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<ラグビー>7月16日の南北テストマッチの結果から

 日本代表とフランスは2戦しかしないため、他の対戦のように3連戦してシリーズの勝敗を決めることはしない。日程調整の関係もあるのだろうが、日本も3連戦をやれるようになりたい。

 先週の日曜は国政選挙があったが、同時に大相撲名古屋場所の初日だった。土曜のラグビーでは、時代が変わるような結果となっていたが、相撲の世界でも世代交代になっているようだ。今の大関陣はみなふがいないから、来年の今頃は、若隆景、豊昇龍、若元春、琴ノ若らが主役になっているのだろう。他に王鵬、一山本あたりも面白そうだし、逸ノ城がなぜか調子が良いが、7日目に不調の大関正代に負けるのだから、相撲はわからない。

 先週、今週とラグビー観戦及びその結果に力が入らない。ラグビーそのものが、過剰なレフェリングで劣化していることが原因かも知れない。大関陣がだらしないものの、相撲の方がまだ楽しめている。

1. マオリオールブラックス24-30アイルランド

 アイルランドが一矢報いる形となり、1勝1敗のタイに持ち込んだ。スコアは、最後は6点差となったものの、アイルランドがゲームを支配した一方、マオリにはイージーミスが連発して、勝機を自ら失くした形となった。

 3分、マオリは14番WTBスティーブンソンがトライを挙げ、SOジョシュ・イオアネがコンバージョンを外したものの、5-0と先制した。その後、8分にアイルランドは14番WTBラーマーがトライを返し、SOフラウレイのコンバージョン成功で、5-7と逆転した後、26分にはフラウレイがPGを入れて、5-10とリードした。

 しかし、その直後の27分、アイルランドは6番FLプレンダーガストがシンビンとなり、チームは劣勢となったが、マオリも32分に1番PRノリスがシンビンとなって、数的優位を生かせないまま終えた。そして、33分、アイルランドはFWの優位を起点に、7番FLティモニーがトライを挙げ、フラウレイのコンバージョンも決まって、5-17と大きくリードして前半を終えた。

 後半43分、アイルランドはフラウレイのPGで5-20と差を拡げ、勝利を近づけたが、その直後の46分、14番WTBラーマーがインテンショナルノッコンでシンビンとなる一方、マオリにペナルティートライを与え、12-20と差が縮まった。

 マオリは相手がシンビンになっている間に加点したかったが、イージーミスでできず、逆に67分、アイルランドNO.8クームズにトライをされ、フラウレイのコンバージョンは失敗したものの12-25となり、逆転するために2トライ2コンバージョンが必要な点差となってしまった。

 しかし、交代出場したマオリ22番SOラヴは、70分に良いつなぎからのトライを決め、もしイオアネがコンバージョンを決めれば、逆転可能な圏内に入ると思われたが、イオアネはイージーなコンバージョンを外してしまい、17-25とアイルランドの勝利が近づくことになった。このミスは、イオアネがオールブラックスに復帰する可能性をほぼ失くした一方、NZ国内に残るのではなく海外移籍を志向する契機になるようなプレーだった。

 その後も、73分にマオリは、14番WTBスティーブンソンが不要なインテンショナルノッコンでシンビンになるなど、肝心なところでのディシピリンが崩れてしまい、ゲームの勝敗を決めてしまった。さらに、アイルランドは78分に14番WTBラーマーが二つ目のトライを決め(フラウレイのコンバージョンは失敗)、17-30として完勝に向けて大きく前進した。ところが81分、マオリは最後の意地を見せて、21番SHウェバーがトライし、イオアネのコンバージョンも成功して、24-30の6点差でノーサイドとなった。

 マオリとしては、81分のトライがもっと早く出ていれば逆転できる可能性があったものの、チームとしてのディシピリンが不足していた一方、アイルランドも良いディフェンスを見せ、マオリの連勝は阻止されてしまった。

 しかし、勝負が決まった後とはいえ、交代出場したFB/SOルーベン・ラヴの自らのカウンターアタックからのトライ、そして良い走り込みとステップからラインブレイクしてウェバーにつないだトライは、高い将来性を感じさせるプレーだった。もしかすると、今年のザラグビーチャンピオンシップから、オールブラックスのスコッドに入るかも知れない。また2023年RWCでは、オールブラックスの秘密兵器に化ける可能性を持っているように見えた。

