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<ラグビー>ザ・ラグビーチャンピオンシップ最終週(アルゼンチン対ワラビーズ,スプリングボクス対オールブラックス,各第2テストマッチ)結果

アルゼンチン17-32ワラビーズ

メンバーを紹介。
ワラビーズ:( )内はキャップ数。
ジェイムズ・スリッパ-(109)、フォラウ・ファインガア(20)、タニエラ・ツポウ(34)、アイザック・ロッダ(29)、ダーシー・スワイン(8)、ピート・サム(14)、マイケル・フーパー(114,キャプテン)、ロブ・ヴァレティニ(13)、ニック・ホワイト(42)、クエード・クーパー(73)、アンドリュウ・ケラウェイ(8)、サム・ケレヴィ(37)、レン・イキタウ(8)、ジョーダン・ペタイア(13)、リース・ホッジ(52)
(リザーブ)
ラクラン・ロナーガン(3)、アンガス・ベル(11)、グレッグ・ホームズ(27)、マット・フィリップ(18)、ショーン・マクマーン(26)、ジェイク・ゴードン(9)、ジェイムズ・オコナー(56)、トム・ライト(5)

アルゼンチン:
ロドリゴ・マルティネス、フリアン・モントーヤ(キャプテン)、エンリケ・ピエレット、グイド・プッティ、トマス・ラヴァニーニ、フアンマルティン・ゴンザレス、マルコス・クレメール、ロドリゴ・ブルーニ、ゴンザロ・ベルトラノウ、サンチャゴ・カレーラス、エミアーノ・ボッフェリ、サンチャゴ・ショコバレス、ルチオ・チンチルナ、マティアス・モローニ、フアンクルーズ・マリア
(リザーブ)
ファクンド・ボッシュ、トマス・ギャロ、エデュアルド・ベロ、マティアス・アレマンノー、フランシスコ・ゴリソン、ゴンザロ・ガルシア、ドミンゴ・ミオッティ、マテオ・カレーラス

ワラビーズのデイヴ・レニー監督は、先発及びリザーブで数人の交代をした。リザーブ18番PRにトム・ロバートソンに代えて、38歳のグレッグ・ホームズを入れたが、彼は第二次世界大戦後のワラビーズで、最年長の選手となる。また、日本でプレーしているFLショーン・マクマーンをリザーブ20番に入れた。マクマーンは、2015年RWCのスコッドとしてプレーして以来、日本でプレーしている一方、2017年11月のヨーロッパ遠征時のスコットランド戦以来のメンバー入りとなった。

FWでは、5番LOと19番リザーブを、ダーシー・スワインとマット・フィリップでローテーションした。6番FLには、ロブ・レオタがメンバー外となり、NZ人のピート・サムをリザーブから先発に上げた。16番HOにはフェレティ・カイツウに代えて、ラクラン・ロナーガンを入れた。

BKでは、11番WTBマリカ・コロイベテが、妻の出産によりスコッドを外れたため、11番には14番からアンドリュウ・ケラウェイを移動させ、14番にはリザーブからジョーダン・ペタイアを上げた。ジェイムズ・オコナーは、引き続き22番のリザーブからSOに入り、23番にはトム・ライトが入った。

レニー監督は、「サムはリザーブからの数試合で良いプレーをしたことを評価した」、「ホームズとマクマーンは、練習を非常に激しくやっていることを評価した」と述べている。

アルゼンチンのマリオ・レデスマ監督は,チームのメンバー6人(パブロ・マテーラ、サンチャゴ・メデラーノ、サンチャゴ・ソチノ、フェリペ・エズクーラ、セバスティアン・カンセリエール、ホアキン・ディアズボニーラ)が、水曜にクイーンズランド州からの許可証を取得することなく、ニューサウスウェールズ州のバイロンベイに保養のため行ったところ、これが新型コロナウイルス感染防止策に抵触することとなり、6人全員がこの試合への出場資格を失ってしまった。

そのため、前週のメンバーから8番NO.8パブロ・マテーラ、3番PRサンチャゴ・メデラーノ、16番HOサンチャゴ・ソチノがメンバーから外れた。FWでは、1番PRにファクンド・ジジーナに代わって、ロドリゴ・マルティネスが入り、17番PRにはトマス・ギャロが入った。3番PRはメデラーノに代わってエンリケ・ピエレットが入り、18番PRにはエデュアルド・ベロが入った。4番LOと19番LOは、グイド・プッティとマティアス・アレマンノーでローテーションした。8番NO.8は、ロドリゴ・ブルーニが先発する。20番FLにホアキン・オヴィエトに代わって、フランシスコ・ゴリソンが入った。

BKでは、14番WTBがサンチャゴ・コルデーノからマティアス・アレマンノーに代わった他、先発・リザーブともに変更はない。メンバー的には、6人が外れた影響は少ないと見られる。

