグビーを見る人もプレーする人も、将来的に漸減してしまうだろう(「巨人の星」の世界は、美談からかけ離れている)。

 ちょっと話が横道に逸れたので、ゲーム展開に戻ると、両チームは後半に素晴らしいトライを応酬し合った一方、59分にはブレイブルーパスが34-30と逆転。しかし62分にサンゴリアスが34-37と再逆転する。その後は3点差のまま一進一退が続くが、79分にサンゴリアスがPGで6点差にして、残り惜しいノーサイドになった。もしも、ブレイブルーパスが同点にして、(リーグワンでは規定されていないが)さらに10分間延長になったとしたら、今後しばらくは語り継がれるゲームになったと思うくらい、最後まで、プレーのみならず、得点争いでも興味が尽きない好ゲームであった。

グリーンロケッツ東葛0-45埼玉ワイルドナイツ

 入れ替え戦行きが濃厚なチームと無敗記録を更新して優勝へ前進するチームとの対戦。そのため、ワイルドナイツ(グリーンロケッツの緑と被るので、セカンドジャージの白にして正解)は主力を休ませるメンバー編成で臨んだが、それでも実力差は埋まらなかった。いうなれば、オールブラックスのBチームと、かつての日本代表が対戦したようなものだろう。

 試合は、ワイルドナイツが前半早々にトライを重ね、13分までに0-17とリード。ここでスイッチを切ったのか、その後の得点が取れない。それでも42分にグリーンロケッツにシンビンが出て、後半の大量得点が期待された。

 後半に入り、予想通りワイルドナイツがトライを重ねて、68分までに0-45と大量リード。ところが、ここからグリーンロケッツがなんとかトライを取るべく奮戦。ついに74分にワイルドナイツにシンビンが出て、グリーンロケッツは数的優位に立つ。ところが、77分にはせっかく得たPKからのタッチキックがインゴールを割るなど、チーム及び選手の集中力が低く、チャンスを生かしきれない。そのままワイルドナイツに逃げ切られる一方、グリーンロケッツは無得点という情けない結果となった。

 もうグリーンロケッツは、完全にディビジョン2のチームなのだと思う。そして、これからは勝敗にこだわらずに来シーズンのことを考えて、若手選手に経験値を積ませるなどしたら良いのではないだろうか。

花園近鉄ライナーズ14-34静岡ブルーレヴズ

 グリーンロケッツがディビジョン2なら、この2チームもそれに近いチーム。そして、負けたライナーズは、グリーンロケッツ同様に来シーズンを考えたゲームをした方が良いのではないかと思う。

 そして試合自体は、単調なアタックをして得点できないブルーレヴズと、ディフェンスが弱いのにも関わらず相手のミスで救われているライナーズという構図が続く。ときおり、ライナーズが幸運に恵まれてトライを挙げるが、ライナーズのアタックは偶然にラインブレイクするものが多く、そのためサポートがいないため簡単にチャンスをつぶしてしまう。

 それに比べれば、上位陣相手に奮戦しているブルーレヴズは、チームとしてアタックを継続する力がある上に、WTBにマロ・ツイタマという決定力のある選手がいることが幸いして、この点差で勝利することができた。ただし、トライの半分はライナーズがタックルをまともにしないことに起因しているので、過信は禁物だと思う。いっそイーグルスのようなサインプレーを考案したらどうだろうか?

 ところで、ブルーレヴズはセカンドの赤いジャージだったが、その色合いからスティーラーズに似ている印象を持った。そして、現在の不調が続くスティーラーズとプレー内容も似ているようにも見えたのは、偶然だろうか。

2.インターナショナルラグビー関連

(1)シドニーセヴンズで、NZがアベック優勝!

 女子では、ミカエラ・ブレイドやポーシャ・ウッドマンウィックリフがアタックで相手を圧倒した他、新鋭のジョージャ・ミラー(まだ高校生だ)、テニカ・ウィルソンが活躍し、男子では、2大会で10トライのロデリック・ソロ(21歳)の異次元のスピードやカルロス・スペンサーの息子ペイトンがオールブラックスセヴンズにデビューするなど、NZが男女ともに躍進し、それぞれ決勝を圧勝した。一時期低迷したNZのセヴンズだが、これからしばらくは以前の全盛期を迎えそうだ。そして、来年には念願のオリンピック男女一緒の金メダルを達成して欲しい。