2. オーストラリア17-21イングランド

 イングランド監督エディ・ジョーンズが更迭されるか否かがかかるゲームとなる。負けたら、おそらくイングランド人監督に交代すると予想する。

 イングランドは、9番SHにベテランのダニー・ケアを先発させ、好調のジャック・ファンプールトヴィエレットを21番のリザーブにした。また、オリー・チェッサムが4番LOで初先発する。

 ワラビーズのNZ人監督デイヴ・レニーは、前週の敗戦を受けて数人を交代させた。特にFBにはロングキックのあるリース・ホッジを入れた他、6番FLにはアタックの強いハリー・ウィルソンを先発させる。9番SHニック・ホワイトは50キャップ目となる。リザーブでは、リーグから移籍のスリアシ・ヴニヴァルを23番に入れており、秘密兵器になる可能性がある。

 試合は、開始5分、ワラビーズSOロレシオがPGを失敗した後、17分にイングランド12番CTBファレルがPGを決めて、0-3と先制する。しかし、24分、ワラビーズは反撃に出て、14番WTBライトがトライ(日本から戻った11番WTBコロイベテが良いライン参加とパスをしていた)、ロレシオのコンバージョン成功で、7-3と逆転。続く30分には、ロレシオがPGを決めて10-3とリードを拡げた。

しかし、34分にファレルにPGを返され、10-6と縮められる。さらにイングランドは、39分にファレルがPGを失敗したが、41分にFBスチュワードがトライ、ファレルのコンバージョンは失敗したものの、前半を10-11とリードして終える。

 後半50分、イングランドは、ファレルのPGで10-14とした後、55分に、ワラビーズSOロレシオのファンブルからSOスミスがトライし、ファレルがコンバージョンを入れて、10-21と大きくリードした。ワラビーズも65分に、16番HOファインガアがトライを返し、ロレシオがコンバージョンを入れて17-21としたものの、ここまでだった。

 残り時間をイングランドにうまくプレーされ、そのままノーサイドとなり、イングランドがまたしてもシリーズ優勝を決めた。そして、エディ・ジョーンズ監督の更迭はなくなった。

3. オールブラックス22-32アイルランド

 たしかに1994年に遠征してきたフランスにシリーズで負け越した時以来、いや世界ランク4位ということでは史上最低となる、現在はかなり酷い状況のオールブラックスになっている。しかし、監督は最悪でも、選手は1994年当時に比べれば良い選手がそろっているので、かつてのフランス同様に監督を挿げ替えれば、見違えるように強くなる気がする。一刻も早く、監督をスコット・ロバートソンにし、キャプテンもアーディ・サヴェアに交代すべきだ。

 負けた次のオールブラックスは、めちゃくちゃ強いという伝統がある。昨年末にアイルランドとフランスに連敗したときは、相手が変わったことで良き伝統が崩れてしまったが、今回は同じ相手なので、前週のうっ憤を思い切り晴らしてくれることを期待している。

 一方アイルランドは、今絶好調ということだが、引退間近となる高齢のSOジョナサン・セクストン頼りというのが、かなり心もとない。最悪2023年RWCまで持たないのではないかと思っている。

 そのアイルランドは、怪我のギャリー・リンローズに代えて、好調のバンディー・アーキを12番CTBに入れ、ロビー・ヘンショウが13番CTBになった。また23番にはキース・アールズが下がっている。

 オールブラックスは、レッドカードのPRアンガス・タアアヴォが出場停止のためメンバー外となり、オファ・トゥンガファシはリザーブ18番に下がった。3番PRにはネポ・ラウラウが入り、また17番PRにアイダン・ロスが入っている。

 絶好調のLOサムエル・ホワイトロックは脳震盪が回復し、5番LOで先発する。そのため、スコット・バレットが5番から6番FLに下がった。一方リザーブでは、LO専門を置かず、19番にはアキラ・イオアネ、20番にはダルトン・パパリイを入れた。また、16番HOのリザーブには、大ベテランのダン・コールズが入っている。

 BKでは、12番CTBクイン・ツパエアがメンバー外となり、新型コロナウィルスで欠場していたデイヴィット・ハヴィリが先発する。また、11番WTBレスター・ファインガアヌクはシンビンになったことから、セヴ・リースが11番に回り、14番WTBにはウィル・ジョーダンが先発する。また23番には、待望のロジャー・ツイヴァサシェック(RTS)が入り、おそらく後半にハヴィリと交代すると予想されるが、オールブラックスのデビューとなり、リーグ及びユニオン両方でのキャップ獲得となる。