3分,アルゼンチン11番WTBエミリアーノ・ボッフェリがPG失敗。
6分,ワラビーズ10番SOクエード・クーパーがPG失敗。
10分,クーパーがPG,0-3。
17分,アルゼンチン10番SOサンチャゴ・カレーラスが,35mのDG失敗。
27分,アルゼンチン5番LOトマス・ラヴァニーニが,チームの反則繰り返しで,シンビン。
28分,ワラビーズが,ゴール前ラインアウトからのモールで2番HOファラウ・ファインガアがトライ。クーパーのコンバージョン失敗で,0-8。
34分,ワラビーズが,HOファインガア→8番NO.8ロブ・ヴァレティニの突破からつないだ11番WTBアンドリュウ・ケラウェイがトライ。クーパーのコンバージョン成功で,0-15。
36分,ワラビーズ15番FBリース・ホッジが,アルゼンチン選手に空中で接触したが,危険なプレーとは判断されず,PKのみの判定となった。
39分,アルゼンチンが,ゴール前のラインアウトからのモールでトライを狙うが,ワラビーズにゴールライン寸前で阻止される。
42分,ボッフェリがPG,3-15。

前半,アルゼンチン3(1P)-ワラビーズ15(2T1C1P)
ワラビーズは,自らのミスもあって立ち上がりから20分過ぎまで苦戦していたが,アルゼンチンにシンビンが出た数的有利の時間帯を利用して,2トライを重ねられた結果,順当にリードしている。

43分,ワラビーズが,SOクーパーと13番CTBレン・イクタウのループプレーを経由して,12番CTBサム・ケレヴィがトライ。クーパーのコンバージョン失敗で,3-20。
54分,ワラビーズが,11番WTBケラウェイが,アルゼンチン12番CTBサンチャゴ・ショコバレスのディフェンスを抜けて2つ目のトライ。クーパーのコンバージョン成功で,3-27。
58分,ワラビーズが,順目にアタックし,最後は13番CTBイクタウから11番WTBケラウェイにつないで,3つ目のトライ。クーパーのコンバージョン失敗で,3-32。
63分,アルゼンチンが,ゴールライン前からのピック&ゴーで17番PRトマス・ガロがトライ。ボッフェリのコンバージョン成功で,10-32。
72分,アルゼンチンが,ゴールライン前ラインアウトからの攻撃でインゴールに入る。レフェリーのパイパーはトライを宣告した。念のためTMOに確認し,17番PRガロがノッコンしているものの,2つ目のトライを認定。ボッフェリのコンバージョン成功で,17-32。
81分,ワラビーズ7番FLマイケル・フーパーが,チームの反則繰り返しでシンビン。

後半,アルゼンチン14(2T2C)-ワラビーズ17(3T1C)
合計,アルゼンチン17(2T2C1P)-ワラビーズ32(5T2C1P)

順当にワラビーズが得点して完勝したが,前半の最後と後半70分に,ワラビーズの反則が繰り返されることに対して,レフェリーのヤコ・パイパー(南アフリカ)から注意される場面が続き,最後にキャプテンのマイケル・フーパーがブレイクダウンの反則でシンビンになったことは,今後の反省材料だろう。

一方,SOにクエード・クーパーが入って,ラインアタックの威力は倍増した。このアタック力があれば,北半球勢から多くのトライが取れるだろう。

アルゼンチンは,前半こそシンビンのためトライを取られたが,後半はほぼイーブンの戦いをしているので,これから北半球とのテストマッチに向けて自信を深めることができたと思う。実際,シックスネーションズのチームと対戦した場合,かなりの接戦になり,そのうちの数試合では勝利を得る可能性が高い。

スプリングボクス31-29オールブラックス

フィジカルに勝るFWが,ボールのあるなしに関わらず相手にぶちかまし,疲れたときは怪我治療と偽って時間を稼ぐ。アタックは,SHからのボックスキックを繰り返し,相手がエラーしたときにPGを刻む。これが,スプリングボクスの世界から批判されているラグビーだ。

一方,オールブラックスは,速いテンポでボールをリサイクルし,天才的なスキルとスピードの勝る15人が,爽快感あふれるトライを重ねる。これこそ,ラグビーがエンターテイメントなスポーツである証拠であり,またラグビーが発展していくためには必須の要素だ。