 決勝戦の内容を見ると、女子は1対1のディフェンスが強く、さらにブレイクダウンに無理に入らないため、ディフェンスが足りなくなることはない。さらに、タックル後の戻りが非常に速いため、穴が開かない。アタックでは、ハンドリングエラーがほぼ皆無な上に、一瞬のスピードで抜き去る選手が複数いる。そして、タックルされてもかならずサポートする選手がいるので、トライまでつなげられる。まったく非の打ちどころのないチームになっている。これはまさに無敵だ。

 男子は、決勝がプールマッチで負けた南アフリカとの再戦となったが、南アフリカにアンラッキーなプレーが多かった半面、オールブラックスセヴンズにラッキーなプレーが多かった印象があるため、力の差は女子ほど大きくないと思う。それでも、スキルの高いベテランとスピードのある若手がうまく融合して、チームとして良い方向にまとまっているのが強みになっている。また、ディフェンスもしっかりしているのは嬉しい。女子よりは他チームとの差が少ないものの、トップチームであるのは間違いないと思うので、さらなるチームの熟成を期待したい。

(2)シックスネーションズ開幕

 日本の高校全国大会と大学選手権が終わり、リーグワン開幕で国内ラグビーを楽しんでいたら、ヨーロッパではシックスネーションズが開幕した。今年のRWCフランス大会を見据えた北半球勢の状況を確認する大会となるが、一番注目されるのは、RWC地元開催となるフランス、そしてエディー・ジョーンズを解任し、スティーヴ・ボーズウィックが監督に就任したばかりのイングランドだろう。

 また、現時点で世界ランク1位になっているアイルランド、世界トップの評価が高い名将ワレン・ゲイトランドが監督に復帰したウェールズ、主力SOフィン・ラッセルとの問題を乗り越えたスコットランド、昨秋にオーストラリアに勝利したイタリアなど、いずれも高い実力を持つチームばかりなので、ハイレベルの熱戦を期待したい。

 日本にとっては、RWC前に遠征してくるイタリアを分析するのに絶好の機会なので、特にFBアンジェ・カプオッツォとSOパオロ・ガルビシの二人のプレー振りに注目したい。

 ところで、連戦連敗のイタリアがなぜシックスネーションズから落ちないかといえば、下部リーグとの入れ替え戦がない単一リーグだからということになるが、それよりも、(イングランド協会が作り上げた)ウェッブ・エリス伝説を別物と考えた場合、「ラグビーの歴史的発祥起源」は古代ローマであることが関係しているのではないかと思う。

 さらに付言すれば、サッカーは、純然たるブリテン島(英国)起源である一方、もともとは村対村の争い(極端に言えば「戦争」)の一部として発祥した、かなり血腥くかつ泥臭い歴史がある。これに対してラグビーがスノッブであることを証明するかのように、ヨーロッパ人にとっては知的・歴史的・文化的というすべての尊敬すべき対象であるローマ帝国時代の「スポーツ(娯楽)」として、現在のラグビーに至るものがプレーされていたことは、相当に誇るべきことだと言える。

 上述の件に加えて、代表レベルとしては弱くても、個々にはセルジオ・パリッセなどの他国選手と比較しても非常に優れた選手が歴代にわたって複数いる一方、そうした選手たちがヨーロッパの各クラブでプレーをしていることは親近感を増している。さらに、イタリアの有力クラブもヨーロッパのクラブリーグに参加しているのだから、シックスネーションズという組織はイタリアを含んで当然という意識があるのではないか(例えば、もしドイツがラグビー強国になれば、あっさりとシックスネーションズ入りすると思う)。

ウェールズ10-34アイルランド

 前半からアイルランドFWが圧倒して、27-3と大量リード。後半も、ウェールズが1トライを返したものの、アイルランドの攻勢が最後まで続き、敵地で完勝した。ウェールズは、成績不振からNZ人のワレン・ゲイトランド監督が復帰したものの、現時点で世界ランク1位のアイルランド相手に、力の差を見せつけられる結果となった。

イングランド23-29スコットランド

 スコットランドは、1972年以来となる対イングランド3連勝を達成するとともに、敵地で1909年(まだトウィッケナムがなかった)以来初の勝利となった。

 前半は、スコットランドがトライで先制するが、その後イングランドも反撃し、終了間際にPGを入れて13-12とイングランドがリードした。後半は、お互いにトライを取りあい20-19となった後、今度はPGを入れ合って23-22となったのが68分。そして、74分には、MOMとなったスコットランド11番WTBドゥーハン・ファンデルメルヴァが、二つ目となるトライを挙げて23-29と逆転し、スコットランドの勝利を決めた。