 フォスター監督としては、まさにマストウィンの決戦に際して、ホワイトロックやコールズなどの経験値の豊富なベテランを起用することによって、勝機を見出そうとしている。実際、アイルランドは引退間近のSOセクストンの経験値によって前週の勝利を得ているので、これは妥当なセレクションと思われる。なお、LOのリザーブがいないため、おそらく後半にはスコットがホワイトロックに代わって5番に上がり、6番にはアキラ、7番にはパパリイを入れて、FWの機動力で勝負を賭けることが予想される。また、RTSを後半投入することにより、ディフェンスの強化のみならず、アタックでも起点となるような優れたプレーが期待される。

 オールブラックスは、試合直前に2人を怪我で変更した。6番FLスコット・バレットが外れ、19番アキラ・イオアネが6番に入った。19番には、新型コロナウィルスから復帰したLOツポウ・ヴァアイが入った。また、17番PRアイダン・ロスも外れ、代わりにカール・ツイヌクアフェが入っている。

 試合開始早々の4分、アイルランドはモールから7番FLファンデルフリアーがトライ。SOセクストンのコンバージョンは失敗するも、0-5と良いスタートを切る。その後11分にオールブラックスはPGチャンスを得るが、FBジョルディ・バレットがミス。そのまま、オールブラックスはチャンスを得ても、ノッコンなどのイージーミスで相手にボールを渡してしまう自滅モードが続く。
 
 23分、ジョルディがPGを返して3-5とするが、28分には、アイルランドFBキーナンがトライ、セクストンのコンバージョン成功で、3-12と引き離される。続く32分、セクストンがPGを入れて3-15とし、さらに37分、13番CTBヘンショウがトライ、セクストンのコンバージョン成功で、3-22と大きくアイルランドがリードして、前半を終える。

 スコアの流れは、第1戦の正反対になっているばかりか、オールブラックスはミスを連発するのに対して、アイルランドは良いプレーを連発している。アイルランドがもはや実力でオールブラックスを上回っていることを如実に証明するような、オールブラックスの酷さのみが目立つ前半の終わりとなった。

 後半開始早々の44分、オールブラックスはNO.8アーディ・サヴェアのトライとジョルディのコンバージョンで、10-22と反撃を開始する。続く51分、アイルランド1番PRポーターがシンビンになり(第2戦のアンガス・タアアヴォとの比較では、レッドカード相当と見られたが、レフェリーのウェイン・バーンズはシンビンに止めた。もし、レッドにしていれば、オールブラックスが勝利した可能性があった)、オールブラックスの反撃のチャンスが広がった。その直後の52分、オールブラックスは6番FLアキラ・イオアネがトライ、ジョルディのコンバージョン成功で、17-22と5点差の逆転範囲にまで迫った。

 これに対してアイルランドは、56分にセクストンがPGを返して、17-25と8点差にした。59分にセクストンはPGに失敗したが、これで流れはオールブラックスに戻り、60分、自陣から繋いで最後は14番WTBジョーダンがトライ、ジョルディのコンバージョンは惜しくも外れて、22-25と3点差に迫り、残り時間との戦いとなった。

 しかし65分に、ポーターのシンビンによる数的劣勢を終えたアイルランドは、16番HOハリングがトライ、セクストンのコンバージョン成功で、22-32としてほぼ勝利を確定した。オールブラックスは、最後の反撃に出たが、前半同様のミスを連発した一方、アイルランドが流れを取り戻して、そのまま逃げ切った。アイルランドがシリーズ優勝を初めて決めた歴史的勝利となった。一方オールブラックスは、これまでのオーラを全て失くし、また実力的にもアイルランドに劣ることを証明するような惨めな連敗となった。

 NZは、特に2007年RWCで敗退したとき同様に、国中が喪に服すことになる。2007年RWCは、今日の試合のレフェリーだったイングランド人ウェイン・バーンズの多くの誤審で負けたが、今回はそうではなかった。もうバーンズを責めることはできない。矢印を自らに向けねばならない。そもそも、シンビンやレッドで勝負が決まることは、前週のオールブラックスの敗戦(アイルランドの勝利)だけで、十分だ。