そうした観点からは,これは単なるプレースタイルが異なる強豪2チームの対戦ではなく,ラグビーというスポーツの生き残りを問う,重要なゲームだと言える。

なお,この試合でオールブラックスが勝利すれば,ザ・ラグビーチャンピンシップの全勝優勝=グランドスラム達成となる。

5分,スプリングボクス10番SOハンドレ・ポラードが約40mのPGを失敗。
6分,スプリングボクスが,オールブラックス2番HOコーディ・テイラーのパスミスを,13番CTBルッカンヨ・アームが拾い,14番WTBスブ・ヌコシを経由して12番CTBダミアン・デアレンデにつないでトライ。ポラードのコンバージョン失敗で,5-0。
9分,オールブラックス15番FBジョルディ・バレットがPG,5-3。
12分,ポラードがPG,8-3。
13分,オールブラックスが,10番SOボーデン・バレットのキックパスから,14番WTBセヴ・リースがインゴールに入り,レフェリーのマシュウ・カーレイ(イングランド)は,トライを宣告。TMOの結果,トライ。J.バレットのコンバージョン失敗で,8-8。
19分,スプリングボクス2番HOボンギ・ムボナンビがインゴールに入り,レフェリーのカーレイはノートライを宣告。TMOの結果,ノッコンしていてノートライ。
24分,ポラードがPG,11-8。
28分,オールブラックスが,SOのB.バレットがラインブレイクし,11番WTBリエコ・イオアネを経由して,7番FLアーディ・サヴェアがトライ。J.バレットのコンバージョン成功で,11-15。良いトライ。
32分,オールブラックスが,FBのJ.バレットのカウンターアタックから13番CTBアントン・リエナートブラウンがインゴールに迫るが,スプリングボクス14番WTBスブ・ヌコシにタッチへ押し出される。
33分,オールブラックスが,スプリングボクスが入れた自陣ゴール前のラインアウトを,5番LOスコット・バレットがスティールし,パスを受けた9番SHブラッド・ウェバーがトライ。J.バレットのコンバージョン失敗で,11-20。
39分,スプリングボクスが,FW1列を全交代させる異例の采配。
41分,ポラードがPG,14-20。

前半,スプリングボクス14(1T3P)-オールブラックス20(3T1C1P)

スプリングボクスは,ハイボールキック一辺倒から,ラインアタックやキックパスを少しだけ使ってきている。しかし,有効なものとはなっていない。

オールブラックスは,セットプレーは改善されたが,ブレイクダウンでは万全ではない模様。また,LOスコット・バレットの反則が目立つ。バックスリーのハイボールキャッチは比較的安定している。難しい位置からがあるものの,ジョルディ・バレットのゴールキックが少し心配。ただし,後半に入れば,リッチー・モウンガがゴールキッカーになる可能性あり。

45分,ポラードがPG,17-20。
53分,スプリングボクスが,珍しいラインアタックで11番WTBマカゾレ・マピンピがトライ。ポラードのコンバージョン失敗で,22-20。
57分,スプリングボクス22番SOエルトン・ヤンチースがPG,25-20。
66分,SOボーデン・バレットから22番リッチー・モウンガに,12番CTBデイヴィット・ハヴィリから23番ダミアン・マッケンジーに,それぞれ交代。この結果,13番CTBアントン・リエナートブラウンが12番に,11番WTBリエコ・イオアネが13番に,マッケンジーが11番WTB(14番WTBセヴ・リースと入れ替わる可能性あり)に入った。
68分,スプリングボクス23番FBフランソワ・ステインが,オールブラックス15番FBジョルディ・バレットに空中で接触するが,TMOの結果,PKのみの判定。
68分,J.バレットが約40mのPG成功,25-23。
68分,スプリングボクス12番CTBダミアン・デアレンデが,オールブラックスの21番SHのTJ・ペレナラのパスを故意にノッコンするが,通常シンビンになる反則ながら,PKのみの判定。
76分,J.バレットがPG,25-26。
77分,スプリングボクス22番SOエルトン・ヤンチースが約30mのDG成功,28-26。
79分,J.バレットが約40mのPG成功,28-29。
83分,ヤンチースがPG,31-29。

後半,スプリングボクス17(1T3P1D)-オールブラックス9(3P)
合計,スプリングボクス31(2T6P1D)-オールブラックス29(3T1C4P)

ラグビーのエンターテイメントな進化にとって,非常に哀しいオールブラックスの負けとなった。これは,スプリングボクスのラグビーが正解であったからではなく,スプリングボクスの,勝てば良いというだけのラグビーに,オールブラックスが十分対応できなかった,またオールブラックスが自分たちのゲームをできなかったことが,一番の敗因だろう。

もちろん,スプリングボクスの度重なるシンビン相当の反則が見逃されたことも影響しているが,オールブラックスが何よりもPGにつながる自陣での反則を多くしたことが,次に反省すべき点だ。3つ目は,79分に勝ち越した後,ハーフウェイラインでマイボールスクラムを得てからの時間の使い方だ。さらに,経験値の浅い選手が,ペナルティーを与えてはいけない場面で,続けてペナルティーを取られたことは,テストマッチの接戦に勝つ方法を,十分体得していないからだと思われる。この憤懣やるかたない敗戦を糧に,若手には大いに成長してもらいたい。

最後に,オールブラックスには良いトライがあったものの,特に後半に,スプリングボクスの唯一得意とするPG合戦に持ち込まれてしまったゲームメークは,2023年RWCに向けて,しっかりと研究しなければならない分野だろう。

スプリングボクスは,世界中から批判されているスローテンポな,またラグビーのエンターテイメントな発展に逆行するラグビーで,オールブラックスに一矢報いた。これで,彼らは自分たちのラグビーにさらに自信を深めることになるだろう。しかし,現状のプレーを継続していっても,そこからの進化は望めないから,早晩,オールブラックスが常に最先端を走っている新しいラグビーに負けるだろう。そうした大きな歴史の流れの中で,このスプリングボクスの辛勝は,消え去る前の蝋燭の,最後のあがきでしかないことが,やがて判明すると思っている。

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