想像上のエスニック〜ガパオライスになりたい、豚そぼろバジルライス
クリエイションは、孤独とのたたかいだ。
異国の小さなアパートのなかで、日々繰り返される無限ループの自己対話。
ひとりボケつっこみをしてみたり、古舘伊知郎なみの実況で自らを鼓舞したりしながら、たまにBGMの力も借りたりして試行錯誤を繰り返していく。
ただ背後に感じるのは、まるで現場監督のように私を凝視する愛犬の視線のみ。
たまに監督に話しかけてみたりもするけれど、きゅうりか鶏肉か魚の皮がなければすぐにプイッとベンチにさがってしまう。気まぐれな監督だ。
でも、そんな孤独なたたかいが、私には全くもって苦ではない。
というかむしろ大好きだからこそ、こうやって毎日淡々とクリエイションしてはそれを書いての繰り返しが続いているわけなのだが、noteをはじめてからというもの、私は別のたのしさを知ることになった。
共感の場をみつけるということ
noteを1ヶ月も続けていると、毎日の投稿を楽しみにしているnoterさん(というのか?)がちらほらとできてくる。
朝は、@ちょいハゲおじさんの爆笑系奥様ほっこり話が更新されるのを楽しみに。
夕方は、@ケイチェルおじさんや同じく飲み助のかほり漂う@えりきゃっとさんの今日のごはんの更新を楽しみに。(ん?ってあれっ?おじさん系・・・?)
もちろん私がフォローしているnoterさんは皆、面白い思考回路をしているなあとか美しい文章を書くなあとか、クリエイションを拝見しては感心しっぱなしだ。
ただ、おうちごはん系のテーマに限っては、勝手に特別な親近感を覚えてしまう。
私と同じようにあーでもないこーでもないとごはん作りに孤軍奮闘していたり、知恵を振り絞って代用品を探り当ててみたり。
たった一皿のことを書くのに話がどんどん違う方向に広がって、4000文字くらいになってしまったり。
はたまた、ひとつの食材に想いを馳せ、愛でてみたり。
こんな投稿をみていると、「ああわかるわかる。そうそう!それそれ!」と。
なんというか、ひとりの空間をこえて、クリエイションを通して共感できる場所ができた、とでもいうべきか。
それがすごくうれしいし、たのしい。
さっそく昨日も、私と同様に、現地に行ったことがないから想像でエスニックを作るエスニック想像家を発見して、
「ああもう本当にそれ!わかるわかる!」
ケイチェルさんのおっしゃる、「作って食べてみたあとに、美味しいけど、現地的観点からはどうなんだろうとモヤモヤする」っていうのは、想像でつくるエスニック料理の永遠の課題だと思っている。共感でしかない。
というわけで、今日は本当はズッキーニを美しく並べた夏野菜のキッシュ風をアップしようと思っていたのだけれど、「想像でエスニック」の波にのってみよう。
エスニック風にハマりたての頃つくった、想像上のガパオライスについて書いてみることにする。
最初っから不完全なガパオライス
私は基本的に、なにごとも形から入るひとだ。
それなのに、このガパオライスを作ったときは、我が家の調味料ラインナップに「エスニックといえば」のナンプラーも、「辛み出し」といえばの豆板醤もなかった。
時は外出禁止期間まっただなか。
なんとなく無性に「ガパオライス」ってものの響きが気になりすぎて、ガパオライスのイメージ検索。
とりあえずこんな感じかな?と、豚肉とバジルを仕入れて作ってみたのが、私風ガパオライス。
しかも、当時2日がかりで作っていた「リオレとパイナップルのロティ、ココナッツアイスとチュイルのせ」という、私的大作のデザートで使った生パイナップル。
リオレは市販
ここで余った一切れも、無類の酢豚パイナップル好き、豚肉×パイナップル最強説を信じている私は、疑問の余地なく採用することにした。
辛さについては、もともと激辛は食べられないので、まあ、豆板醤はないけどどうにかなるっしょとの完全なる見切り発車。
しかも適当に作っているので、レシピもうろ覚えなのだけど、残っている写真と脳内にあるかすかな記憶をたどりながら、以下たどってみようと思う。
想像上のガパオライスの材料(2人分)
・豚肉:200g〜250gくらい。塊肉を粗みじん切りにしても、そのまま挽肉を買ってきてしまっても、どちらでも。
・にんにく:ひとかけ
・玉ねぎ:1/2個
・赤唐辛子:1本
・パイナップル:一切れ
・赤パプリカ:1/2個分
・バジルの葉:10〜15枚くらい。盛り付け用にもとっておく。
【味付け】
・しょうゆ:大さじ2くらい
・砂糖:大さじ1くらい。パイナップルが甘いので、控えめにした記憶。
・オイスターソース:大さじ1くらい
・チリソース:お好みで。このときはうちにあったこのチリソースを使用。
【付け合わせ】
・米:インディカ米でもジャポニカ米でも
・卵:2つ。目玉焼きにしてのせる。
・ヤングコーン:あれば4から5本くらい
想像上のガパオライスの作り方
1、豚かたまり肉を粗めのみじん切りにして、ミンチする。
もう何度も言っているかもしれないが、フランスのスーパーなどでは日本で言うところの無味な豚挽肉はほとんど売られていない。あるとすればアジア系スーパー。
なので、挽肉系はもれなく自分でミンチすることになる。
あああっ!カメラロールを見て思い出した!!