 昨年末は、オールブラックスもブラックファーンズもともに酷い状態だった。しかし、今年のブラックファーンズは、監督をウェイン・スミスに交代することによって、劇的に持ち直した。つまり、選手はそろっているのに対して、コーチがだめだったということだ。同様にオールブラックスも、イアン・フォスターは更迭し、スコット・ロバートソンを監督に据えるべきだ。キャプテンもサム・ケーンからアーディ・サヴェアに交代するとともに、ケーンを試合メンバーから外すべきだ。

 現在のオールブラックスは、選手選考、キャプテンの指名、ゲームプラン、ゲームの分析、全てにわたってまったく機能していない。新型コロナウィルスを弁解にする必要はない。単純にコーチ陣が無能なだけだ。ここまでオールブラックス史上最悪最低の状態になった今、現在のスタッフを継続するだけの理由はない。また、何か対応しなければならない。そして、その対応策は一つしかない。コーチとキャプテンを替えることだ。

4. 南アフリカ30-14ウェールズ

 第1戦、2戦ともに、僅差で勝敗が決まるスリリングなゲームが続いている。そういう点では、今月の南北対決では一番見せ場が多い試合かもしれない。

 そして、最終戦の勝敗は全く読めない。しかし、ウェールズが勝てば、名目だけとはいえ世界王者に勝ち越したことになるので、その栄誉と自信はかなり大きくなる。いちやく2023年RWC優勝候補になってもおかしくないだろう。

 一方南アフリカとしては、世界王者というプライドのためにも負けられないだろう。しかし、簡単に勝てるほど実力差はない。

 ウェールズのNZ人監督ウェイン・ピヴァックは、前週勝利の勢いを残すため、最小の交代に止めた。11番WTBアレックス・カスバートが怪我でプレーできないため、ジョシュ・アダムスを先発させる。またリザーブだったルイ・リーザミットは14番WTBに入り、23番にはオウウェン・ワトキンを入れた。

 スプリングボクスのジャック・ニーナバー監督は、Bチームと揶揄された前週から先発11人を入れ替えた。しかし9番SHは、ベテランのファフ・デクラークを22番のリザーブにし、3キャップのジェイダン・ヘンドリクスを先発させる思い切ったセレクションにして話題になっている。SOは、引き続きアンドレ・ポラードが先発し、怪我の場合は、FBダミアン・ウィルムゼが10番に上がり、23番のウィリー・ルルーがFBに入ることになる。また、リザーブはFW6人+BK2人としており、後半のFW勝負を想定していると思われる。

 なお、LOエベン・エツベスは、2012年に初キャップを得た後、早くも30歳で100キャップ目のゲームとなる。南アフリカとしては、ヴィクター・マットフィールド、ブライアン・ハバナ、テンダイ・ムタワリラ、ジョン・スミット、ジャン・デヴィリアス、パーシー・モンゴメリーに続くものとなった。

 ゲームは、開始早々からスプリングボクスのペースとなった。5分にSOポラードがPG、15分にポラードがトライ&コンバージョン成功で、10-0とリードした。ウェールズも、7番FLレッフェルがトライ、SOビガーのコンバージョンは失敗したが、10-5と反撃し、24分にはビガーがPGを入れて、10-8と迫った。しかし、38分、スプリングボクスがHOムボナンビのトライとポラードのコンバージョン成功で、17-8とリードして前半を終えた。

 後半に入り、ウェールズは42分と47分にビガーがPGを入れて、17-14と3点差に迫った。しかし、スプリングボクスは、53分にキャプテンの6番FLコリシがトライ、ポラードのコンバージョン成功で、24-14と引き離す。さらに、78分と80分にポラードがPGを入れて、30-14として勝利を決めた。

 前週から先発11人を入れ替えたことが成功した他、ウェールズはシックスネーションズでも良い結果を得ていないため、さすがにスプリングボクスに連勝するだけの力はなかったようだ。

5.アルゼンチン34-31スコットランド

 
 前週にアルゼンチンが負けたのは不思議で仕方ない。さすがに今週は勝ってシリーズ勝ち越しを決めると思う。

 スコットランドは、NO.8ザンダー・ファガーソンが50キャップを迎える。またグレガー・タウンゼント監督は、FBをロリー・ハッチンソンからオリー・スミスに、9番SHは、若手のベン・ホワイトをメンバー外にし、アリスター・プライスが先発に復帰する。リザーブ21番はジョージ・ホーンとなった。

 アルゼンチンのオーストラリア人監督マイケル・チェイカは、HOアガスティン・クレヴィ、LOトマス・ラヴァニーニらのベテランを、若手主体のチームに投入し、シリーズ勝ち越しを目指す。また、13番CTBマティアス・オランドーは50キャップ目となる。