 前半28分の、スコットランド11番WTBドゥーハン・ファンデルメルヴァ(南アフリカ人)の自陣からイングランドディフェンス5人を次々と抜き去ったトライは、「ジョナ・ロムーがイングランド相手にやったトライの再現」、「この後50年はベストトライと語り継がれる」、「カルカッタカップ(イングランドとスコットランドの対抗戦の勝者に与えられるカップ)のみならず、シックスネーションズ史上最高のトライ」などと絶賛されている。

イタリア24-29フランス

 ホームで迎え撃つイタリアのNZ人(元オールブラックスFB)キアラン・クラウリー監督に対する、歴代フランス代表SH中、最も相手に嫌われていたファビアン・ガルティエ監督のフランスが、自国開催のRWCに向けて幸先良いスタートを切るべく、万全を期して臨んだ試合。しかし、智将クラウリー監督は、そんなフランスを思う存分に苦しめたが、最後に勝ちそこなってしまった。

 試合は、キックオフ早々からイタリアにイージーミスが目立ち、そこをフランスが抜け目なくつけ込んでトライを先制する。イタリアもPGでしぶとく追いすがり、31分には、FBカプオッツォの技ありのトライとSOアランのPGで14-19と迫り、ゲームを面白くした。

 後半は、フランスがPGで14-22とリードを拡げたが、51分にシンビンとイタリアのペナルティートライで、21-22の1点差となる。さらに56分にフランスがPGを失敗した一方、60分にイタリアがPGを成功して、24-22と逆転したときは非常にゲームが盛り上がった。このままイタリアが勝利すれば、新春最高のテストマッチになるところだったが、老獪なフランスは66分にトライを返して24-29と再逆転する。

 しかし、選手を入れ替えた後のイタリアは、アタックすればゲインラインを切れる一方、フランスが反則を繰り返すことにも助けられて、敵陣に攻め込み続ける。ところが、71分のPG失敗に続き、81分に敵陣ゴール前のラインアウトからのアタックにミスが出て、劇的なドラマは起きなかった。イタリアにあと少しのプレー精度があれば(もしこれがオールブラックスだったら、確実に逆転勝利していたストーリーだろう)、フランスに十分勝てた試合だった。

 なお、ホームのイタリアがセカンドの白のジャージを着ていたが、ナショナルアンセムの時にジャージの上に来ていたウィンドブレーカーは、フランスが白、イタリアが青だったので、この入れ違いは面白かった。

 ところで、「シャンパンラグビー」という当事者にとっては蔑称にも聞こえるレッテルで、日本のマスコミはフランスラグビーを奉っているが、フランス好きの日本人が「フランス」と思っているパリを中心とした北部は、実はラグビーが盛んではない。フランス代表を支えるラグビー熱が高いのは、ワイン醸造等の農業が盛んな南部であり、また北部よりも荒々しい気性を持っている。そのため、日本人が勝手にイメージする華麗なBK中心のラグビーではなく、泥臭いFW戦とキックを中心にしたのがフランスラグビーであることは、意外と認識されていない。

 一方、イタリアラグビーに対して日本人は、情報が少ないこともあって認知度が低いが、長年シックスネーションズに参加している実績は、歴史的に日本より格上だと言える。そして、この試合でイタリアは、フランスの得意とするFW戦で互角に戦ったのが5点差の敗戦につながった一因となっている。ここ数年のイタリア躍進の原動力は、何よりもクラウリー監督の貢献によるものだが、SOパオロ・ガルビシ(この試合は怪我で欠場)とトンマゾ・アラン、そしてFBアンジュ・カプオッツォが様々に注目されてきた。しかし、実はFWが強化されたことが最大に理由であったことが、この試合でよくわかった気がした。

 イタリアは、RWCでフランスと同組になるばかりでなく、オールブラックスも同組になるので、十分注意して対戦する必要があるだろう。もちろん、8月にテストマッチを組む日本にとっては、絶好の腕試しになる良いチームになる。日本の当面の目標は、打倒イングランド&アルゼンチンではなく、むしろイタリアではないか。ここで完敗するようなチームでは、とてもイングランドやアルゼンチンの巨漢FWに対抗できそうもない。


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