このとき、ドラマー気取りで気分はYOSHIKI、両手に包丁を持ち、リズミカルに肉をたたきまくった結果、指の皮が向けたんだ。これは笑えない。
痛くて生活に支障をきたすレベルなので、良い子のみなさんは気を付けましょう。
2、ごま油を引いたフライパンに、みじん切りにしたにんにく、玉ねぎ、赤唐辛子を入れてじっくり焦がさないように炒める。香りが立ってきたら、豚肉とパイナップルをいれて炒める。
3、豚肉に火が通ったら、一口大に切った赤パプリカと適当にちぎったバジルの葉を投入して、火を通す。あらかじめ混ぜておいた味付け調味料を回し入れて、水分を飛ばしつつ、辛みと味を整えたら、完成。
4、付け合わせの準備。この頃の私はまだジャポニカ米信奉者。インディカ米に心を許していないので、貴重なジャポニカ米を炊きあげた。
ご飯が炊けたら、フライパンで目玉焼きを2つ作り、その横でヤングコーンを軽く焼く。
5、盛り付けは、このように。ご飯とガパオ風をカレーライスのように盛り付けて、目玉焼きとヤングコーンをのせる。最後にバジルを添えたら食卓へ。
見た目はかなり寄せることができたような気がしている
卵黄に膜がかかってしまったのが気に食わないけれど、
半熟具合はトレビアン
もどきと本場のジレンマ
半熟嫌いなOtto氏には、両面焼きの目玉焼き、辛みマシマシで提供。
案の定、開口一番「これはなあに?」と私に尋ねてきた。
「これはね、ガパオライスというタイ料理だよ」と、しれっと知ったかぶりをする私。
「ふーん、ユイもタイ料理を作るんだなあ」と、なんの疑いもなくうれしそうな顔をしてセボン(美味しい)を連発し、黙々と完食。
そういえば、確かOtto氏もタイに渡航経験がないから、ふたりして本場のタイ料理とはなんぞやが一切合切わかっていない。
ということで、ここは、勝手にこれがタイ料理だと信じ込んでいる人々による、想像上のタイの食卓だ。
実際、とっても美味しかったのだけど、心の中にしつこく残る「これってガパオライスって呼んでもいいの?」のジレンマ。美味しいけど、本場感がわからないから本場の名前で呼んで良いものだろうか、悩む。
さすがに、ナンプラーを使っていないのはエスニック料理と呼ぶ最低ラインに立っていないような気がしてならないので、ここは謙虚に、
「豚そぼろバジルライス、パイナップルの香り」
とでも命名しようと思う。
ココナッツアイスを食べた後のこと
この日のデザートは、自家製ココナッツミルクアイスのあまり。
これを食べたあと、Otto氏がいそいそと寝室に向かい、氏所蔵のタイ料理本を「ご参考までに」と私に差し出してきた。
ここからまた、私のめくるめく想像上のタイ料理ジャーニーが始まることになるのだけど、それはまた、別のおはなし。
文中の大作デザート、自家製チュイル越しに監督を眺めてみたの図
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