 ゲームはアルゼンチンが11分に、11番WTBボッフェリがPGを入れて、3-0と先行する。スコットランドも13分に反撃し、11番WTBファンデルメルヴァがトライ、SOキングホーンのコンバージョン成功で、3-7と逆転する。これに対してアルゼンチンは、20分にSOカレーラスのトライ、ボッフェリのコンバージョン成功で、10-7とすぐに再逆転する。スコットランドも25分に、HOアシュマンのトライとキングホーンのコンバージョン成功で、10-14とスコアをひっくり返すなどリードが二転三転した。最後は、35分にボッフェリがPGを入れて、13-14と1点差で前半を終える。

 後半は、スコットランドが良いスタートを見せる。43分、アシュマンが2つ目のトライとキングホーンのコンバージョン成功で、13-21。さらに49分には、ファンデルメルヴァの2つ目のトライとキングホーンのコンバージョン成功で、13-28と勝利を近づけた。しかしアルゼンチンは、51分に17番PRテタズシャパーロがトライ、ボッフェリがコンバージョンを決めて、20-28と8点差に追い上げる。65分にスコットランドはキングホーンがPGを入れて、20-31としてスコットランドの勝利かと思われたが、67分にアルゼンチンは、21番SHベルトラノウのトライとボッフェリのコンバージョン成功で27-31と迫った後、ついに80分、ボッフェリがトライを挙げて、32-31とし、コンバージョンも成功させて34-31と大逆転勝利を達成させた。

 これでアルゼンチンは下馬評を覆すシリーズ優勝を決め、来年のRWCに向けて、マイケル・チェイカ監督の評価を上げる結果となった。

6.南北対決第三週の感想

  2勝2敗となった結果から見れば、シックスネーションズの実力上位チームであるアイルランドがオールブラックスに完勝し、またイングランドがワラビーズに競り勝った。一方、下位チームであるウェールズは、高地というホームアドバンテージのあるスプリングボクスに完敗し、またスコットランドもアルゼンチンに競り負けた。

 世界ランク的には、日本に連勝したフランスとの比較は難しいため、単純に1位にはできない。引き続きスプリングボクスが1位で、2位フランス、3位アイルランド、4位イングランド、5位オールブラックス、6位アルゼンチン、7位ワラビーズ、8位スコットランドという順位が妥当ではないかと思う。

 オールブラックスがアイルランドとの第2戦で、連続した2人のシンビンと1人のレッドで著しい数的劣勢になり、さらに後半レッドでPR不在となった際に一時的に退出していたアーディ・サヴェアが、間違ったルール解釈で復帰できなかったなど、レフェリングの問題が大きく浮上したシリーズとなった。

 一方、特にオールブラックスとしてはレフェリングの綾で勝つことは潔よしとしないこともあり、私としてはそれ以外の要素を考慮したい。つまり、もともと北半球チームはフィジカルの面では南半球に負けることはなく、イングランドやアイルランドはむしろ勝っている。しかし、これまでは南半球のようなスキルやテクニック、それにスピードがなかったため、とりわけ遠征した場合には完敗していた。

 ところが、近年北半球チームには、多くの南半球の選手が所属し、またコーチもNZ人を筆頭に就任していて、南半球レベルのスキル、スピードを落としこんでいる。もともとフィジカルが上であれば、これまで劣勢だったスキルやスピードを整備すれば、それだけ北半球チームが勝利する可能性が増すわけで、今回の結果はそうしたことを如実に反映したのだと思う。

 しかしこの結果、世界のラグビー界がもっていた、古き良き国ごとの個性というものがなくなってしまったことが少し寂しい。それはプロ化という面が一番大きく影響しているが、プロ化と言うお金がかかる条件では、経済的に有利な北半球チーム、特にイングランドやフランスが強くなり、オールブラックスやワラビーズが弱体化するのは当然だと言える。そして、この傾向を続けていけば、もうオールブラックスやフィジーが世界のラグビー界で活躍することはなくなり、一方アメリカを筆頭にしたチームがどんどん強化されていくのだと思う。

 これは歴史の必然ではあるが、もうラグビーという特別なスポーツは衰退していくのではないかと、もっと悲しい気持ちになっている。やはりラグビー界は、オールブラックスのようなチームが君臨することによって、特別なものになっているのだとつくづく思う。


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